第6話〜アイドルHIMEと転校生〜
「清くん大丈夫?顔色悪いよ?」
「大丈夫じゃない…」
清人は現在詩織と共に学校へ向かって歩いている。ものすごい眠いという顔をしながら、理由は一つ
昨日凛が一晩中清人に抱き着いて寝ていたおかげで、清人はまったく眠れず、気づいたら朝になっていた。
「寝み〜」
詩織が心配そうに聞く。
「大丈夫?昨日の夜何かあったの?」
このさりげないやさしさが詩織のいいところだな~と清人は思う。だが昨日の夜女の子をたすけて、一緒に寝て寝不足なんて言えるはずもなく、適当な嘘をいっておく。
「いや、ただ単に眠れなかっただけだから平気だ。」
「そう」
詩織は釈然としないようだ。
「まぁ、今日は寝てるからなるべく静かにしてくれ」
「うん。」
そんな会話をしながら歩いていると清人たちは学校に着いた。
時刻は8:20分、とりあえず四十分は眠れる時間。なぜこんな早いのかと言うと、今朝ほぼ徹夜した清人は、7:00に凛を起こし、凛の朝飯だけ作り、家から出ないようにいいきかせた。学校のことは研究所に行く前、中学2年まで学校に行っていたらしく、常識は知っていた。そしてそのあとさっさと学校に向かうため家を出た、もちろん勉学ではなく安眠のためだ。そして外に出ると詩織がパジャマでゴミ出しをしていた。凛のことはまだ隠すことにし、ただ単に早く学校行って寝るとだけと伝えると、
「私も行く!」
と言い出したので、先に歩いてると答えたら、歩き出して、25歩目には清人の隣にならんでいた。
ガラララッ
教室に着き扉を開ける。
「見事に誰もいないな」
清人はそう言うとすぐに自分の席の横に鞄をかけ、椅子に座る。
「おい、詩織」
「何?」
「なぜ前に座る?」
「だって私の席ここだよ」
「そうか、なら前を向け」
落ち着いて寝れないのか、清人は前を向くよう指示するが…
「え?やだ」
「やだって…」
「やだ」
「…」
「…」
「わかった。でも邪魔はするな」
しばらく清人は詩織を見ていると、無駄だと悟り、邪魔をしないようにくぎを刺し、寝ることにした。
「うん♪わかった」
「…zzz]
詩織は…
「あいかわらずかわいいな〜」
清人の寝顔をずっと見ていた。
〜30分後
もうほとんどの人が教室に集まっていた。清人はいまだに夢のなか
「清人、中川さん」
「おはよう、健司くん」
「あれ?清人は?」
「今睡眠中だよ〜」
そういいながら清人の頬をつつく
「全然おきないね」
「今日清くんはいつもの三倍近く眠そうだったからたぶん昼休みまでは起きそうにないよ。」
「確かに」
とそこに
「うわ〜ん!みんな〜聞いてくれよ〜」
「あっ隆起くんおはよ〜」
「おはよう隆起、あいかわらず元気だね」
(…隆起…?)
「おう!じゃなくさ〜、きの”バキッ!!ぶふぁっ!」
いきなり清人が目を覚まし、隆起の顔面に一撃をおみまいした。さすがにみんな声がでない。
「な、なにするんだよ…清人」
顔をおさえながら声をだす。
「…隆起、俺は昨日お前のくだらない要望のせいで危うく会長に天に滅せられるところだったんだぞ?」
「要望?あ〜春休みのや”バキッ!”ぐはっ!?」
清人は隆起が言い終わる前に殴る。
「わ、悪かったよ!もう二度と書かないからゆるして!」
その場で這いつくばり土下座する。
「まぁ、今回はこれで勘弁してやるが次はないと思え…」
「はい!ありがとうございます!」
『ははっ』
外野のふたりがあまり見ない光景に苦笑いしている。
「それじゃ俺は寝るから、」
「うん。って待って!」
清人が再び寝ようとすると、隆起が慌てて止める。
「なんだよ」
「みんな昨日の夜テレビみた?あのアイドル”HIME”の突然の引退!」
「あ〜僕も見たよ。あの子の歌好きだったんだけど、突然どうしたんだろ?」
「え!?そうなの?私全然知らなかったよ。清くんは知ってた?」
「いや、まず誰だよそのHIMEって。」
『……え〜!?』
みんな驚きの声に清人は思わず耳を塞ぐ。
「お前HIMEっていったら国際的アイドルじゃねーか、マジで知らんのか?!」
「ああ」
「清人、テレビとか新聞見ないの?」
「あんまり」
清人が見るのなんてせいぜいお笑いかクイズ番組。
「いいか、よく聞けよ?HIMEっていうのは4年前くらいにデビューしたアメリカのアイドルだ。彼女の出した曲は国を飛び越えてさまざま人に感動をあたえ。さらにたくさんの国のドラマにも出演してる。超究極アイドルじゃねーか!!しかもアイドルになる前は日本に住んでたらしいぞ!」
隆起の熱心さにうざさを感じた清人だが、眠いので我慢している。
「私もHIMEのCDは持ってるよ。CD予約するために店の前で家族で徹夜したんだから」
「そんなにすごいアイドルなのか…ふぁ~~~」
「けど確か変な噂もあったよね。たくさんのイケメン俳優やアイドルが告白して全滅、しかもみんなあっさり。それでHIMEは男に興味はなくて女に興味のあるそっち系の人なんじゃっていう噂が。」
清人はこの話を聞き、今日やけにクラスメイトが騒いでいる理由がわかった。
「でも、もうやめたんだろ?あきらめろ、」
「簡単に言うけどなぁ!俺にとっては一生事なんだよ!」
「さいですか。」
キーンコーンカーンコーン
「ほらチャイム鳴ったから座れ俺は寝る」
清人は隆起たちを座るように言い、再び眠りについた。
「さぁみんな!席につけ!」
教室の生徒がそれぞれの席に座る。そして詩織が
「先生。なんで今日正装なんですか?」
そう、なぜか今日の先生は正装なのだ。
「なにを言う先生は普段どおりだぞ」
その場のみんなが先生にこう思った、きもい
「それより突然だが今日は転校生を紹介する!」
『え?』
「入ってきなさい!」
ガラララッと扉が開かれる。そしてその瞬間みんな静まりかえった。
金色の長いツインテールに青い瞳を持つ転校生は、そのまま黒板まで行き名前を書き口を開く
「はじめまして、ヒメ・アン・グラシスです。よろしくお願いします。」
ぺこっと頭を下げる
そして生徒の一人が声をだす。
「な、なぁあれってHIMEじゃないか?」
「あ、ああHIMEだ!あのHIMEがうちのクラスに転校してきたのか!?」
そしてその瞬間クラスの全員が(一人を除いて)ものすごい勢いで自己アピールを始めていた。
「お、俺前田隆起っていうんだ!よろしく!!」
しかしヒメはそんなことまるで聞いていなく、教室の生徒一人一人の顔を見ていく
そして同時にクラスの騒ぎに清人が目を覚ます。
「うるせ〜な〜」
安眠を邪魔され、少々不機嫌のようだ。そこでふいにヒメと目が合う
『あ…』
(…いや、こんなところにいるはずがない、ないんだが…)
再び静かになった教室に清人の声が響く。
「…ヒメか?」
ヒメ聞くと同時に満面の笑みで清人に走り寄っていく。そして、
「お兄ちゃん!」
ドゴッ
「ぐふっ!」
突然抱きつかれ後ろに倒れ、清人は頭を打つ。
「痛つっヒメ!?なんでお前が此処にいるんだ?!」
「お兄ちゃんに会うために転校してきたんだよ。」
そう言い終えるとヒメさらに清人に強く抱きついてく。そして周りの目が清人に殺気を叩きつけている、特に詩織がすごい。
「お前!ヒメちゃんとはどういう関係だ!」
クラス全員がうなづく。
「どういう関係って…ヒメはおれの妹みたいなもんだよ」
「恋人同士だよ!」
「ヒメ、たのむから黙ってて」
「む〜」
ヒメの発言に、ほとんどの男子がレイス起動させて清人を狙っている。詩織に関しては健司が必死に止めている。このとき清人は健司に今度飯を奢ろうと思った。
「ところで転校してきたって、お前今高1だろ?」
「そうだよ!だから飛び級したの!」
「飛び級!?この学校にそんなのあったのか?」
「うん。ここの校長とお父さんが友達だから特別に話しを通してもらったの。条件があったけど、こうしてお兄ちゃんと一緒のクラスになれたんだよ!」
清人はヒメのお父さんを思い出し、あのおとうさんなら簡単なことだと理解した。
「条件ってなんなんだ?」
「それはね。今日全校生徒の前で私が魔法戦の試合をすることだよ!」
「ああ、そういえばヒメは昔からおじさんに色々教わってたっけ。」
「うん!」
「ヒメは今どれくらい強いんだ?」
すると平然と
「近Sランクはあるよ」
「は?」
その発言に構えていた周りの生徒まで固まっていた。詩織は相変わらずだが。
「まじか?」
「マジだよ♪」
(じゃあうちの学園で戦えるのなんて俺で知ってるので遠距離が得意なまひろや詩織くらいか?)
「相手はだれなんだ?」
「私が決めていいっていうから」
決められた奴かわいそうだな、と他人事のように考えていた清人だったが、すぐに他人事ではなくなった。
「で、誰にしたんだ?今日なんだろ?」
「もちろんお兄ちゃんだよ!」
今のヒメの発言から数秒。
「え?俺?」
それは清人にとっての死刑判決だった。