第5話〜清人の秘密と天使の子〜
「やっぱりおじさん!?お久しぶりです。」
清人は少し興奮気味に電話のあいてに話す。
「久しぶりだね清人くん。今日は時間ができたからね、久々に電話させてもらったよ。」
このおじさんと呼ばれている人は、ユーマ・アン・グラシス、清人の身元をひきとってくれてた夫婦だ。今はアメリカでデカイ会社の社長をやっている。奥さんのアイリ・アン・グラシスさんも秘書をやっている。
清人は小学6年の頃に親と出かけている時、車に引かれ死に掛けている少女に出会った。そして清人はその時に、自らの体に封印していた魔力の一つを解除し少女を助けた。
だが清人はその時甘く見ていた。子供の清人が、いきなりの魔力に体が耐えられるわけがなかったのだ。そして清人は少女を助け、そして暴走した。両親が二人ともAAの人間だったおかげで被害はでずに済んだが、清人の体から魔力が抜け出し、体をきずつけていた。
体の傷は魔法で治ったが、魔力はそうではない。そして清人の両親は二人でなんとか俺の魔力を封印した…しかしそのかわりに清人の両親は死んだ…親族は清人を恐れ、化け物のように清人を見た。こんな俺を引き取ろうとするものなどどこにもいない、と清人は思っていた。
そうおもっていた時、親の葬式が行われた日、ユーマさんとアイリさんが声をかけてきた。”私たちと暮らさないかい?”そうして清人はグラシス家族の世話になることになった。二人には俺の1つ下の女の子がいた。この家族のおかげで清人は再び”人”として生きていけた。
(今だにあの時たすけた女の子のことは思い出せないけど、元気にしてるだろうか…)
「清人くん?」
ユーマの言葉に、すこし昔を思い出していた清人が我にかえる。
「あ、はい、すいませんちょっとボーっとしてました」
ユーマさん達は清人の家族の家。今清人が住んでる家で1年間過ごし、中学の入学式の日にアメリカに飛び立った。そしてそのあとすぐに詩織が引っ越してきて今に至る。
「ちょっと待ってください。」
清人いったん受話器から耳をはずし、詩織に振り返る。
「詩織、悪いんだけど長電話になりそうだから帰っててもらえるか?」
「む〜わかった。また明日ね」
「ああ、サンキュな」
詩織はちょっと不機嫌気味だったが、素直出て行った。なぜ不機嫌だったのかわからいが、清人は気にしないことにした。
「すいません、お待たせしました。」
「誰かいたのかい?」
「はい、ちょっと隣の幼馴染がきてましたが今帰りました。」
「こんな時間にかい?もしかしてお付き合いしてる子かな?」
「な、そんなんじゃないですよ!ただ夕飯作りにきただけです!」
少し笑いながら話かけるおじさんにあわてて返す清人。
「そうか、それを聞いて安心したよ。君に彼女なんてできたらヒメが暴れて大変なことになるからね」
ヒメとは二人の娘で、ヒメ・アン・グラシスと言う。
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。そういえば学校は楽しいかい?」
「ええ、まぁいろいろ大変ですが楽しくやってますよ。」
「そうか、それはよかった」
なんで魔力量10で森羅学園に入れたかと言うと。実は校長とユーマさんは知り合いらしく、特別に入学させられた。本当に世話になりっぱなしだなと感じる。
「はじめはびっくりしましたよ、突然森羅学園から推薦状なんて」
その時の清人は他の高校に入ろうと思っていたのだが、ある日突然推薦状なんてものが届いたのだ。
「そうかそうか」
「そういえば仕送りのことなんですが」
今はユーマたちには仕送りしてもらっている。しかもかなりの金額だ、清人はそんなに必要ないといっているが、向こうが勝手に振り込んでくるので止めようがない。
「おお、なんだ少なかったかい?」
「逆ですよ、特に今月は100万ってなんですか!?」
「いや〜余裕あったほうがなにかといいだろうとおもって。それに今月はそれでいいんだよ」
今月は? と清人は一人疑問におもう。どんな理由があれば100万なんてものが必要になるのか清人には想像できなかった。 むしろ半分でも余裕すぎる。
「それよりちゃんと”あれ”の特訓はしてるか?」
ユーマはさっきまでとはすこし違う声色でたずねてきた。
「もちろん毎日やってますよ。」
あれとは清人の中に眠る神の力だ。そう、清人が暴走させた力。清人は世界神カインベルクの生まれ変わりだ。しかも清人には前世の記憶が残っている。
普通は神が人間に転生することはありえないことだ。その理由は魔力。人間の体では神の魔力量に耐えられないからだ。しかも清人は世界神、世界神ともなると神の体でも耐えられないかもしれない。しかし清人は人間として生まれた瞬間に自分の膨大な魔力を封印した。もし清人が世界神でなく下級神などだったら、生まれた瞬間に魔力暴走し、爆発するだろう。生まれた瞬間の赤ん坊の魔力はだいたい10〜20、だから清人は生まれた瞬間に4段階の封印をし、魔力を10まで減らした。だから今も清人の魔力はかわらず10なわけだ。
このことを知っているのは死んだ両親とユーマ家だけ、だだ世界神であることはいっていない、神であることは知っているが、何の神かは知らないふりをしている。知られたらさすがにめんどうだからだ。
そして清人は体を魔力にならすために、あの事故以来毎晩封印を第一解除し、ならしている。最初は吐血などしていたが5年間つづけたおかげ第一には体がなれ、疲れるくらいまでおさえられるようになった、だが第二開放はまだできない。正確にはできるがしたら一日は目が覚めないだろう。第三は死ぬかもしれない。だが少なくともなにかしらの大ダメージは受ける、第四は確実に死。これは人間でも神でもおそらくたえられない。清人の封印は1<2<3<4で開放する魔力量が違う。
「そうか、だが無茶はしないでくれよ?」
「はい、心配かけてすいません。」
「いやいや、私は神様としゃべれるだけで光栄だよ」
「茶化さないでくださいよ。今は一人の人間の神崎 清人です」
受話器の向こうで笑い声が聞こえる。
「ははっ、そうだったね。これは失礼したよ。」
「そういえばめずらしくヒメが静かですね。もう寝たんですか?」
俺が電話すると必ず一回は電話に出てくるのに、風邪でも引いたか?
「いや、ヒメは今飛行機の中だよ」
「一人でですか?よく親バカのあなたが許しましたね。」
「ああ、どうしても行きたいといっていてな。何年も前から頼まれ続けてついにまけてしまったよ。」
あとにつれてユーマの声が小さくなっていく。
「へ〜、よっぽどいきたいんですかね。どこにいったんです?」
「ああ、それはー「社長〜会議始まります!」わかった今行く!悪いね清人くんあとは頼んだよ。」
相変わらず忙しい人だとおもいながら、今の言葉に疑問を覚える。
「はい。ってなにをです?」
ガチャッ
切られてしまった……まぁでも別に気にすることじゃない。
清人は受話器を戻し時計をみる。
「ちょうど10時を回ったところか、もうそろそろ今日の特訓しにいくかな。」
そう思い玄関を出て家の後ろのちょっと先にある森に入る。人目につかないところなので、清人はいつもここで特訓している。
「ここら辺なら大丈夫だな。」
周りに人がいないことを確認すると、まずレイスを起動させる。
「クラン・イン」
左手のブレスレットが姿を変える。
木刀。清人は魔力を封印しているため、通常だと木刀になってしまう。
深呼吸を数回し木刀を握りしめ目を瞑る。
「ーーー我、人の中に封印されし第一の扉よ、解き放て…」
頭の中に扉をイメージする。どこまでも広い空間の中に鎖で縛られた4つの扉がある。それぞれ大きさが違う。その中の一番小さい扉、それでもでかい門のようなでかさはある。その扉に手を触れ言い放つ。
「開神!」
パリーンと鎖が砕ける、扉が開き。中の光が清人の体の中に入り込んでいく。
最初はこれだけで体にものすごい痛みが走っていたが、日々の努力でなんとか痛みはなくなっていた。
清人はゆっくり目を開き、左手を見る。
複雑な文様が左手の甲に描かれている。この文様は神の証のようなもので、有名なものは一目でだれかがわかる。そしてもちろん清人は世界神の文様だが、まだ封印をすべて解いてないので、文様も少ししか出ていない。ちなみに左目も赤い色になっている。
「ふう、もう第一開放はほぼ完璧だな。」
すると森のさらに奥から足音わずかに聞こえる。開放したことで耳もよくなっているようだ。
(ん?この魔力…!)
なにかを思いだしたように清人は突然森の奥に走りだした。魔力があがったため通常時より速く動くことができる。
ーーーーー
ーーーー
ーーー
そのころ森の奥では女の子が息をきらしながら走っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、っ」
その女の子はかなり前からずっと走りつづけいたためか、足は泥だらけで顔も汚れており、疲れも相当出ている。
「まちやがれー!」
後ろから男の声が聞こえるが、女の子にとまる様子はなく走り続ける。しかし疲れている上に女と男、体力的にも差があり確実に女の子に迫っている。
「止まれっていってんだろーが!」
「きゃっ!」
女の子は足に激痛が走り、倒れる。石を投げられたのだ。足しあがろうとするが切ったのと同時に打撲しており、しばらくは立ち上がれない。ゆっくりと男達が近づいてくる。
「はぁ、はぁ、手こずらせやがって」
「悪い実験体にはオシオキをしてやるぜ。」
「ひっ!」
二人の手には剣型のレイスが握られている。男達は女の子の前までくると片方の男が剣を振りがぶる。
もうだめかとおもったのか、女の子は目を瞑り手で防御の姿勢をとる。
「うらぁっ!」
勢いよく振り下ろされる。
ぶんっ!
ガキッ!
女の子は衝撃がこないことを不思議におもい、おそるおそる目を開ける。
「だ、誰だてめーは!」
すると清人が女の子の前で剣を受け止めていた、木刀で。
「なんとか間に合ったな。」
清人がそういい安堵すると、男達は数歩後ろに下がる。
「誰だてめー!ぶっ殺すぞ!!」
(魔力値はCくらいか、ただの雑魚だな。…まぁ普段の俺はもっとよわいけど)
そうおもいながら肩に木刀を乗せ、余裕の表情で挑発する。
「やれるもんならやってみ」
男達が頭にきたのか、レイスを構える。
「てめー、そんなふざけたレイスで俺らに勝てると思ってんのか!」
「ん?…あ」
清人は男達に言われ、自分の木刀を見た後なにか思い出したのか、木刀を両手でつかむ、そして…
「ふん!」
バキっ!
二つにたたき折った。
突然の清人の行動に戸惑う男ふたり
「な、なんのつもりだテメー!」
「まぁ待て」
そう言うと、それぞれの手に折れた木刀もち。
「クラン・モードシスカ」
言うと同時に、折れた木刀が光だし形をかえる。
男たちの顔に驚愕に染まる。
『なっ』
神双銃剣シスカ。見た目は銃身はマグナムのような形をしているが、銃口はU字型磁石のようになっており上下に分かれており、その間から魔力弾を撃つような形になっている(U字の銃口は下の方が若干長い)、銃口は全体が剣のように鋭くなっている、色は金で、中心には赤い宝石のようなもがついており、そこから銃剣全体に赤いラインが通っている。リボルバーシステム搭載で、近接もできるよう銃口が少し長くなっている。銃剣といっても兵士がもっているようなライフルではなく、拳銃を少し長くしたくらいの大きさである。
清人は数回二丁の銃剣を軽く回すと。驚いている男達を軽く挑発する。
「ほら、さっさと掛かってこい」
「こ、このやろー!なめんじゃねぇ」
「死ねやおら!」
二人同時に切りかかってくる。なんの変哲もない正面からの特攻。
その二人の行動に清人はため息をついた。
「はぁ、芸のない。」
そういうと二人が剣をおろす前に間をすばやく通りぬけ、二人の後頭部を銃身で殴る。
ガンッ
「ガッ!」
バタッ
男達を気絶させた清人は、いろいろ聞きたいことがあったが、追ってが来るかもしれないので。引き上げることにした。清人はそう考えると後ろの女の子に近づき背中を向けかがむ。
「乗って」
「え?」
「え?…って足、怪我してるだろ。手当てしたいし俺んちにいこう」
女の子は少し怯えた表情をする。
「でも…」
「大丈夫だ、俺は味方だから」
「わかった…」
ようやく信じてくれたのか、女の子は清人の背中に乗った。
(よし…って、む、胸が背中に…意外にでかい…って!こ、こんなときにない考えてんだ俺は!)
そう自分に言い聞かせ清人は全速力で森を抜け家に入る。
(とりあえず追っ手はないな、魔力も消してきたし当分は大丈夫だろ。この家にも魔力消しの結界がはってあるしな。)
清人は背中の女の子をソファーに下ろし。体の魔力を再び封印する。
「ふう」
清人の体から魔力が再び抜け、疲労がでるが、その疲労に耐え、彼女の足の手当てをするべく、急いで救急箱をもってくる。
「足みせて?」
清人はなるべく怖がらせないように笑顔で言う
「は、はい。」
顔赤くして俯いてしまった、清人は顔をそらされたことに軽いショックを受けたが、気にしないようにしながら足に石をぶつけられたところを見る
(!、もう治り始めている、やはりこの子は…)
足に包帯を巻き、夕飯のあまりものを彼女に出す。よっぽどおなかが減っていたのか、すぐに残さず食べてしまった、清人はそれをみると、真剣な顔で本台に入る。
「そろそろ事情を聞いていいか?」
女の子は少し暗い顔をして言った。
「はい…わかりました。」
そういうと彼女は語りだした。
「私はある研究所で実験をおこなわれていたんです。」
「実験?」
「はい。」
「どんな?」
「わかりません。ただ血をとられたり、よくわからない機械をつけたりせられました。」
清人はこのとき人体実験かと想像した。
「その組織、または研究所の名前はわかる?」
「はい、たしかエンジェルスという組織でした。」
「エンジェルス…聞いたことないな…それで君はなぜ狙われたかわかるのか?」
「…それはたぶん…」
女の子は言っている途中で言葉が途切れてしまった。その続きを代弁するように清人が言った。
「君が…大天使リンシアスの生まれ変わりだからか?」
「っ!?なぜそれを!?」
(やはりそうか。)
「俺も実は神の生まれ変わりでね。君の魔力には覚えがあったからわかったんだ。その様子だと前世の記憶はないようだな」
「あなたも?!」
自分と同じと言う清人を見て凛は驚いていた。
「ああ、だが俺は今は神崎清人という一人の人間だ。清人って呼んでくれ。敬語もなしだ。そういえば君の名前は?」
「私は天塚 凛(あまつか りん)っていいます。」
ちなみに凛は髪は茶色でセミロングだ。顔はかわいい系。なんかこう、守ってあげたくなるような感じの子である。
「そうか、いい名前だ」
凛は顔を伏せる。
「あ、ありがとう。」
「さて、凛はこれからどうする?家は?」
「…私は親が亡くなってからずっと研究所だったんでなにもないんです。ですから」
(なるほどな、昔の俺と同じってわけか。)
「そうか、なら一緒に暮らさないか?」
「え?」
「だめか?」
凛が目を丸くする、清人はてっきり喜ぶと思っていたため、逆に清人も目を丸くした。
「だ、だめっていうか私、お金も何もないよ?」
顔を伏せ不安そうな声で聞き返してくる。
「金なんかいらねーよ。俺も一人でこの家住んでて明るさにかけるし。」
「で、でも。」
「それにさ、俺もお前の気持ち少しはわかるしさ、力になりたいんだよ。」
「清人さん…、じゃ、じゃあよろしくお願いします。」
凜はペコリとあたまを下げて言った。
「ああ、こちらこそよろしくな」
そのあとはもう夜遅かったので、清人は凛に風呂に入るように言った、服はとりあえず清人のTシャツを貸し、空き部屋は二階に四つあったので、一つの部屋を凛の部屋にした。
「じゃあ、おやすみ」
凛に部屋を案内し、部屋から出ようとすると、清人は袖を捕まれた
「どうした?」
凛は少し戸惑い顔を真っ赤にしてみてくる。
「え、えと、今日一緒に寝てくれませんか?」
「はい?」
さすがの清人も、何を言われたのかよくわからない。
「な、なんで?」
「えっと、今までずっと一人だったんで、昔はよくお母さんと一緒に寝てたんですが…やっぱりだめですか?」
涙目になりながら凛は袖を強く掴む、そんな凛の頭に手を乗せ、清人は答える。
「そんな涙目でいうな、そういう理由なら今日は一緒に寝るよ。」
そういった途端にパァっと凛が笑顔になった。
「ありがとう!」
「そのかわり、今日だけだぞ」
「はい!」
そして今の状況。
(まずいな。これは非常にまずい)
今清人は凛の部屋のベッドでふたりで寝ている。
「すーすーzzz」
凛は疲れてたせいかすぐに寝てしまったが、清人は後ろから凛に抱きつかれているため、やわらかい感触と理性の崩壊に襲われ眠ることができず、夜が明けていった。
ーーーーーーー???ーーーーー
暗い室内に二人の男がいる。
黒い服を来た若い男が声を発した。
「いいんですか?にげられましたよ?」
すると今度は声をかけられた白衣をきた40代くらいの男が口をひらいた。
「かまわんよ、今はしばらく泳がせておこう。どうせあの機械が完成せねば意味がないからな」
「そうですか。わかりました。」
そういうと黒い男は頭を軽く下げ、部屋から出て行った。
「くくく、所詮あの小娘はわしから逃れられない運命。せいぜいあがくがいいさ」
そう呟きながら白衣の男は一人部屋で微笑していた…