第4話〜生徒会と詩織の夕飯〜
「生徒会の仕事?またかよ…」
そう、清人はよく健司に生徒会の仕事を頼まれる。
「俺がめんどくさがりやだって知ってるはずだけど?」
「ああ、わかってるんだけどな…」
健司にしては珍しく歯切れが悪い、清人はため息をつきながら口を開く。
「で、なんの仕事だ?」
健司はまた言いづらそうに言った。
「生徒会長と一緒に書類整理…」
清人は何回か生徒会の仕事を手伝っているが、頼まれる仕事は会長絡みばかりだ。
「なぁ、いつも思ってたんだがなんで俺なんだ?おれじゃなくても会長と仕事したい奴は山程いるとおもうんだが…」
清人のもっともな意見に、めずらしく健司が慌てたように言う。
「そ、それはほら!他の人だと会長のこと襲ったりするかもしれないだろ?清人ならそうこと絶対しないし!」
(それは俺に度胸がないといっているのか親友よ。まぁ襲う以前に…)
「会長なら襲う前に殺られると思うけど」
健司も苦笑いしながら同意する。
「た、たしかに。でも!知ってる人の方が仕事しやすいと思うしさ!」
「う〜ん」
「だ、だめか?」
いつも健司には色々世話になってるため。寝れないのは残念だが清人は了承した。
「いや、いいよ」
「本当か?!じゃあこのあと会長室に行ってくれ!」
「ん?お前は?副会長だろ?」
そう、健司は生徒会副会長なのだ。まひろに推薦されて半強制的になったらしい。
「お、おれは他の生徒会委員と打ち合わせとかがあるからさ。」
「ふ~んそっか、わかった行ってくるよ」
「ああ、頼んだよ!」
そのまま健司は体育館から出て行った。
「さて俺も」
「清くん!!」
行こうかとおもったら、詩織に呼び止められた。
「なんだ?」
「お昼ご飯一緒に食べない?」
どうやらお昼のお誘いらしい。詩織の料理は美味いから食いたいところだったが、清人は仕事を引き受けてしまったため丁重に断ることにした。
「あ〜わりぃ、これから生徒会の手伝いするっていっちまったから」
「え!それってまひろちゃんと一緒に?」
「ん、ああ、まぁそうだけど」
「だめだよそんなの!一緒にうちでご飯たべよ〜よ!」
詩織は清人を行かせたくないが、清人は約束を決して裏切らない。
「さすがにもう健司と約束しちまったからな〜」
「む〜」
詩織は頬膨らませながらうなる。清人はその頬を突っつきたい衝動にかられたが、なんとか耐える。
「こ、こればっかりはな、そういえば夕飯作ってくれるんだっけ?楽しみにしてるからさ、また夕飯のときに来てくれよ」
「ホント!?じゃあ私今から買い物してくるから夕飯楽しみにしててね!」
「あ、ああ」
そう言い放つと、ものすごいスピードで帰っていった。清人は夕飯を楽しみにしながらさっさと仕事を終わらせにいく。
清人はその後すぐに体育館を後にし、会長室に向かった。
生徒会室は特別校舎の3階、記憶を呼び戻しながら生徒会室へ向かう
ーーーーー生徒会室前
清人は一応身だしなみを整えノックする
コンッコンッ
「すいませーん、副会長に頼まれて手伝いに来ました、神崎清人でーす!」
ちなみに会長は清人と同じ二年である。この学園は投票と本人の意思によって生徒会長を決めるシステムになっている。
「清人くん!?」
ガンッ
中からなにかにぶつかった音と「いたっ!」っていう声が聞こえる。
「いたたた。は、入っていいわよ〜!」
「失礼します。」
扉を開けた瞬間足を押さえてる会長がいた。
清人は会長の足の前でかがみ、声をかける
「大丈夫ですか会長?」
「全然平気よ!」
そういいながら胸を張るが、ぶつけたところがアザになっているのを見て、清人は溜息をこぼす。
「ちょっと待っててください」
「え?」
清人はそういうと立ち上がりそのまま洗面所でハンカチを濡らしてもどり、会長の足に巻きつける。
「気休めにしかならないと思いますけど」
まひろは顔を真っ赤にしながらお礼を言った。
「あ、ありがとう」
「いや別っ、いえ大したことはしてないので」
普通に話そうとしたところで慌てて言い直す。さすがに会長の前でタメ語はまずい、しかし清人は敬語が苦手であり、この状況はつらい
「普通でいいわよ」
「え?」
「普通に話していいわよ、初対面じゃないんだから」
清人は”心でも読んだのか?”と疑問におもったが、すぐにどうでもよくなった。
「そうか?じゃあそうさせてもらうわ。正直敬語って肩こるんだよな」
そういいながら肩を回す。
「じゃあちゃっちゃとおわらせようぜ、会長」
「……まひろ」
「はい?」
まだ少し赤い顔でまひろが言う。
「会長じゃなくまひろって呼びなさい」
「いや、でもかいちょ。」
会長と言い切る前に指で止められてしまった。
「これは会長命令よ。ね?」
「わ、わかったよ、まひろ」
清人はまひろの笑顔に不覚にもドキッとしてしまった。
「よろしい!じゃあはじめましょ」
そういって会長は満足そうに椅子に座る。
「そうだな。」
生徒会長室は、入るとすぐに来客用のソファーがふたつ、テーブルを挟んで置いてあり、会長の机はそのテーブルから少しはなれたところにある、
清人も会長席の前にあるテーブルの、来客用のソファーに座ろうとする。しかし、
まひろがきょとんとした顔で、
「なにしてるの?」
と言った。
「え?いや席に座ろうと」
「なにいってるの、こっちに座りなさいよ。」
こっちとは会長の机になぜか椅子がもうひとつある、しかし無理やりおいてあるため、ほぼ椅子と椅子がくっついている。
「いやそれ結構無茶あるとおもうんだが。」
まひろは恥ずかしいのか少々怒り気味に言う。
「い、いいから早く座りなさい!終わらないでしょ!」
「はぁ、わかりましたよ」
まひろは満足そうな顔でうなずいていた。
「それでいいのよ。」
「よいしょっと…」
「…」
清人はなるべく意識しないようにするが、すでに肩があたりそうな距離まで近づいている、これではさすがの鈍感な清人でも意識してしまう。
(ち、近すぎたかな?でもでも、清人くん鈍感だって健司いってたし、あ〜でもこれじゃ私が意識しちゃうわよ!)
お互い無言のまま少したち。
「仕事しようか」
「そ、そうね」
気にしないことにした。
そして清人は机上に置いてある山積みになった書類を見て聞く。
「今日は書類整理っていってたけど、これなんの書類だ?」
「ああ、これは春休み中に届いた生徒の要望よ、やりたいイベントとか変えてほしいこととかのね、今日はこれからひとつずつ学年ごとにわけていくの」
そういえばそんなこと言ってたな。
「なるほど、どれどれ」
(3000人もいるとさすがに量があるな。さてと、記念すべき一号くんはなにを要望してるのかな?一番上の紙を手にとり見てみる。)
〜会長のパンツがほしい!(もちろん脱ぎたて!!)〜
ぐしゃ
勢いよく握りつぶした。
「?どうかしたの?」
「い、いえ、ああこの紙、白紙だったんで捨ててきますね!」
「え、ええ」
そういうと立ち上がりゴミ箱の前に行く。
(だれだこんなばかなこと書いた奴は!俺を殺す気か!いったい誰がこんな…)
もう一度開くいてみる。カサカサッ
〜会長のパンツがほしい!(もちろん脱ぎたて!!) 2年1組前田 隆起
ビリビリッ
「どうしたの?」
「いや」
清人は心の中で殺人を決意した。
そう思いながら席に戻る。
「じゃあはじめましょうか」
「そうだな」
こうして二人で話しをしながら、仕事を片付けていった。
「ふぅ〜ようやくおわりましたね。」
ようやく片付き、清人がうでを伸ばす。
「そ、そうね」
時間は1時、さすがに朝から何も食べてない清人は腹が減っていた。帰ってから作ると時間もかかるので、学食で済ますことにする
「じゃあまひろ。もういくな」
と扉に手をかけると
「ま、まって!」
呼び止められ振りかえると、重箱を持ったまひろがたっていた。
「なんだ?」
「え、えと今日お弁当作りすぎちゃったんだけど、よかったら一緒に食べない?」
たしかにあの重箱一人はきつそうだ。
「ぜひご一緒させてもらいます」
「うん!」
まひろはいつの間にか水筒からお茶を紙コップに注いで机に弁当を広げている。
「さ、早く召し上がれ」
俺もソファーに座り箸をもち、手を合わせる。
「じゃあ遠慮なくいただきます」
重箱を開くと卵焼きや肉などがぎっしりつめられていた
「美味しそうだな。」
見栄えもよく、匂いもいい、本当においしそうだ。清人は試しに卵焼きをひとつ食べてみる。
パクッ
その様子を向かいに座っているまひろは、彼をじっと見ていた。
「ど、どう?」
まひろがおそるおそる聞いてくる。
「最高においしいよ。まひろ」
見た目どおりとてもおいしくできているので、清人は素直な感想を述べた。
「そ、そう良かった」
そのあと二人は世間話をしながらゆっくりとお弁当を平らげた。
「じゃあご馳走様。またあした学校でな」
「うん、じゃあまた明日」
食事のあとは清人は一人で家に帰った。まひろは迎えの車がくるらしい。
家に着いたのは2時、特にやることもなかったし、始業式なのに働いたことで疲れがで、夕飯まで寝ることにした。
PM7:20
トントントンッ
「んっ」
なにかを切る音といい匂いによって。清人のねむっていた頭が覚醒する。
「ああ、そうか寝てたんだっけ」
そんなことをいっているとキッチンから詩織が顔をだした。
「清くん起きた?もう夕飯できるから待っててね。
「ああ、ってなんで勝手に家にはいってきてるんだよ。」
「だって清くんチャイム押してもでないから、合鍵つかって入ってきたんだよ。」
ああ、なんかもういいや。そんな会話をしていると、料理はできあがっていたらしい。
詩織がお盆に乗せてキッチンから運んでき、ひとつひとつテーブルの上に並べていく。
「はい、おまたせ」
メニューはハンバーグに肉じゃが、味噌汁に特製サラダ、もちろんすべて清人の好物だ。
「おうサンキュー、いただきます」
最後に自分の分のご飯をおくと、詩織も向かえに座る。
「はいどうぞ〜」
パクッ
「うん、あいかわらずうまい!」
「清くんにそういってもらえると作ったかいがあるよ〜」
うまいと言って食べている清人を見て、詩織が緩んだ微笑みをする。
「そういえば清くん、今日昼間生徒会の手伝いしたんでしょ?何手伝ったの?」
「ん?ああ、パクッ、生徒会長と二人で書類整理やってた」
「二人で!?」
「ああ、もぐもぐ」
すこし大げさな驚き方をした詩織にまったく動揺せず清人は飯を確実に平らげていく。
「ふぅ〜ごちそうさん」
「あ、お粗末さまでした。じゃなくて何もしてないよね!清くん」
「何もって?」
お茶を飲みながら清人が聞き返すと、詩織は真っ赤になになりながら自分の手をぎゅっと握りながら言った。
「え、えっちぃこととかしてないよね!」
ぶぅーーーーー!!!!
おもわず口からお茶を噴射してしまった。
「お、おま、急に何言ってんだよ!」
詩織は顔を真っ赤にして清人に詰め寄っていく。
「だ、だって会長室で二人っきりなんて、怪しいよ!」
(なんか疑われるのは悲しいけど、友達をここまで心配するなんて…)
(まひろちゃん、清くんのこと襲ってないかな。)
「まじでなにもないから安心しろ詩織」
「ほ、ホントに?」
「ホントだって」
ようやく詩織ももとの位置に座る。
「わ、わかった信じるよ」
「じゃあ俺食器洗うよ。」
そう言い立ち上がり清人はキッチンへ向かう。
「あ、いいよ〜私がやるよ」
と、詩織もやるといいだす
「いや、飯作ってもらったから片付けくらいするよ」と清人
「料理は片付けまでが料理だよ!」と詩織
二人で言い合いながらキッチンへ向かうと詩織の足と清人の足が引っかかりこけてしまった。
ガタンッ!
「いつつつつっ」
「あいたたたっ」
『あ!』
清人が詩織の上に覆いかぶさる状態でこける。かなりの近距離に詩織の顔があるため、どうしても清人の視界に入る。詩織は胸元が少しはだけ、清人を見ながら顔を真っ赤にしている。
「き、清くん」
清人も顔を赤くして慌てて誤る
「わ、わりー今すぐ」
「ん、」
「どくから。」と言おうとしたところで詩織が何かを待つかのように目をつぶる。もちろんさすがの清人でも”何”を待っているのかは理解している。
(こ…これは、あれなのか?最近のドラマでよく見る「KISS」!…これはするべき…なのか?いや!ここまでされてしなかったら男がすたる!…でももし俺の勘違いだったら…いやでも)
プルルルルルッ!
「で、電話だ」
清人は必死に頭で思考をめぐらせていると、突然の電話に驚き、慌てて詩織からどいて電話へ向かった。
ぼそっ「…根性なし」
詩織は清人に聞こえない程度にはささやいた。
清人はすこし惜しかったという気持ちと安心している気持ちを持ちながら、受話器を取る。
ガチャッ
「はい、もしもし神崎ですけど」
「もしもし、清人か?」
受話器から三十代くらいの男の声がした。清人はその声に聞き覚えがあり、しばらく考える。
「おやおや、忘れてしまったかな?」、
「…もしかして、おじさん?」
「ひさしぶりだな清人君」