第13話〜まひろの婚約者?〜
俺は会場を出て外に出る。当分は戻れねぇな。
「・・・なにしてんだ、俺は」
「清人くん!」
後ろからまひろの声が聞こえる、しかしおれは振り返らない。
「まひろか・・・悪いな、せっかくのパーティー台無しにしちまって」
「そんなこといいのよ!それより大丈夫?」
「ああ」
そんなまひろの声を聞きながら、俺は夜空を見上げる。
「は〜、俺、何バカやってんだろうな。」
そんな俺の一言にまひろが叫ぶ。
「バカなんかじゃないよ!清人がしなかったら私がしてた!」
「そうか」
俺は苦笑しながら振り返り、まひろを見る。
ああ、やっぱ綺麗だな。月の光でまひろより一層綺麗に見える。
「慰めサンキュ、まひろはもうそろそろ戻ったほうがいいぞ。主役がいなきゃ台無しだ。
「でも・・・」
まひろは心配そうな顔で見つめてくる。
それほど心配される顔してんのか・・・
「俺のことならもう大丈夫だからよ。」
「でも、婚約なんて・・・」
うつむきながら小さく呟く。
ああ、確かにこの歳で婚約なんてな。
俺はなるべく笑顔で言う。
「確かにこの歳で婚約なんて嫌だろうけどさ、まひろの親だってまひろのことを考えてのことなんだろうし、もう少しまじめに聞いてやりな。」
まひろは俯いたまま、俺に聞こえないほど小さな声で言った。
「清人くんは・・・それでいいの・・・?」
「え?」
俺はなにか聞き取れない、まひろはしばらくすると顔を上げ。
「私は、」
「まひろ」
「お父さん?!」
まひろがなにか言いかけたとき、後ろからまひろのお父さんとお母さんが出てくる。どうやらまひろを探していたらしい。
「まひろ、探したぞ。ん、そっちの君は」
まひろ父が俺に気づき、こちらを向く。
「あなたの名前、教えてもらえるかしら。」
まひろ母笑顔で聞いてくる。
なぜ名前を、ああ俺がパーティーを台無しにしたからか。
「神崎清人です。まひろとは同じ学園です。」
「そうか。まひろ、お前の婚約者が決まったぞ。」
「え!?」
へ〜決まったのか、あの中から決まったからきっとすんげー金持ちなんだろうな。
「私は婚約なんてしたくありません!お母さん!」
「ごめんなさい、でもこれはもう決まったことなのよ。」
「そういうことだ」
「そんな、」
まひろが絶望的な顔をする。
いくらなんでもこれは勝手過ぎないか?
「あの、いくらなんでも本人の意思を無視するのは」
俺の声が聞こえてないのか、まひろ父が声をかけてくる。
「清人君、君にはさっきの責任をとってもらうよ。」
まひろ父が俺を睨みつける。
「お父さん!清人くんは悪くないわ!」
「確かに、むしろ悪いのはさっきの彼だ。」
「ならどうして!?」
まひろ母が口をあける。
「それでも、やったのは彼、これはけじめの問題よ」
まひろ母が真剣な顔でこちらを向く
「わかるわね、清人君?」
「・・・はい」
「そんな・・・」
「いいんだまひろ。」
まひろの目に涙がきらめく。俺は二人に視線を向ける。
「それで、俺にどうしろと?」
「それは・・・」
二人がふっと微笑む。
「まひろの婚約者だ。」
「「え?」」
ふたりそろって、なさけない声を出す。
「それって、どういう」
俺は驚きを隠せずに言う
「言ったとおりだ。」
「で、でも俺、別に俺金持ちでもなんでもないですよ?」
「そんなの関係ないわよ。」
「じゃあなんで・・・」
「君がまひろにふさわしいと思ったからだよ。」
まひろ父が語りだす。
「今までの婚約者は、うちの企業が目当てで言い寄ってくる者ばかりで、まひろの幸せを考える者などいなかった。そして今日もきっとそうだろうと思っていた。だが・・・」
そして俺をゆっくり指さす
「君が現れた。」
そして指を下ろし、目を閉じる。
「君は今までの人間とは違う、さっきのできごとでわかった。あの場であんなことができる勇気、そしてなにより君の優しさが強く伝わってきた。君ならまひろ自身を見てくれると思うからな」
まひろ母がにっこり笑いながら言う。
「だからあなたにまひろをお任せます。」
俺は額に汗をかく。いやいや、突然任されても!
「でも」
「これはさっきの責任でもあるんだ、君に拒否権はない。それともまひろでは不服というわけではあるまいな」
まひろ父がすごい目で睨みつけてくる。俺はその表情を見て強く否定する。
「いえ!そういうわけじゃないんですけど」
「なら問題ないな」
そういいながら近づいてくる。
まずいこのままだと本当に、まひろは。
まひろの方を向く、するとまひろはなにを考えているのか、別世界に飛んでいた。
「じゃあ清人君にこれを」
俺の前に出されたのは、ものすごく高そうな指輪。いくつもの宝石がくっついている。
「あの、これは?」
「もちろん婚約指輪だ、特別のな」
そしてそれを差し出してくる。
俺はまひろの方をもう一度見てみる。
やっと帰ってきたらしい、だがもう母から指輪を受け取っている。
おい!何受け取ってんだ!あきらめちまったのか!?
「さぁ、早く受け取りたまえ」
もう、逃げられないのか。俺はおそるおそる手を伸ばす。しかし
『だめーーーー!!!』
ドガンッ!!
突然聞き覚えもある二人の声が聞こえる、それと同時に俺とまひろ父の間に魔法弾が直撃し、お互いを引き離す。
俺は吹き飛ぶと二人にキャッチされ、そのまま門を抜ける。その途中には警備員が倒れている。そして俺は運んでいる正体を見て目を見開く。
「詩織!?ヒメも!」
そう犯人はこの二人、レイスを起動させているところを見ると、犯人は間違えなくこいつらだ。まぁでも助かった。あのままだと本当に婚約してたからな。
「だめだよお兄ちゃん!気をつけないと!」
「そうだよ清くん!こっちの身にもなってよね!」
二人は俺の家に走りながら叫ぶ。
「ところでなんできたんだ?」
「だってうちにきた変なひとが、お兄ちゃんはまひろちゃんのパーティーに行ったっていうんだもん!」
「そうだよ!いくのはいいけど、これからは私達も誘ってよね!」
「わかった・・・」
なんで?と聞こうとしたが、二人の空気はそうはさせなかったため、素直に返事をする。結局俺はそのあともなぜかヒメ達にたくさんの質問をされながら帰ることとなった。
ーーーーーーーーまひろ邸
まひろ父が慌てた様子で近くの使用人に、清人たちを追わせようとする。
「なにをしてる!はやく連絡を取って清人君を連れ戻すんだ!」「待って!追わなくていい!」
私はそれをやめさせる。
お父さんは驚いた表情でこちらを見る。
「いいの、行かせてあげて」
私はわかっていた。あの声は間違えなくヒメ達、私のライバル達だ。私は危うくずるをするところだった。
お母さんは、そんな私に何かを悟ったらしい
「頑張りなさい」
一言、たった一言だけど、なにを頑張るのかはわかっていた。お父さんも仕方ないという顔をしている。そして私はお母さん達に言った。
「私、絶対に勝って見せるから、見てて」
「ああ、がんばれよ。」
「ええ、期待してるわ」
二人は笑顔を向けてくれる。そんな顔を見て私も笑顔になり答える。
「うん!」