第10話〜帰宅〜
「今日はもう疲れたよ〜」
「確かに」
俺とヒメはただいま二人で帰宅中。
詩織はまだやることがあるらしく、学校に残っている。
ヒメは少し俺の前まで進み立ち止まる、俺もつられて止まり、ヒメは暗くなった空に手をかざす。
「お兄ちゃんに質問。」
「?なんだ?」
「今、お兄ちゃんって、好きな女の子いる?」
その言葉に一瞬、頭の中に詩織やまひろの顔が映るが、考える間もなく答えた。
「は?いるわけないだろ。何言ってんだヒメ」
「そっか」
ヒメはかざしていた手を戻しながら、ヒメは呟いた。
こちらをふり向きながら、笑顔で言う。
「じゃあ私にもチャンスあるよね?」
俺はそのヒメの仕草に思わず心臓が跳ねる。普段の可愛いというより、綺麗という感じだ。
「バ、バカいってないで帰るぞ。」
俺はそう言うと、ヒメの横を通り過ぎ、先に進む。ヒメも急いで俺の後を追ってくる。
「待ってよ〜」
それからすぐに家に着き、玄関を開ける。
「ただいま〜」
リビングから凜が出てくる。
「おかえりなさい、ってそちらはどなたですか?」
凛は不思議そうにヒメを見つめる。
「ああ、こいつはヒメ・アン・グラシス、俺のおじさんの娘で、妹みたいなもんだ。凛のことは話してあるから。」
「よろしくね〜、凛ちゃん!」
「はい、よろしくお願いします。ヒメさん。」
うむ、いい感じだな。
俺は一人そう思っていると、隣からすごい音が聞こえる。
ぐ〜〜〜
隣を見るとヒメが顔を赤くしながら声を上げた。
「だ、だって、お昼食べてないし、運動もしたから・・・」
「ああ、そういえばそうだな。」
そう。俺とヒメは今日魔法戦をやってぶっ倒れてたんだったな。
「でも困ったな、飯作るのまだ時間かかるぞ。」
ヒメが不満げな表情をしながら文句を言う。
「え〜!もう私お腹ぺこぺこだよ〜」
「そんなこといわれてもな〜」
ヒメと口論をしていると、凛が声をかけてくる。
「あの〜、私夕飯作っといたんですけど。」
「え?」
「作ったって、凛が?」
「はい」
作ったって、料理したことなんてあるのか?あ、そうか、中学までは普通に暮らしてたんだもんな。
「凛ありがとう〜、さっそく食べようよ。お兄ちゃん!」
「ああ。」
俺もヒメのあとに続きリビングへ向かう。
「わ〜おいしそう〜。」
料理は一般的なハンバーグに味噌汁、サラダや肉じゃがと、いたって普通のものだ。確かにどれもおいしそうな匂いをだしている。
みんなで席に着き、手を合わせる。
『いただきます。』
まず最初に、箸でハンバーグを掴み、口に入れる。
「「・・・」」
俺達の反応を見て、凛が不安そうに尋ねる。
「ど、どうでしょう?」
すると、俺とヒメは顔を見合わせ。
「「おいしい!!」」
「よかった。」
いやまじでうまい、こんな美味しいの久々にたべた・・・わけでもないけど美味しい。
「凛は料理できたんだな。」
「はい、昔すこしだけ。」
俺は「そっか」と言い、残りのご飯を、全て平らげる。ふ〜さすがに早く食べすぎお腹が痛いな
俺は静かに深呼吸をする。
「あ〜〜、美味しかった。凛ちゃん!このお礼は必ずするね!」
ヒメもかなり満足したのか、3回もおかわりしていた。
「いえ、いいですよそんな。」
ヒメはそういうと、胸を張り、まかせなさいみたいなことを言っていた。なにを?
そんなやり取りをし、俺達はそれぞれ風呂にはいる。パジャマは二人ともないので、とりあえず俺の服を貸す。
みんな風呂から上がり、ソファーに座る。
「じゃあ今日は疲れたし、もう寝るか。」
「そうだね。」
「わかりました。」
そういい、俺は自分の部屋に戻るが、なぜかヒメたちがついてきていた。
「なぜついてくる。」
「「だって、ベッドが埃っぽいんだもん」」
不覚だった、もう何年も使ってなく、ろくに掃除もしてないから当然だ。はぁ、しかたない。
「じゃあここを使っていいから、俺は下でソファーで寝るから、んじゃお休み。」
俺はそう言い扉に手をかけるが、
「「だめ!」」
と腕を掴まれ、そのまま無理やりベッドにひきずりこまれた。ヒメはわかるが凛までこんなちから強かったか?
「おい。」
俺は二人に声をかけるが、
「おやすみ凛ちゃん。」
「おやすみヒメさん。」
シカトかよ!
二人はあっという間に寝息をたて始めた。もちろん俺の腕に柔らかい感触を残したままでだ。
「ああ、また俺は寝不足になるのか・・・」
結局俺が眠りについたのは、午前4:00だった。