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悪霊  作者: 恵梨奈孝彦
7/11

敗北者

【5場】

山岳ベース。3場と同じ位置に全員座っている。ただし、鈴本と泉はいない。

栗田「あの、黒岩さん、いくら考えてもわからないんですが、『総括』って何ですか?」

林 「おいっ!」

  間。

林 「わからないのはおまえが不勉強だからだ! 何でも人に聞きやがって!」

黒岩「自分でよく考えてみることだ」

清水「おまえは一昨日の晩、同志が『自己批判と相互批判』をしているにも関わらず、『豚汁が冷める』などと口にした!」

栗田「清水さんの発言の前にそんなことを言ってすみませんでした」

小峰「そんなことを言ってるんじゃないんだ! 今は軍事行動の最中なんだぞ!」

清水「おまえは前線で戦っているときに、『飯がさめていてまずい』とか言うつもりか!」

栗田「そういうことじゃなくて、せっかく泉さんが…」

黒岩「総括しろ!」

栗田「それがわからないんです。まとめて話すということですか? だとしたら、ここに笹本さんと泉さんがいないのは…」

清水「全員立て! 総括援助だ!」

黒岩、立ち上がって栗田を立たせる。栗田の腹を殴る。栗田、倒れない。黒岩、顔を殴る。倒れない。

黒岩「やれ! 腹と顔を両方殴れ!」

小峰、瀧、林、栗田の顔と腹を殴るが倒れない。

黒岩「もういい! 外に縛りつけろ!」

小峰、瀧、林が栗田を上手に連れて行く。小峰と林、上手の屋外にある立木に栗田を縛り付ける。

瀧 「おいっ…、あれは…」

瀧、走って上手に退場。小峰と林、上手を見る。瀧、上手から走って登場。そのまま下手に走り、屋内の黒岩の前で止まる。

瀧 「笹本と泉が、凍死してます!」

  小峰と林、屋内に入る。全員黒岩を見る。

  間。

黒岩「笹本シンイチと泉ユリエの二人は、革命戦士として生まれ変わることができなかった。この二人の死は『敗北死』だ。そのような者で軍を組織することはできない」

  間。

黒岩「それよりもやらなければならないことがある。敗北死した泉の浪費のせいで兵站が危うい。すぐにでも補給を必要とする。町に下りなければならないが、この作戦の重要性を鑑みて、おれと清水さんとで行く」

小峰「異議なし!」

瀧・林「(つられたように)異議なし!」

小峰「しかし、黒岩さんと清水さんだけに大荷物を持たせるのは…」

清水「小峰、あんたも来なさい!」

小峰「異議なし!」

黒岩「瀧、おれがいない間はおまえが仕切れ。まず澤本と泉の死体を林と二人で埋めておけ」

清水「身元がわからないように衣服をすべて取り外せ」

瀧 「衣服に糞尿が…」

黒岩「鋏で切り取って脱がせるんだよ、そんなことも知らないのか」

瀧 「栗田の総括は…」

黒岩「おまえの判断でいい。自分の責任で総括援助をしろ…。行くぞ」

  黒岩と清水と小峰、立って上手に歩く。

  暗転。



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