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悪霊  作者: 恵梨奈孝彦
6/11

総括できた男

【4場】

山中。激しい風雪の音。ライトはつかない。下手から小峰と清水が登場。シルエットのみ観客に見えている。小峰、懐中電灯を持っている。3場までの道具の前で芝居すればよい。ただし劇中では別の場所。

清水「小峰 本当にここでいいんだろうな!」

小峰「この辺りのはずです、清水さん」

小峰が清水を先導。小峰が懐中電灯を上手に向ける。泉の腹の辺りを照らす。

小峰「ああ、ここだ。ここだ」

上手にスポットライトがつく。光の中で泉が縛られている。清水と小峰、光の中に入る。清水、前に出る。

清水「(小峰に)もっとそばにくればいいだろ。それともクサイのか?」

小峰「いえ…」

清水「まあ…、垂れ流しだもんな!」

  泉、顔をそむけてうなだれる。

清水「(そんな泉を見て)おまえがなぜこんな目にあっているかわかるか? わかったら総括が達成できたと認めよう」

泉 「私が本物の革命戦士として生まれ変われるために…」

清水「だめだ! 全くわかってない!」

  間。

清水「おまえがまだ女だからだ! 男に媚びているからだ! 男の前でカッコつけようとしているからだ!」

泉 「そんなことはありません…」

清水「わたしの姪が、『彼氏が好きだから二重まぶたにしたいけれど、いくらくらいかかるの?』とか聞いてきたから怒鳴りつけてやった。『人間を美醜で判断するような奴はこっぴどく振ってやれ』ってな! おまえはあいつと同じだ。何が革命家だ! 我々は暴力革命を戦わなければならないんだぞ! 毛沢東同志のお言葉どおり、革命は暴動なんだ! 戦争に男も女もあるか! おまえは前線で戦っているときに、『ちょっとトイレ』とか言うつもりか? 男も女も、全てを捨てることができた者だけが本物の兵士だ! そういった兵士によってのみ組織された軍こそが前衛となれる!」

  清水、小峰の方を向く。

清水「(小峰に)おまえはちょっと残れ。総括がどれだけ進んだか、後で報告しろ!」

清水、下手側に光の外に出る。下手にスポットライトが点く。清水、下手の光の中に入る。そこで物陰(何でもいい)に隠れて上手側に聞き耳を立てる。


  上手側

泉 「小峰さん…、お願いだからわたしの総括ができたと言って」

小峰「ウソはつけませんよ」

泉 「だったら、ほんの少し縄を緩めて。さっきから手首が痛くてたまらないの。何でもする。何をされても誰にも言わないからさあ…」

小峰「あなたは誤解しているようですね。おれは総括援助を受け、革命戦士として生まれ変わったのです。今のおれは、あなたを女性として捉えようという気は一切ないです。あなたをユリエさんと呼ぶこともない。一切の迷いが吹っ切れたんです。黒岩さんと清水さんに感謝しています。あなたも早く気絶するといい。目が覚めたときは生まれ変わっていますよ」

  小峰、光の外に出て下手に歩く。

泉 「待って。小峰さん、待ってよお…」

小峰、清水が隠れている奥を通って下手に退場。

暗転。



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