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第7話 ラーメン屋、麺類とは何かを考える

「やっぱスープが欲しいな」


 料理の強化効果が1%上がり、ラーメン流星にも常連が増えてきた。

 メニューは相変わらず味噌ラーメンだけである。それも自動生成スープによる初期レシピのものである。

 味の改良をしていくには、スープを手作りする必要があるだろう。


 NPCの店からボスドロップの料理素材を購入する場合、一部を除いて一度自力でボスを討伐する必要がある。プレイヤーから購入すれば制限はないが、「ラーメン流星」の常連に素材屋はおらず、また、プレイヤー経営の素材屋の店は序盤の街にはなかった。


 料理教室で知った情報によると、第2の街「暗黒街」のボスモンスター討伐で、煮干しがドロップする。

 しかも第3の街「慟哭街」は港町であり、先に進むと魚介が入手できる。

 さらに進んで第3の街「慟哭街」のボスを倒すと、鶏肉や鳥ガラ、第4の街「道楽街」のボスでは、とんこつが取れる。とんこつはハズレであり、普通はレアドロップのオーク肉を狙うものらしいが。


 第2の街「暗黒街」のボスから煮干しがドロップするのは、煮干しラーメンを作るため、ではない。

 和の心、みそ汁を作らせたいからである。


 この辺りはプロデューサーCMRのわがままではなく、夕霧オンラインスタッフの意見の総意だと攻略wikiに書いてあった。料理教室でもみそ汁を要求されたあたり、本当なのだろう。


 ラーメンバカの流星としては、煮干しが取れる以上、煮干しラーメンを作るのはもはや決定事項であり、そろそろ先に進んでみようかという気持ちになった。



 まずは武具の購入による能力の底上げを考えよう。

 流料理人はともかく転職予定の二次職ラーメン職人の職業装備に関しては、攻略wikiでも情報が不足している。

 ここは、夕霧オンラインをやっており、リアルの戦闘知識も多い知り合いの力を借りることにした。


 呼び出しに快く応じてくれたオークデン、樫田(かしだ)さんはリアルではマタギをしている。VRMMOにかなりの頻度で入り浸っているほど文明になじんでいるので、どちらかというと害獣ハンターと呼んだ方が良いだろうか。ジビエラーメン専門店「ムカ着火ボルケーノ」のジビエ肉は、樫田さんと店長の日隈(ひぐま)が取って来たものを主に使っている。


 オークデンに話を聞いた限りでは、生産職の作った武器、防具でNPCの店売りより性能が良くなるのは、該当ステータス50以上、つまり職業2つないし3つをレベル20まで上げた頃かららしい。それまでは強力な武器でも店売りと同等の性能に落ちるため、見た目以外で高い金を払う意味はない。強力すぎる武器は、それ以降もステータスで上昇幅に制限がかかっている。

 また、ラーメン職人の武器は詳しくないが、二次職以降はその職業に関連したアイテムを武器か装身具の欄に装備できるそうだ。

 ラーメン職人なら湯切りに使うラーメンてぼ(深型の湯切り用の網)、または、菜箸あたりだろうか。


 夕霧オンラインの戦闘については、リアルでの経験が基本的に役立つという話も聞くことができた。であれば、日頃からボルケーノの業務の一環に戦闘訓練が組み込まれていた流星は、未経験者に比べれば有利だろう。


「ありがとう、オークデン。参考になったよ。お礼と言っては何だけど、ラーメン流星の無料券を渡しておくよ」

「ぶふ、いいってことよ、でござる。何なら、拙者がキャリーしてもいいし、初心者なら、運営のお知らせ欄に初心者限定ブースト薬ってのがあるから、ソロにこだわるならそっちを使ってもいいでござる」

「ありがとう。でもオークデンの手を煩わせるのも悪いし、攻略はまったりやるつもりだから、ソロにしておくよ」

 ラーメンの修行のつもりで始めた夕霧オンラインだったが、思いのほか楽しくなってきたので、自力で攻略を進めたい流星だった。



 オークデンからNPCの店や生産職の店の場所を聞いた流星は、オークデンと別れ、装備を買いに向かった。


****


 流星はいくつか店を見て回った。武器・防具の店「大腿三頭筋」で、モストマスキュラーをしていた変態、いや、生産職がいたので話しかけてみたところ、ヨガの話で思いのほか意気投合した。ムカ着火ボルケーノでのアルバイト経験がここでも活きた。

 見たままの名前である生産職プレイヤー「マッチョ」の武器と防具は性能がよさそうだったので、防具として、ねじりはちまき、じょうぶな寸胴鍋、じょうぶな長靴を購入する。それぞれ1万イェンである。

 さらに、性能が良いと言って丸め込まれた結果、ふりふりのエプロンを2万イェンで購入してしまった。

 防具は今のところは店売りと同じ性能だが、ステータスが上がると、上昇幅が大きくなる予定だ。


 なお、ヤンキーにしか見えない流星がふりふりのエプロンを着ている絵面はあまり想像してはいけない。


 また、武器としてタングステン包丁を3万イェンで購入し、NPCのラーメン用品店も回って、ラーメンてぼを入手した。雑貨屋にも寄って、回復用のポーションなどを購入した。こちらは占めて2万イェンである。


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 装備

 頭:ねじりはちまき(防御力+1)(ステータス制限緩和によって最大+20)

 武器:タングステン包丁(攻撃力+10)(ステータス制限緩和によって最大+30)

 盾:じょうぶな寸胴鍋(防御力+5)(ステータス制限緩和によって最大+20)

 胴:ふりふりのエプロン(防御力+5)(ステータス制限緩和によって最大+20)

 手:なし

 足:じょうぶな長靴(防御力+5)(ステータス制限緩和によって最大+20)

 装身具:ラーメンてぼ(攻撃力+1、アクティブ使用時に湯切り効果(麺系モンスター特攻))


 所持品

 体力薬(HPポーション)×50


 所持金

 310000イェン→210000イェン

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 流星はさっそく試し切りに出かけた。ラーメンの補充もかねて、ボスの一反木綿狩りである。

 一反木綿との戦いは、これまで同様、カウンター主体のスタイルである。

 長靴によってしっかり踏み込めるようになったし、タングステン包丁の切れ味も悪くない。今はステータス制限があって大きな変化を感じないが、これまでと比べて楽に狩れていることは間違いない。


 ザシュっと音を立てた一反木綿がラーメンに変わるのを見ながら、流星は、もしかして、こいつ湯切り攻撃が効くらしい麺系モンスターじゃね? と思った。


 さっそくボスエリアに入り直して、一反木綿と再戦する。

 今までは一反木綿の攻撃に対し、包丁で反撃していたが、武器をラーメンてぼに持ち替えて湯切りを狙う。

 一反木綿がタックルを仕掛けてくるのをギリギリでかわし、ラーメンてぼに突っ込ませる。

 流星は慣れた手つきで湯切りを行う。


 流星湯切り(メテオドライブ)

 ラーメンに対して、何百回、何千回と行ってきた、流星渾身の湯切りである。

 さらに2度、3度と流星湯切り(メテオドライブ)を続ける。ラーメンてぼの中で一反木綿が二つに分裂したようだ。

 ここで手を緩める流星ではない。ムカ着火ボルケーノ店主日隈との戦闘訓練では、やったと思った瞬間こそ気を引き締めなければいけない、と言われ続けてきた。

 ラーメン屋のアルバイトが日常的に戦闘訓練を行っていることに、いまだ疑問を感じない流星である。


「湯切り! 湯切り! そして、湯切りだ!」

 やがて完璧な湯切り具合になった二つの一反木綿はポリゴンとなって消滅、そのままラーメンに変わった。


「ラーメンをドロップするだけあって、やっぱ一反木綿は麺の材料なんだろうな」


 謎の納得感を得た流星は、料理人のレベルが上がるまで一反木綿を狩り(ゆぎり)続けた。


所持金の計算が誤っていると指摘を受けたので、装備の値段などを修正しました。


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人物名 流星 性別 男 種族 人間

職業

料理人 Lv. 20 / 20


体力 29/29

魔力 29/29


攻撃力 30(+11)

防御力 28(+16)

瞬発力 30

魔法攻撃力 9

魔法防御力 9

技術力 49


装備

頭:ねじりはちまき(防御力+1)

武器:タングステン包丁(攻撃力+10)

盾:じょうぶな寸胴鍋(防御力+5)

胴:ふりふりのエプロン(防御力+5)

手:なし

足:じょうぶな長靴(防御力+5)

装身具:ラーメンてぼ(攻撃力+1、アクティブ使用時に湯切り効果(麺系モンスター特攻))


技能

包丁格闘術Lv. 7

寸胴防御術Lv. 4

ラーメン作成術 Lv. 5

毒耐性 Lv. 1 ←New!

料理強化術 Lv. MAX ※オン



所持金

210000イェン


店舗

「楼閣街」Z9地点(名称:ラーメン流星)

 メニュー:味噌ラーメン800イェン 技術力+2%

 ※流星が店を開けている時間のみ販売される


所持品

味噌×30、しょうゆ×279、ナルト×100、メンマ×100、酢×15、みりん×15、酒×3、ラーメン×400、うどん×900

体力薬(HPポーション)×50


移動可能な拠点

楼閣街、暗黒街


特殊所持品(運営のお知らせ欄から受け取っていないまま忘れている)

初心者限定ブースト薬(1時間体力魔力が減少しない)×100(※第30の街に着くと消滅する)

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