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第6話 ラーメン屋、幼女に教えを乞う

 ラーメン流星がオープンしたゲーム内の初日、店はそれなりに繁盛していた

 メニューは味噌ラーメンだけだが、湯切りや盛り付けのパフォーマンス、そして伸びていないラーメンという長所により、しばらくは安定して営業できそうだった。


 オークデンやCMRことプロデューサー千村、「リーマン麺」の常連だった妖狐やくノ一、冷やし中華の人などがオープン直後から並んでくれた。


 冷やし中華の人は、皿の部分が顔になっており、皿から伸びた麺が手足を形成している。空飛ぶスパゲティモンスターを実写化すると案外こういう風体なのかもしれない。(※1)

 ちなみに、冷やし中華がラーメン屋に来るのは共食いではないか、とは客はみんな思っているが口には出していない。


 オークデンや何人かの常連予定の人とフレンドコードを交換しつつ、流星はラーメンを淡々と作り続けた。

 ラーメン屋のシステムは、CMRのこだわりのおかげか、完全に電子化されている。入り口で食券を買うと、注文内容が店主用のメニュー画面に表示され、完成品を渡すと自動で「済」マークを付けてくれる。

 流星が以前働いていた「ムカ着火ボルケーノ」は個人経営の小さなラーメン屋であり、そんな便利なシステムはなかった。食券機すらない今時珍しいローテクな食事処である。

 次のアルバイト先である世界的チェーン店「海岡屋」は似たような電子システムが導入されているため、それに慣れるという意味でも夕霧オンラインを始めてよかった、と流星は思う。


 初日の営業が終わったころ、オークデンが話しかけてきた。

「ぶふ、伸びてないラーメンはうまいんでござるが、流星はなんで料理強化(バフ)技能を取得していないでござるか」

「え?」

 流星はラーメンを作れればいいので、料理による強化(バフ)技能は詳しく調べていなかった。料理人が料理を作れば、自動的に付与されるものだと思っていたのだ。


「料理人の強化効果は、技能を取らない場合は、技術力1%アップ固定で、クエストをこなすと手に入るパッシブの技能の効果で、対象ステータスや上昇幅が変わるようになるでござるよ」

「そんなん攻略wikiに書いてあったべか?」


 流星はステータス画面から、検索サイトを呼び出し、攻略wikiを検索、料理人の項目を見直す。


----

 料理人

 料理人系職業の作った料理を食べると一定時間強化(バフ)効果がある。


 初期料理人は技術力1%アップ固定。

 Lv. 5以上になったらクエストをこなし、料理強化技能Lv. MAX(入手時からMAX固定)を手に入れておくこと。料理強化技能のオンオフはステータス画面から切り替え可能。

----


「書いてあったわ」

 流星は説明書を読み飛ばすタイプであった。

 料理の味には関わらないが、せっかく冒険前に食べてもらうなら、効果は高い方が良いだろう。

 流星はオークデンにお礼を言うと、クエストを受けるため、料理教室「マダム」に向かった。


****


 料理教室「マダム」。料理人達がお世話になる場所でもあり、料理人を究める気のない一部の(変態)紳士たちにもひそかに人気のあるスポットである。

 その理由は、目の前にいるNPC、マダムである。


「こんにちは! 料理教室マダムへようこしょ! あたちが教室のオーナー、マダムだよ!」

 流星は困惑していた。

「なぜマダムなのに幼女なんだ……」


 料理教室のオーナー、マダムは、25歳の未亡人という設定であるが、低身長、寸胴体系、舌足らずな話し方、どこをどう見ても幼女である。しかも狐耳と狐の尻尾が生えている。


 流星は、困惑しながらも、クエストをこなすだけなので、見た目は気にしてはいけないと思い直す。

 流星は変態紳士(ロリコン)ではないので、幼女先輩(マダム)の見た目について考えることをやめた。


 流星は見た目ヤンキーではあるが、学習できる男なので、料理教室に来る前に、攻略wikiのクエスト情報をきちんと見てきた。このクエストは、幼女先輩がランダムで3つの課題を出してくる。それぞれの課題料理を作成することで、料理強化技能が手に入る。材料も幼女先輩が支給してくれるうえ、知らない料理であればレシピが入手できるので、料理人には必須のチュートリアルクエストである。


「流星くんは、ラーメン作成術の技能を持っているんだね! じゃあ、チャーシュー、みそ汁、ラーメンケーキをつくってくれるとうれしいな!」


 流石は料理教室のオーナー、幼女先輩である。流星の技能まで考慮してくれている。

 チャーシューはラーメン作成術の影響だろうし、今後作ろうと思っていたから、特に問題はない。みそ汁は、出汁の取り方のチュートリアルなのだろう。特に問題はない。

 問題は最後の一品である。


「ラーメンケーキとはなんぞ……?」

 流星はメニュー画面を開き、攻略wikiを見てみる。

 マダムがこれまで出してきた課題の一覧から、ラーメンケーキを探すものの、該当するものは見当たらない。ちなみに、かつ丼ケーキならあった。


 わからないのであれば、聞けば良い。流星は素直な性格である。

「マダム、ラーメンケーキとは何でしょうか」

「んーとね、ラーメンの形をしたケーキなの! レシピが欲しいなら500イェンで売ってあげるよ!」


 話し方も幼女なので、説明を聞いてもよくわからなかったが、とりあえずレシピを購入した。せっかくなので、チャーシュー、みそ汁もレシピを購入しておいた。

 レシピによると、ラーメンケーキとは、全部がお菓子の材料でできた、創作ケーキの一種のようだ。

 食事としてのラーメンではないものの、麺を作るゲーム内動作などは今後の参考になりそうだった。


 まずはチャーシューの作成に取り掛かる。

 第4の街「道楽街」のボス、オーク太郎次郎兄弟からドロップする、オーク肉をひもで縛る。レシピ通りに調味料を調合し、圧力鍋に入れる。オーク肉を入れて煮沸し、灰汁をとったら、圧力鍋のゲーム内処理スキップ機能を利用して、味が染み込むエフェクトが終わるのを待てば完了である。

 調味料を変えたり、スキップ機能を使わずに調理したりと工夫をすれば、味や強化効果の上昇幅がかわるらしい。

 流星は基本を大事にする男なので、初回はゲーム内レシピ通りに作成する。


 まずは一品目、チャーシューが完成した。

 次はみそ汁である。


 煮干しだしのみそ汁のレシピを買ったので、その通りに作成する。

 第2の街のボス、生体に対しても吸引力の変わらないタコ(正式名称)のドロップが煮干しである。小魚の水分を吸い取って生態系を破壊している邪悪な存在という設定らしい。ちなみにタコのくせに、倒してもタコ足などは一切ドロップしない。なぜなのか。


 煮干しは出汁を取るのに適しているし、煮干しラーメンは市民権を得て久しい。ボルケーノでしか提供されているのを見たことがない、ティラノ出汁ティラノ肉ラーメンとは大違いである。あれはあれでうまいのだが。(※2)


 煮干しを鍋にいれ、水に浸しておく。リアルだと、ここである程度つけ置きしておくが、ゲーム内処理でスキップされる。あとは煮沸して灰汁を取り、別の容器にこした出汁を移せば、出汁の完成である。

 煮干しの頭やワタを取った方がおいしくなると思うが、この辺りゲームで区別されているのかは後で検証すれば良いだろう。出汁といえば昆布も欲しいところだ。今後の課題として頭の片隅にメモしておく。

 出汁に味噌を溶かして、具として豆腐とネギを入れて調理をすると、二品目、みそ汁の完成である。


 チャーシューとみそ汁を幼女先輩に出してチェックをしてもらいつつ、三品目、ラーメンケーキに取り掛かろう。


 麺は生クリーム、砂糖、栗から作成する。モンブランのもじゃもじゃしたよくわからない部分である。栗をつぶし、よく混ぜた材料を綿棒で伸ばす。

 パティシエ職志望だと絞り器を使うのだろうが、せっかくなので、製麺機で麺の形状にする。

 ジジジジジ

 特に問題なく麺が完成した。

 スープに見立てたコーヒーゼリーをラーメン丼に入れ、先ほど作成した麺を入れる。メンマに見立ててカットしたパイナップルや、海苔の代わりのチョコレートを添えたら、冷蔵庫で冷やして完成である。


 自分でも食べてみようと思って二人分作成してある。

 幼女先輩に片方を差し出し、自分でも食べてみる。


「いただきます!」

「いただきますなの!」

 ゲーム内処理が入っているとはいえ、意外と普通のスイーツになっている。


 幼女先輩も満足したらしく、こう言ってくれた。

「3つともおっけー!」


 反応が軽い。


 ともあれ、これでクエストが完了し、料理強化術を得た流星は、ラーメン流星に戻り、今後のことを考えるのであった。


※1 空飛ぶスパゲティモンスター

架空宗教「空飛ぶスパゲティモンスター教」において、創造主たる存在。見た目はヤフーでググってください。


※2 ティラノ出汁

恐竜は鳥類の祖先なので多分鳥ガラみたいな出汁が出せるはず……。


もうちょっとちゃんとラーメンを作る課題にしようと思っていましたが、幼女先輩が暴走しました。申し訳ありません。



------

人物名 流星 性別 男 種族 人間

職業 料理人 Lv. 19 / 20


体力 28/28

魔力 28/28


攻撃力 29(+1)

防御力 27(+2)

瞬発力 29

魔法攻撃力 9

魔法防御力 9

技術力 47


装備

頭:なし

武器:包丁(攻撃力+1)

盾:寸胴鍋(防御力+1)

胴:エプロン(防御力+1)

手:なし

足:なし

装身具:なし


技能

包丁格闘術Lv. 7

寸胴鍋防御術Lv. 4

ラーメン作成術 Lv. 4

料理強化術 Lv. MAX ※オン←New!


所持金

310,000イェン


店舗

「楼閣街」Z9地点(名称:ラーメン流星)

 メニュー:味噌ラーメン800イェン 技術力+2%

 ※流星が店を開けている時間のみ販売される


所持品

味噌×30、しょうゆ×279、ナルト×100、メンマ×100、酢×15、みりん×15、酒×3、ラーメン×400、うどん×900


移動可能な拠点

楼閣街、暗黒街


特殊所持品(運営のお知らせ欄から受け取る必要があり、流星は気づいていない)

初心者限定ブースト薬(1時間体力魔力が減少しない)×100(※第30の街に着くと消滅する)

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