第15話 ラーメン屋、ティラノに挑む
準備が整い、流星は魔攻ティラノを狩りに行く決意をした。
海岡屋のアルバイトと日課を終えたあとは、いつも通り「夕霧オンライン」にログインし、ラーメン流星を営業する。最近は塩の売り上げが多く、今日は塩210、煮干し味噌90、トッピングの海苔100が売れた。仕入れを終えた後、第5の街「教育街」のボスエリアに向かって行った。
以前のアルバイト先、「ムカ着火ボルケーノ」店主日隈喜朗に、ティラノとの戦い方を聞いたことがある。そのアドバイスを思い返しながらボスエリアに移動している。
ティラノは、顎の力が強いのはもちろんのこと、巨体を支える脚力も脅威であると言っていた。また、小さいとはいえ、前足の爪は触れないように気を付けた方が良いとも言っていた。
日隈が素手でティラノのやり合った際は、左右に回り込んで顎や爪の攻撃を受ける可能性を減らしつつ、蹴られないよう注意をして、肋骨の隙間を狙って殴り続けたと言っていた。攻撃方法が違うとはいえ、参考になるだろう。
肋骨の隙間を狙っただけで殴り勝てる日隈は、どう考えても普通の人間ではないのだが、流星は天然なので気づいていなかった。
回想が終わるころ、いよいよ、魔攻ティラノのボスエリアに到着した。
♪デロデロデロデロ
切り替わるBGMを聞きながら、流星は気を引き締める。
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ボスエリアは奥に川が流れており、右側にやや出っ張った崖がある以外は、開けた土地になっている。動き回れる広さは30m四方といったところか。
魔攻ティラノは全長3mほどである。ティラノといえば茶色いのかと思っていたが、基本的に緑色で、首周りにはふさふさした虹色の羽根が生えている。
「いやお前は絶対クジャクだろ」
「ギョアアアアアアア」
言葉を理解したのか、首を左右に振りつつ、魔攻ティラノが吠えてきた。
距離を取っていると一方的に火炎球で攻められるため、早く近づく必要がある。
流星は真っ赤な寸胴鍋を構えつつ、慎重かつ大胆に近づいていく。
「ギョアギョアギョアアアアアアア」
3回吠えたら、火炎球攻撃が始まる合図である。大きな口を開けると、火炎球を生成し、放物線を描くように吐き出して来る。
ボン、ボン、ボンと3連続に放たれる1mほどの火炎球のうち、2つをかわしつつ、試しに一つ被弾してみる。真っ赤な寸胴鍋で正面から受けて、勢いに押されながらも受けきった。数値を確認すると8ダメージであった。
「耐性があっても、かなり食らうな。ブレスは火炎球5個分の威力らしいからギリギリかもしれないな」
念のため体力回復薬で回復しつつ、近づいていく。
再度3連続の火炎球が来る。今度はかわしつつ、反時計回りに動き、残り15mほどである。
「ギョギョギョアアアアアアア」
近づかれて恐れをなしたのか、今度は5連続で火炎球が放たれる。
ジグザグに走りつつ回避、川を背にするティラノまで残り5m、やや右側から近づいていく。
ここまで近づくと火炎球の予備動作よりも、物理攻撃の方が早い。
本来ティラノの武器である顎を使うため、ティラノが大きく首を振ってくる。
流星は、かみつき攻撃の射程ギリギリまで近づいてから、一歩下がりつつ、鼻先に包丁をかすめて牽制する。
苦々しい目でにらんできたと思ったら、そのまま180度旋回し、今度は尻尾での攻撃を仕掛けてくる。
顔面を狙った尻尾をスライディングでかわし、足元に潜り込んだ。さらに180度回転し元の向きを向き直した魔攻ティラノに対し、肋骨が浮き出ている個所を避け、胸の中心付近を数度刺す。
強力な蹴りが来る前に、地面を転がって退避、やや距離を取る。
寝ころんだままだと、また火炎球での攻撃が来るため、転がった勢いを生かして立ち上がり、体勢を立て直した。
火炎球を避けては近づき、包丁での攻撃に加え、日隈直伝の掌底、ショルダータックル、肘うち、貫手、蹴りを入れていく。
ゲームでの戦闘にも慣れてきたおかげで、リアルでの戦闘経験が徐々に活かせるようになってきた。戦闘経験が必要なラーメン屋で働いていて良かったと思う流星である。
物理攻撃に弱いというのは本当だったようで、魔攻ティラノのHPが面白いように削れていく。
残り10%になった頃だろうか、魔攻ティラノの虹色の羽根が大きく広がっていく。
追い詰められた魔攻ティラノの特殊行動、回避の難しいブレス攻撃が来る合図である。
口にためた炎を足元に吐き出し、魔攻ティラノを中心に扇状に炎が広がっていく。
一応タイミングをはかってジャンプしてみたが、ブレスの範囲は広く、かわし切れずに残っているブレスに着地してしまう。
「ぐべらっ!」
熱さと痛みで流星は思わず奇声をあげてしまう。
寸胴鍋を構え直し、ブレスが通過しきるのを耐えた。
ダメージは50、一撃でかなり持っていかれた。ただ、オーク戦でホームランされたときよりは少ない。
ティラノも満身創痍だ、行けるだろう。
日隈に習った通り、肋骨を避けつつ、心臓付近に包丁を突き立てては、離脱、振り回す顎や尻尾に気を付けつつ、左右に回り込んで削っていく。
時折、火炎球を放ってくるが、顔を向ける前に回り込んでしまえば、打たれる前に回避できる。
「ここだっ!」
隙を見て、心臓へ向かって深い一突き。
渾身の突きは深々と刺さり、わずかに残っていたHPを削り切った。
魔攻ティラノはよろよろと倒れ、やがてポリゴンに変わっていく。
「ワレノハネ、ウツクシイノニ、ヨメハコズ。コドクノウチニ、シヌモサダメカ」
ティラノが何とも悲しい辞世の句を詠んで消滅した後には、マンガ肉と聞いておよそ全ての日本人が想像する見た目のティラノ肉と骨が残されていた。
「『我の羽根、美しいのに、嫁は来ず。孤独のうちに死ぬも定めか』か。やっぱお前、実はクジャクだろ」
せめておいしく調理してやろうと思った流星であった。
魔攻ティラノ討伐が終わったからか、川に橋が架かっている。橋を越えて次の街、我我我街に行き、拠点を更新すると、ラーメン流星に戻った。
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手に入れたティラノ肉と、以前手に入れていたオーク肉をそれぞれチャーシューにしてみる。オーク肉は以前クエストで作った通りの味である。ティラノ肉は鶏肉に近い風味だった。
ついでにとんこつ、ティラノ肉の骨でそれぞれスープを作ってみたところ、「ムカ着火ボルケーノ」で食べ慣れたしょうゆラーメンが作れそうに思えた。
もう少し研究を進めて、メニューに追加しようと決め、流星はログアウトした。
「教育街」は技能を得るための特殊クエストが多い設定を考えていますが、流星はラーメン以外に興味がないので出す機会がありません。
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人物名 流星 性別 男 種族 人間
職業
料理人 Lv. 20 / 20
ラーメン職人 Lv. 20 / 20
頑固一徹ラーメン職人 Lv. 20 / 20
ダークラーメン職人 Lv. 2 / 20
炎獄ラーメン職人 Lv. 2 / 20 ←Up!
体力 69/69
魔力 69/69
攻撃力 70(+21)
防御力 69
瞬発力 70
魔法攻撃力 9
魔法防御力 9(+25)
技術力 129
装備
頭:真っ赤な魔法の三角巾(魔法防御力+5、炎耐性)
武器:タングステン包丁(攻撃力+20)
盾:真っ赤な魔法の寸胴鍋(魔法防御力+5、炎耐性)
胴:チューリップ柄のエプロン(魔法防御力+5、炎耐性)
手:真っ赤な魔法のゴム手袋(魔法防御力+5、炎耐性)
足:真っ赤な魔法の長靴(魔法防御力+5、炎耐性)
装身具:ラーメンてぼ(攻撃力+1、アクティブ使用時に湯切り効果(麺系モンスター特攻))
技能
包丁格闘術Lv. 8
寸胴防御術Lv. 5 ←Up!
ラーメン作成術 Lv. 8
毒耐性 Lv. 1
炎耐性 Lv. 5(MAX)
戦闘用湯切りLv. 2
料理強化術 Lv. MAX ※オン
料理弱体術 Lv. MAX ※オフ
所持金
2,299,600イェン
店舗
「楼閣街」Z9地点(名称:ラーメン流星)
メニュー:味噌ラーメン800イェン 技術力+2%
メニュー:塩ラーメン900イェン 瞬発力+3%
メニュー:煮干し味噌ラーメン1000イェン 技術力+3%
メニュー:海苔(トッピング)50イェン
※流星が店を開けている時間のみ販売される
所持品
味噌×500、しょうゆ×179、ナルト×300、メンマ×300、酢×15、みりん×15、酒×3、ラーメン×500、煮干し×200、わかめ×76,572、昆布×79,923、海苔×71,184、鳥ガラ×19、とんこつ×19、オーク肉×19、ティラノ肉×19、ティラノ骨×19
体力薬(HPポーション)×38
初心者限定ブースト薬(1時間体力魔力が減少しない)×55(※第30の街に着くと消滅する)
移動可能な拠点
楼閣街、暗黒街、慟哭街、道楽街、教育街、我我我街
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