第10話 ラーメン屋、スープを作る
出汁に試行錯誤する回なので料理描写(?)多め、コメディ成分少な目です。
流星は煮干しを入手し、第3の街「慟哭街」から転送システムを使って「ラーメン流星」に戻って来た。
自家製スープのために、さっそく出汁の作成に取り掛かる。
煮干しには、そのままお湯で煮たり、水につけておいたり、と、出汁の取り方にもいくつか方法がある。また、煮干しの頭とワタをとることで、味が変化する。できるだけ苦味を除きたければ、取った方が良い。
流星はいくつか出汁を試作してみることにした。
まずは料理教室「マダム」で入手したレシピ通り、基本の出汁を作る。煮干しをそのまま鍋にいれ、水に浸しておく。煮沸して灰汁を取ってから、こしたら出汁の完成である。
これを基本に、他の方式と比べて、一番求めるラーメンに近いものを探そう。
まずは、煮干しをミキサーにかけ、粉末状にしたものを2つ用意する。
準備ができたら、頭とワタをそのままにしたもの、頭とワタを取ったもの、煮干し粉末の3パターンで、水につけておいて放置するのみの、水出しでの出汁を作成する。
これはとても簡単で、鍋を用意して、ゲーム処理開始のボタンを押せばOKである。リアルだと1晩置いたりするが、5分ほどで処理が完了するらしい。
水出しで作る場合は、煮干しの頭とワタを取る必要は特にないのだが、ゲーム内だと違いが現れるかもしれないので、念のため作成することにした。
処理を待つ間、別のパターンを作成する。
煮干しの頭とワタを丁寧に取って、基本レシピと同様に作業を行う。鍋にいれ、水に浸し、煮沸して灰汁を取る。こして出汁を容器に移して完成である。これは処理あり煮出しパターンと呼ぶことにする。
粉末状の煮干しを煮出して作るパターンも用意する。鍋にいれ、そのまま煮沸して灰汁を取る。こして出汁の完成である。粉末煮出しパターンである。
作っている間に水出しの3パターンもゲーム内処理が終了した。
これで合計6パターンの出汁ができた。
基本レシピの出汁は、澄んだ琥珀色をしている。処理なし煮干しの水出しは色が薄めででほのかに香りがある。
同様に、作成した出汁を比べていった結果、色の濃さは、以下の順番に濃いように見える。
粉末煮出し、処理なし煮出し(通常レシピ)、処理あり煮出し、粉末水出し、処理なし水出し、処理あり水出し
出汁の味見をしたところ、処理をせずに煮出している基本レシピよりも、処理あり煮出しの出汁の方がやや雑味が少なく上品な味に感じされる。リアル同様、味に違いが出るようだ。
雑味が出ると言っても、素材の味を生かしてみそ汁を作るなら、基本レシピで十分である。
粉末状にした煮干しの煮出しは、流星が以前働いていたラーメン屋のスープで使っていたものに近いように感じた。
水出しの出汁はそれぞれ上品な味で、出汁としてはおいしいのだが、今回目指すラーメンにやや向かないように感じる。
ゴブリンからのドロップアイテムの味噌は、やや上品な風味の合わせ味噌で、あっさり系を目指すのであれば、処理あり煮出しのものを合わせるのが「ラーメン流星」の味噌ラーメンには合いそうだった。この辺りは料理人の好みの問題だろう。
念のため、それぞれの出汁を寸胴鍋に入れ、普段ゲーム処理で自動作成されるスープの代わりに、今回の出汁を使ってスープを作る。
ラーメン丼を温めておき、味噌を入れ、スープを溶かす。
ちなみに、煮干し1匹からは30杯分のスープが作成できた。
夕霧オンラインの中の煮干しはなかなか強力なようだ。ゲーム内でなければ、うまみが強すぎて、ハッピーになれるお菓子の粉レベルで麻薬扱いされていることだろう。
6種類の丼のスープを準備し終えた流星は、麺をゆで、湯切り、丼に入れたらメンマとナルトを盛り付ける。
6種類のラーメンをそれぞれ味見し、検討した結果、流星は味噌ラーメンに合わせるのなら、煮干しは粉末にせず、頭とワタを取って煮出したものを使うと決めた。
ゲームの煮干しが強力なおかげか、仕上げとして魚粉を入れなくても十分煮干しラーメンを名乗れる出来になっている。
スープに使用する出汁が決まったので、この出汁を作るため、残りの煮干しの頭とワタを取っていく。
あとは適量を使用し、営業時間になる前にスープを準備しておけば良い。
ゲーム処理のおかげで楽をしていたから忘れがちだったが、スープ作りはラーメン屋の大切な仕込みの作業の一つである。この調子で進めて行けば、夕霧オンラインでもラーメンの修行ができそうだな、と当初の目的を思い出した流星であった。
煮干し出汁のスープが作れるようになったところで、流星は、しょうゆラーメンや塩ラーメンをどうするかを考える。
煮干し出汁を利用して煮干ししょうゆなどを作っても良いが、「ムカ着火ボルケーノ」のジビエラーメンはしょうゆが基本であった。ボルケーノのラーメンに惚れてアルバイトをしていた流星としては、しょうゆラーメンを作るときは、やはり鳥ガラかとんこつあたりを手に入れてからにしたいと思う。塩ラーメンは昆布だしを手に入れてから考えたい。
新しく拠点として開放した第3の街、慟哭街では、「それほど増えないわかめ」という魔物が昆布をドロップするし、ボスである「鳥ガラトプス」を倒すと鳥ガラが入手できる。攻略を少し進めるだけで、スープの幅が広がる。あっさり系しょうゆラーメン、塩ラーメンを作れるだろう。
しょうゆ、塩は一旦保留することにして、まずは煮干し味噌ラーメンの反応を見ることにした。
まだ見ぬスープを夢想しながら、流星は店のメニューに煮干し味噌ラーメンを仮メニューとして追加した。
------
人物名 流星 性別 男 種族 人間
店舗
「楼閣街」Z9地点(名称:ラーメン流星)
メニュー:味噌ラーメン800イェン 技術力+2%
メニュー:煮干し味噌ラーメン1000イェン 技術力+3% ※仮メニュー30杯限定
------
店内のメニュー表にもきちんと反映されている。
さあ、本日も「ラーメン流星」開店だ。
****
流星は、常連達に新メニューの煮干し味噌ラーメンの感想をもらいながら、いつも通り現実時間で90分、ゲーム内では6時間の労働をこなした。
煮干しラーメンは常連の感想を聞いてから本販売とすることにしたため、本日は30杯限定である。早々に売り切れたので、次回からは煮干しを買って、通常メニューとして販売することにする。
一度自力で入手した素材は、NPCの食料品店から定額で買えるようになるので、今後、煮干しなどの原料は、自力で攻略したものはどんどん買って仕入れることにする。
閉店後、食料品店で必要数を仕入れておいた。
ついでに、一反木綿の乱獲でドロップした不要なうどんなどを売却しておいた。あまり金策にはならなかったが、不要在庫を抱えていても仕方ないので、良いことにした。
なお、煮干し味噌ラーメンの強化効果は、丁寧に出汁を取ったおかげなのか、技術力3%アップである。上昇幅だけを見ると10位タイであるが、ラーメン以外に興味の薄い流星は、上昇幅のランキングを見ていないため、このことを知らなかった。
他の料理屋は技術力以外のステータス上昇用料理も売っているので、特に話題になることはなかったが、常連のラーメン大好き勢は、この調子で「ラーメン流星」がメニューを増やしていけば、いずれ強化効果の上昇幅も上り、もっと人気が出てしまうだろうことを、うすうす予感していた。
流星がリアルで海岡屋に働き始めるまであと5日。ゲーム内時間では20日。
鳥ガラ、とんこつとの出会いに胸を高鳴らせつつ、流星は翌日のラーメン流星の準備を終え、ログアウトした。
リアルに戻ってきた流星は、体力づくりのためのランニングをしながら、次の冒険に思いをはせた。
10話は、もはや流星ではなく煮干しが主役な気がしてきました。
魚粉ラーメンもおいしいと思いますが、粉っぽすぎない方が好きです。
------
人物名 流星 性別 男 種族 人間
職業
料理人 Lv. 20 / 20
ラーメン職人 Lv. 2 / 20
体力 30/30
魔力 30/30
攻撃力 31(+11)
防御力 29(+16)
瞬発力 31
魔法攻撃力 9
魔法防御力 9
技術力 51
装備
頭:ねじりはちまき(防御力+1)
武器:タングステン包丁(攻撃力+10)
盾:じょうぶな寸胴鍋(防御力+5)
胴:ふりふりのエプロン(防御力+5)
手:なし
足:じょうぶな長靴(防御力+5)
装身具:ラーメンてぼ(攻撃力+1、アクティブ使用時に湯切り効果(麺系モンスター特攻))
技能
包丁格闘術Lv. 7
寸胴防御術Lv. 4
ラーメン作成術 Lv. 5
毒耐性 Lv. 1
戦闘用湯切りLv. 2
料理強化術 Lv. MAX ※オン
所持金
121,800イェン
店舗
「楼閣街」Z9地点(名称:ラーメン流星)
メニュー:味噌ラーメン800イェン 技術力+2%
メニュー:煮干し味噌ラーメン1000イェン 技術力+3%
※流星が店を開けている時間のみ販売される
所持品
味噌×500、しょうゆ×179、ナルト×300、メンマ×300、酢×15、みりん×15、酒×3、ラーメン×500、煮干し×200
体力薬(HPポーション)×49
毒入りラーメン(麺は伸びている)×10
移動可能な拠点
楼閣街、暗黒街、慟哭街
特殊所持品(運営のお知らせ欄から受け取っていないまま忘れている)
初心者限定ブースト薬(1時間体力魔力が減少しない)×100(※第30の街に着くと消滅する)
----
12/30 所持金の計算が間違っていたので修正しました。
1/3 後続の話で在庫が合わなかったので修正しました。




