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第9話 ラーメン屋、出前に行く

 流星はタコ相手にあっけなく死に戻りした。


 流星は渋い表情をしている。

 ファーストキスを奪われたためだろうか、はたまた、油断して攻撃を受けたうえに動揺してしまった反省ゆえだろうか。


 いや、違う。

 流星はブツブツと呟いている。


 煮干しが欲しい。

 煮干し。

 煮干し、煮干し、煮干し、煮干し、煮干し、煮干し、……。


 だんだん表情に怒りが混じっていき、もはや鬼の形相である。

 街でこの表情のヤンキーを見たら、大抵の市民は逃げ出すであろう。どこかの戦闘狂のラーメン屋店主であればケンカを売ってくるだろうが。


 タコにキスされた悲しみよりも、煮干し(だし)への執念で、悪鬼と化したラーメンバカは、しかし、その顔とは裏腹に、冷静に対応策を考えていた。


 タコは、射程に入った者に対して触手で巻き付き、何でもかんでもキスして吸い続け、スリップダメージを与え続ける。

 ラーメンのことしか考えていない流星であるが、おそるべき吸引力でスリップダメージを与え続けるタコを倒すアイディアが浮かぶまで、それほど時間はかからなかった。

 といっても結局行きつく先はラーメンである。


 流星は、禁断のラーメンを作成することにした。


 街の付近の草むらに行き、目当ての植物をいくつか見繕う。

 幸い、ジビエラーメン屋「ムカ着火ボルケーノ」で働いていたおかげで、野草には詳しい。ゲーム内の植物は現実に近いようで、特に問題なく目的の植物を採取することができた。

 普段のラーメンを作成した後、摂取した植物をぶち込み、麺が伸びることを厭わずインベントリに入れていく。

 インベントリには、個数、種類ともに制限はない。開始当初は制限ありだったらしいが、3年を目前とした現在は、さすがに無制限になったようだ。


 悪鬼、流星はイカれた表情でラーメンを作り続ける。

「ふはははははは!」

 マンガやアニメで出てくる悪役のヤンキーもしないような、悪い表情をしている。やっていることは単なるラーメン作りであるが。


 やがて流星は必要数のラーメンを作り終え、タコに再戦を挑むのであった。


****


 ボス以外の戦闘を避けて進み、再び「生体に対しても吸引力の変わらないタコ」のボスエリアに入った。


「タコ野郎に出前だオラァ!」


 前回の反省を生かし、小魚が煮干しになる前に、タコの射程ギリギリまで近寄り、用意したラーメンを地面に置いていく。

 実に地味である。

 流星は、伊達にリアルでラーメン屋をやっていない。タコ相手でも思いやりを忘れず、一滴もこぼすことなく、ぴったりの位置に出前を成功させている。


 今回、タコにお届けするのは、トリカブトや百合など毒が含まれる植物を入れたラーメンである。

 リアルでタコにどの毒が効くかはあまり考えていない。ゲーム内効果は植物によらず同じ毒である。トリカブトでも他の植物でもダメージ量は一定である。


 ちなみに敵キャラに料理を提供した場合も、料理強化効果は発動する。

 このために流星は料理強化技能をオフにして調理し、技術力が1%上がるだけのラーメンにしてある。

 基本的には三次職のダーク○○系統の料理系職業が得意としている、見るからに毒料理といった見た目の料理を作成することができれば、弱体(デバフ)効果の付いた料理として作成することもできる。ダークな料理系職業でなくても作成はできるはずだが、流星の今の腕前ではデバフラーメンは作成ができなかった。


 射程内にあるラーメンに問答無用で巻き付き吸い付くタコを見て、流星はほくそ笑んだ。

 ズルズルズル。

 タコはラーメンをすすっている。


「麺は伸びているが、渾身のラーメンだ! どんどん食ってくれ!」


 ラーメンを吸引したタコが青から紫に変わり、毒状態となったことが分かる。


 毒状態のエフェクトになったタコだが、特に動きに変わりはなさそうである。食べ終わったラーメン丼を放り投げ、次のタコ足射程圏内のラーメンに吸い付きに行った。

 本来、煮干しに変えられる運命の哀れな小魚ステージギミックにすら、目をくれることもない。


 タコ足の射程を意識してラーメンを配置し、タコにラーメンを食わせ続けること15分。紫色になったタコは、その後も吸引力を落とすことなく、10秒で1杯、合計90杯のラーメンをすすった。

 10秒で1%のスリップダメージでも、15分粘れば、積もり積もって90%のダメージになる。こうなるとボスでもさすがに虫の息である。後はキスされることもいとわず、近寄ってタコ殴りにすれば良い。


 5mのタコと言ってもデフォルメされているので、迫力はそれほどでもない。

 流星は昔、リアルでツキノワグマと戦った時を思い出して比較した。あの時を思えば5mのタコなど、どうということはない。ツキノワグマはマジでヤバかった。

 それにゲーム内で今死んでも失うものは毒ラーメンくらいだ。ファーストキスは前回奪われている。


 流星は果敢にタコに突撃した。


 右手に包丁、左手にラーメンてぼ、盾の代わりとなる寸胴鍋は背中に背負っている。


 右から来るタコ足は包丁で刺して突進の勢いのまま切り落とし、左から来るタコ足は、てぼに突っ込み流星湯切り(メテオドライブ)を発動する。

 戦闘用湯切り技能の効果なのか、湯切り攻撃を受けたタコ足はスタンしている。


 正面から2本のタコ足が迫る。


 流星は軽やかなステップで半回転し、背中の寸胴鍋を2本のタコ足に叩きつける。変則的な防御であるが、システム的にはシールドバッシュ扱いになったようだ。正面から来たタコ足2本にダメージが入り、スタンしている。


 再びタコに向き合った流星はタコに肉薄し、包丁で刺し続ける。残り4本のタコ足に巻き付かれ、吸引攻撃(キス)を受けながらも、ガスガスと右手の包丁で刺し、隙を見て左手でタコ足に湯切りを発動し続ける。


 ザク! ザク!

 タコも負けじと吸引を続ける。

 チュゥゥウ!

 流星は包丁を指す手を緩めない。

 ザク! ザク!


 タコにキスされたことで流星のHP(とメンタル)が削れていく。

 だが、流星の攻撃に加え、毒のスリップダメージもあるため、流星のHP(とメンタル)が尽きるより先に、タコがポリゴンとなり消滅していった。


 ボスのいた位置に残ったドロップは、もちろん煮干しである。今回ギミックの小魚はすべて無事だったのに、なぜドロップするのかは不明である。


 流星はドロップを回収し、第3の街「慟哭街」に足を進めた。


タコの突破方法ですが、パーティで行って、タンクがキスされて(吸われて)いる間にほかのメンバーがボコボコにするのが主流です。毒でも倒せますが時間がかかるので、あまり使われません。


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人物名 流星 性別 男 種族 人間

職業

料理人 Lv. 20 / 20

ラーメン職人 Lv. 2 / 20


体力 30/30

魔力 30/30


攻撃力 31(+11)

防御力 29(+16)

瞬発力 31

魔法攻撃力 9

魔法防御力 9

技術力 51


装備

頭:ねじりはちまき(防御力+1)

武器:タングステン包丁(攻撃力+10)

盾:じょうぶな寸胴鍋(防御力+5)

胴:ふりふりのエプロン(防御力+5)

手:なし

足:じょうぶな長靴(防御力+5)

装身具:ラーメンてぼ(攻撃力+1、アクティブ使用時に湯切り効果(麺系モンスター特攻))


技能

包丁格闘術Lv. 7

寸胴防御術Lv. 4

ラーメン作成術 Lv. 5

毒耐性 Lv. 1

戦闘用湯切りLv. 2

料理強化術 Lv. MAX ※オン



所持金

105,000イェン


店舗

「楼閣街」Z9地点(名称:ラーメン流星)

 メニュー:味噌ラーメン800イェン 技術力+2%

 ※流星が店を開けている時間のみ販売される


所持品

味噌×30、しょうゆ×179、ナルト×0、メンマ×0、酢×15、みりん×15、酒×3、ラーメン×300、うどん×900、煮干し×20

体力薬(HPポーション)×49

毒入りラーメン(麺は伸びている)×10


移動可能な拠点

楼閣街、暗黒街、慟哭街


特殊所持品(運営のお知らせ欄から受け取っていないまま忘れている)

初心者限定ブースト薬(1時間体力魔力が減少しない)×100(※第30の街に着くと消滅する)

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