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「で、お前は何をやりたかったんだ?」

 ベッドで寝ている俺に、刑事はそう聞いた。

 ここは警察病院で、俺は入院中の放火の容疑者だ。

 容疑者とは言っても、現行犯で逮捕されたので「容疑者」と云う言葉は、俺自身でもしっくり来ない。どう考えても「犯人」だ。

 とは言え、俺がやった放火のせいで火傷を負ったのは俺だけだった。他に怪我や火傷をしたヤツは居ない。

 建物の被害も、俺が望んでいたよりは遥かに小さかった。

 確かに、刑事も「お前は何をやりたかったんだ?」と聞きたくもなるだろう。

 幸か不幸か、俺のやった放火による死者は0だ。懲役に行く事になるにしても、そう長い期間にはならないらしい。いや、懲役に行った時点で、俺の人生はお先真っ暗だが。

「あの……刑事さん……」

「何だ?」

「俺……ネット上で、どう言われてます?」

 人生終ったせいで、逆に冷静になった。そのせいで、重大な事に気付いた。

 そもそも、俺の放火が成功していたとしても、俺をSNS上で嘲笑ってた連中にとっては、他人事じゃねぇか‼ 下手したら、「奴ら」に馬鹿にされてた俺が、奴らの「敵」が所有してる建物に放火した事になる。冗談抜きで、俺は何がやりたかったんだ?

「底抜けの馬鹿だな、お前は……。あ、それと、弁護士は国選でいいか?」

 発端は、一ヶ月ほど前のSNS上の論争だった。……いや、俺を馬鹿にしてた連中は「根本原因は、お前が馬鹿だった事だ」と言うだろうが。

 そして、奴らがSNS上で俺の事を話題にする際は、最後に「(嘲)」とでも付けるだろう。この先、一生。奴らが俺の事を覚えている限り。


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