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三つ子の魂、Level 100 まで!!!  作者: 凪沙一人
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第九話 訓練以上、特訓未満

「さぁ、次の試練に行こうぜーっ! 」

 ルクスにもウェントゥスにも選ばれなかったヴァンは、早く精霊を宿したくて仕方なかった。それは強くなりといのと同時に、皆が持っている玩具を一人だけ持っていない子供のようだった。実際、年齢的にも子供である事は違いない。同じ年頃の子供たちと異なる点があるとすれば、勇者の子供である事、魔王を倒そうとしている事だ。親は関係ないという意見もあるだろうが、勇者と聖女の間に産まれた子供たちだからこそ、生まれた時から、そのように見られて育ち、勇者の敗北と同時に期待を背負わされた。だが、三人はその事に疑問を抱かなかった。それはマリアが、一緒に居ない父である勇者の事を楽しそうに自慢気に語っていたから。だから、三人にとって勇者は、自慢の父であり、憧れであり、誇りであった。そんな父に少しでも早く追いつきたい。そんな想いもヴァンの気持ちには含まれていた。

「あのねぇ、ルクスの時は獣兵衛さんが居てくれたし、ウェントゥスの時も偶然、まぐれ、奇跡。勢いだけで突っ込むと、今度こそ試練に負けるかもしれないのよ? 」

「きっと大丈夫、何とかなるって。」

 ヴァンの大丈夫という言葉には根拠が無い。

「なぁ、俺と相性のいい精霊って何かなぁ? 」

「そりゃ、炎の精霊フラムマじゃない。確か、力押しの得意な精霊だって本で見たことがあるわ。」

「なんでだよ。力押しが得意だと俺と相性がいいんだよ? んじゃ、確かめに行こうぜーっ! 」

「却下っ! 」

 ヴァンの提案をシエルは即答で却下した。

「ヴァン、シエルの言うとおりだよ。僕たちの手元に居るのは、光の精霊ルクスと風の精霊ウェントゥス。これでフラムマの試練に挑むのは無謀だよ。」

 面白くなさそうにヴァンは二人に背を向けた。

「しょうがないわね。ルクスとウェントゥスに見てもらって二人がO.K.だって言ったら炎の精霊フラムマ。駄目だったら大地の精霊テラの試練に向かう。後から文句言うのは禁止。それでいい? 」

「おぉ~し、負けねぇぞっ! 」

 ヴァンが身構えるとシエルとマリクは対峙した。

「なんで、二人が俺に向かってんだよ? 一緒に戦うんじゃないのかよ? 」

「ルクスは私の中、ウェントゥスはマリクの中に居るんだから仕方ないでしょ。後から文句禁止っ! 」

「いいよ。どっちも一度は倒したんだから、何とかしてみせるぜっ! 」

「言っとくけど、これは試練じゃないから、精霊たちにもレベルシンクは働かないからね。」

「えっ!? 何っ! 」

 案の定、ヴァンは一瞬で伸されてしまった。

「これで懲りたかしら。」

『でもシエル。』

「何、ルクス? 」

『これだと… テラの試練でも、かなぁ~りキツイと思う。』

『そうだね。誰か助っ人が居たとしても、これじゃ無理じゃないかな。大地の精霊だけあって、文字通り地の利はテラにある。地のことわりを知り尽くしたテラを相手にするには、もっと訓練しないと無理だね。』

 ルクスとウェントゥスから厳しい言葉がとんだ。

「何、二人して難しい顔してんだよ? 」

 まだ、精霊を宿していないヴァンにはルクスとウェントゥスの声が聞こえていなかった。

「どっちの試練に挑むにしても、私たちのレベルが足りないって。」

『装備もね。』

 シエルはルクスの突っ込みはヴァンに伝えなかった。

「んじゃ、シエル、マリク。ルクスとウェントゥスに訓練してくれって頼んでくれ。」

「えっ!? 」

 ヴァンが思ったよりも、まともな事を言ったのでシエルは少し驚いた。

「なんだよ、その不思議そうな顔は? 俺だって、さっきの一撃で実力の違いは分かったさ。だから、俺たち同士で訓練するより精霊に鍛えて貰った方が強くなると思わないか? だから、頼んでくれよ。」

 理にはかなっている。というよりは、強くなる為に本能とか直感が働いたのだろう。

『いいんじゃないかな。どう思う、ルクス? 』

『いいも悪いもないでしょ。やらなきゃ、この子たち、ここで手詰まり。勇者の仇討ちだの、魔王討伐だのいう前にゲームオーバー。とてもじゃないけど、洒落にもならないわ。』

 二人の精霊の意見が一致して、三人は険しい山道へと進路を変えた。

「えぇっ!? これ登るの? 」

 子供だけで登るには、結構厳しそうな道程に見え、三人は嘆いた。

「脚、太くならないかなぁ。」

『大丈夫。このくらいの山道じゃ、一回の登山でいきなり太くなったりしないから。』

「ルクス、ホント? 」

『勿論。それにシエルには楽してもらわないと。』

「楽? 」

『そう、楽。厳密には移動中のMP回復量は宿屋とかに比べると、圧倒的に少ないでしょ? シエルには、この山道で回復量と使用量を見極めながら自分に回復魔法をかけるの。どのタイミングで、どの回復魔法を使うか自分で考える。簡単みたいだけど、結構センシティブだから、頑張ってね。』

「つまり… 私の訓練って、山を登る事じゃなくて回復魔法の使い方で、山を登るのは、平地を行くより適度に体力を消耗するから… って事でよろし? 」

『さっすがマリアの子。察しが良くて助かるわ。』

 状況を理解したシエルは、それなら仕方ないとばかりに歩きだした。

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