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三つ子の魂、Level 100 まで!!!  作者: 凪沙一人
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第五十一話 最後の八套

 一行が入ると、何処からともなく拍手が聞こえてきた。

「おめでとう。まずは第一関門突破です。」

 闇の中から黒いマントの男が現れた。

「嘘!? 八套は全部倒したんじゃないの? 」

 シエルが驚いていると勇者が前に出た。

「いや、もう1人。父さんが化けていた奴… 本物のエニグマだ。」

 勇者に名前を呼ばれてエニグマも一歩、前に出た。

「いかにも我が名はエニグマ。二手以上に別れればハズレ。よく全員で1つを選択しました。」

 正解を選択されたからといって悔しそうには見えない。寧ろエニグマにとっては想定内だったのだろう。

「入り口を9つも用意するからだ。8つならもう少し迷ったかもしれないが、手分けしても全部ハズレの可能性があるならハズレでも各個撃破した方が戦力的にも楽だしな。今回は前回ほど時間に追われてもいないから1人でも早く辿り着くより、全員で確実に辿り着く方法を選択するさ。」

 勇者の言葉にエニグマは大きく頷いた。

「そう。勘や気まぐれではなく理屈に基づいて行動の選択を行う。そうでなければ我が敵とは言えない。あの時の決着をつけるに相応しい相手となったようですね。」

 エニグマはどこか嬉しそうに語っていた。

「悪いけど、こっちが決着をつけたい相手は、この先に居る魔王なんでね。総掛かりで相手をさせて貰うよ。」

 勇者の言葉を聞いても尚、エニグマは上機嫌だった。

「そうそう。勇者だから正々堂々と一対一で決着を着けようとか言われたら興醒めする処でしたよ。」

「変な奴だなぁ。俺たちを倒したいんだか、倒したくないんだかハッキリしろよな。」

 ヴァンにしてみればわざわざ自分を不利に追い込んでいるように思えた。

「もちろん倒す。だが八套にとって弱き者を倒す事に価値はない。強くなる可能性があるのならば時を待つ。その可能性が無いのならば生かしておく価値はないからね。」

「そんな悠長な事、言ってるから他の皆倒されちゃったんじゃないの? 」

 シエルの言葉にエニグマは眉をひそめた。これはシエルに対してではなく、倒された他の八套メンバーの不甲斐なさにである。

「それには反論の余地はない。潔く認めよう。そして我が手によって、その汚名を晴らすとしよう。」

 エニグマは身構えると異様なオーラを纏った。一度、対戦している勇者には覚えがあった。

「確か、不妖の霧… だったな。魔法を無効化するという。」

「よく覚えてましたね。8対1で大精霊6体も相手にするなら、このくらいはしないと。」

 こうなるとシエルやマリク、そしてマリアは下がるしかない。レケンスやブルハも同様だ。それでも勇者、ヴァン、ヴォルティス、獣兵衛の4人を相手にしなくてはならない。圧倒的に不利に見えるがエニグマの表情には余裕があった。

「ちょうどいいハンデというところですね。」

この野郎(んなろ)、舐めやがって。吠え面かくなよっ! 」

 ヴァンが喰って掛かった。こういう所は誰に似たのだろうと勇者は思った。いや、むしろこういう性格に育ったのも自分の所為かとも思った。

「ヴァン、下がるんだ。少しは父親らしいとこを見せてやるよ。」

「でも… 」

「じゃ、一緒にやるか? 」

「うんっ! 」

 ヴァンは嬉しそうに答えた。生まれてから今まで、父親と一緒に何かをした事など無かったのだから。

「いいか、構えろ。」

 ヴァンは勇者の言うとおり同じように構えた。勇者も本当なら手取り足取り細かく教えてやりたい処だが、今はエニグマの目の前だ。そんな余裕は無い。

「剣にフラムマの力を込めろ。」

「え? でも、こいつの霧って魔法を無効化するんじゃ? 」

 ヴァンの言うとおり、そう言ったのは勇者自身だ。

「お前の剣の威力じゃ奴には届かない。剣で霧を切り裂いてフラムマの力を叩き込むんだ。」

 それを聞いていたエニグマが笑いだした。

「いいのか? そんなネタばらしをしても。」

「構わないさ。ネタがバレたところで、お前には防ぐ事も避ける事も出来ないからな。」

 エニグマを囲むようにヴォルティスと獣兵衛が位置をとり、逃げ場を塞ぐようにシエル、マリク、ブルハ、マリアもついていた。

「この配置は… 子供の力で止められると? 」

「子供たちには大精霊がついているからな。」

 勇者の言葉にエニグマも小さく頷いた。

「人数を倍にしてきたのは伊達ではないか。いいだろう。」

 エニグマが指を鳴らすと1つの扉が現れた。

「なんのつもりだ? 」

 ヴォルティスが不審そうに尋ねた。

「取り引きだ。我を討てば、その魔王の部屋への扉も消える。我を討って、この場所に閉じ込められるか、我を見逃して魔王の部屋へ進むかだ。好きな方を選べ。」

 エニグマの言葉にヴォルティスやブルハは顔を見合わせていたが、相談をするつもりなど無い者が2人、そしてそれを予想していた者が2人居た。

「変なところばっかり父親に似るんだから。」

 マリアは諦めたように溜め息を吐いた。

「まぁ取り敢えずは魔王を倒すって事よね。行くわよ、マリク。」

「あ、待ってよ。」

 勇者とヴァンの飛び込んだ扉にシエルとマリクも飛び込んだ。

「親になっても変わらないわね? 」

「私が身重の時に魔王に負けたから、自覚があるのか、無いのか。私たちも行きましょ。」

 ブルハの問いにマリアも呆れ顔で扉に飛び込むと獣兵衛とヴォルティスも続いて扉に飛び込んでいった。

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