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三つ子の魂、Level 100 まで!!!  作者: 凪沙一人
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第四十五話 空

 子供達が試練の塔から出てくると、そこに待っていたのは獣兵衛ではなかった。

「ほう。三人とも無事に出てきたか。」

「誰? 」

 シエルも、そう問い掛けはしたが、見慣れた黒いマント姿は明らかに八套の1人である事を物語っていた。

「分かっているとは思うが魔王の使徒、八套の1人だ。名はトルトニス。この塔を攻略して来たなら子供だからといって遠慮は要らないよな。」

 トルトニスがいきなり雷撃を放つと一発目は大地の盾が反応した。

「遅いっ! 」

 トルトニスは背後に回って二発目の雷撃を大地の盾が反応する前に放った。

「危ないっ! 」

 雷撃は飛び出したシエルを直撃した。

「さすが大精霊の装備だな。常識を覆してくれる。」

 無傷のシエルを見てトルトニスが呟いた。トルトニスの言う常識であれば水の弱点は電気であり雷撃は属性有利な筈だった。

『この純真なる水の大精霊アクアの純粋なる力を具現化した水の刃衣は組成も純水。つまりは絶縁体なのです。』

 声高に自慢するアクアだったが、トルトニスは聞いていないし子供達には難しすぎた。不純物が一切、混じっていない水は電気を通さない。それだけの事である。ただ、そんな水は自然界には存在しないので普通は雷は水に対して有利属性と思われている。そして雷は土に不利属性と云われている。となれば、トルトニスは属性相性が関係のないマリクに照準を定めた。ましてやマリクはまだ、大精霊の装備を1つしか持っていない。それでもトルトニスの雷撃がマリクに当たる事はなかった。

「靴に… 靴に羽が生えたくらいで雷より速いだと? 世のことわりを無視してくれる。」

『別に理を無視している訳じゃないさ。六大精霊とは光、闇、火、水、土、風。何故、雷が無いか分かるかい? 』

 ウェントゥスはマリクの口を借りてトルトニスに問い掛けた。

「… 雷が風の眷属だから… そう言いたいのか? 」

『風、雲を呼び、雲、雷を放つ。それが理です。』

「黙れウェントゥスっ! どこが理だ。雷の何が劣るというのだ!? 」

「ひょっとして、トルトニスって… 」

 叫ぶトルトニスを見ていてマリクはウェントゥスに尋ねた。

『そう。大精霊になれなかった精霊さ。』

「煩い。黙れ。お前たちを宿したガキ共ごと葬ってやるっ! 」

「あぁあ、面倒臭い。八套の1人だか、雷の精霊だか知らないけど。いいわ。私が相手してあげる。」

「をいをいっ! 」

 さすがにヴァンも慌てた。

「大丈夫。負ける要素なんて、これっぽっちも無いから。」

 それを聞いてトルトニスも苦笑した。

「舐められた… とは言わない。試練の塔を制し、経験値も実力も貯えてきたんだ。こちらも全力で行く。魔王が使徒、八套は雷鳴のトルトニス。」

「え、名乗りあげるの? それ、さっきも聞いたんだけどな。いいわ。そのくらいは付き合ってあげる。勇者と聖女の子。光と水の大精霊を宿す者、シエル。」

「今まで使った事なき故に名もなき全力の雷撃だ。水の刃衣を絶縁破壊して(撃ち破って)この場に終焉の雷鳴を轟かせてやろう。」

「・・・やっぱ無理。ゴメン。そこまで芝居臭いの、付き合えないや。崇光烈矢オナードアローっ! 」

 シエルの放った光の矢はトルトニスの雷撃を打ち砕いてトルトニスを飲み込んでいった。

「くっ… クックック。雷じゃ(Ciel)にゃ勝てないか。」

「何、訳の分かんない事、言ってんのよ? 今度、生まれ変わったら正しく精霊として生きなさいよね。」

「それはどうかな? また魔王の使徒になるかもしれん。」

「それはないわ。」

「何故、そう言い切れる? 」

「それは… 」

「そりゃ、俺たちが魔王を倒しちまうからなっ! 」

 最後の台詞をヴァンに持っていかれてシエルがむくれた。

「それじゃ… 俺の来世はお前ら次第だな。」

 トルトニスの体は透けるように消えていった。

「どうする? 獣兵衛さん、探す? お母さんたちと合流する? 」

「ぼ、僕はブルハさんたちと合流した方がいいと思うんだ。」

 マリクが偶に自分から発言したかと思ったらこれかとシエルは頷垂れた。

「手分けしようぜ。シエルで勝てるんなら八套とかでも何とかなんだろ? 」

 ヴァンの相変わらずの考え無しな発言にシエルは更に頷垂れた。

「はいはい。あんた達に聞いた私が悪うございました。ルクスやアクアは誰か大人たちの居場所、分かる? 」

『大人たちはともかく、テネブラエの居場所なら判るわよ。ブルハに宿ってるお陰で神出鬼没じゃないからね。』

 ルクスの声にマリクの表情が緩む。試練の塔をクリアして実力的には急上昇しても人間的には少しも成長が感じられなかった。

(こんなんでホントに魔王に勝てるのかしら? )

 シエルには希望や期待よりも、不安や心配の方が大きかった。

「おぉい、ぐずぐずしてると置いてくぞ? 」

「待ちなさいよね。どうせ私が居ないと迷子になるくせに。」

 子供達は大人たちの後を追うようにして歩みを進めた。大人たちも子供達が追いついてくると信じて歩みを進めた。ただ1人。獣兵衛だけを除いて。

「試練の塔はおろか、訓練の塔も修練の塔もクリアしていない貴様に勝ち目は無いっ! 」

 黒マントの男の一撃に獣兵衛は崖下へ転落していった。

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