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三つ子の魂、Level 100 まで!!!  作者: 凪沙一人
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第四十話 二つの扉

「なるほど。そういう事か。駆け引きは苦手なんだがな。」

 魔王の命令変更を陰で聞いていたエニグマは頭を掻いていた。その頃、何とか最初試練であるラットリオン捕獲を達成した子供たちの前には二つの扉が待ち構えていた。

「何、これ? どっちかの扉が正解って事? 」

「いやいや、そうではない。」

 何処からともなくブレンの声がした。

「ここは4人ずつに分かれるのだ。組分けは自由だ。あまり考える時間は無いがの。」

『それでは、私がシエルから抜けて… 』

「アクア、すぐに私から抜けたがるわね。別にいいけど、そうすると私とルクス、マリクにウェントゥス。そっちがテラとフラムマを宿したヴァンとアクアって事でいいのよね? 」

『え!? 』

 シエルからヴァンと一緒と言われてアクアは固まった。大精霊は宿主と共に在ってこそ力を発揮する。それを大前提とすれば、あとは簡単な算数だ。ヴァンとシエルを分けてマリクと一緒になった方が大精霊一体を渡す。つまり、アクアがシエルから抜けると自動的に組み合わせが決定するのだ。

『ちょ… ちょっと待ってよ。』

「それじゃ、そっちは頼んだわよ。行くわよ、マリク。」

「え? あ、うん。」

 シエルはアクアを置き去りにすると、マリクを連れて扉の中へ消えていった。

『そ、そんなぁ… 。』

「ほら、ケチな姉ちゃん。こっちも、さっさと行こうぜっ! 」

『はいはい… ってケチって誰、ケチって? これだから生意気な小娘と脳筋は嫌いなのよっ! 』

 アクアが文句を言っている間にヴァンは、もう一つの扉に向かって歩き出していた。

『ちょ、ちょっと待ちなさいよっ! 』

 その後を追ってアクアも入ると扉は固く閉ざされた。

「さて、こっちの第二の試練はロックイーターの捕獲だ。」

 扉を潜るとブレンの声が聞こえてきた。

「こっちは? 向こうは違ぇのか? 」

「向こう心配をしている暇は無いぞ。」

「ちぇっ。テラ、また追い込むぞ。」

 ヴァンは舌打ちしてテラに声を掛けたが反応が無い。

「テラ? 」

『貴方ねぇ、この階は土間じゃないないの。それにロックイーター相手じゃ土壁なんて食い破られちゃうでしょ。』

「じゃぁ、ケチな姉ちゃんには、いい手があるのかよ? 」

『ケチってねぇ・・・もう、いいわ。今は時間が惜しいの。テラ、用意はよろしくて? 』

『本当はヴァンに気づいて欲しかったんだけど… 確かに時間がありませんしね。』

 テラとアクアは泥濘を作ると、そこにロックイーターが嵌まったところで足元を固めていった。頭が大きく四肢が短い体型上、前方の物を噛み砕いて進むのは得意だが足元に対しては歯が届かない。身動きがとれなくなったところをヴァンが回収していった。

「おっし、完了っと。」

 すると再び二つの扉が現れた。

『私とは別行動確定だから、ヴァンがフラムマと行くかテラと行くか決めて。』

「そんなの、もちろんフラムマと行くに決まってんだろ。」

 ヴァンはテラを残して扉に入って行った。

『脳筋コンビで大丈夫かしら? 』

『だって私と行ったら残るのは火と水でしょ? 』

『あ… 』

 テラに言われて相性の悪さに気がついた。考えたのか、直感なのか、偶然なのか。それは誰にもわからない。もう一方のシエルとマリクは別の試練に挑んでいた。一定時間、キャットリオンからラットリオンを守ること。通常であれば4匹のキャットリオンから4匹のラットリオンを守るにはラットリオンをマンツーマンで守るか、キャットリオンと一対一のマッチアップだが、大精霊は宿したままなので、実質的な人手は二人分しかない。更に今回は制限時間一杯に時間を掛けている余裕もない。

「マリク、睡眠魔法って使える? 」

「うん、ウェントゥスが居るからね。でも、キャットリオンを寝かそうっていうの? あの速さじゃ当たらないよ。」

「足は私が止めるから。目ぇ、瞑って。 ルクスっ!」

 二人が目を閉じると薄暗かったフロア一杯に昼間より明るい光量が降り注いだ。猫でも人の5倍は光を感じるが、魔物であるキャットリオンは、その10倍以上に光を感じる事が出来た。そこへ瞼を閉じる間もなく、瞳孔を細める暇もなく大量の光を浴びて驚いたキャットリオンは動きを止めた。急に車のヘッドライト浴びたような状態だ。そこでマリクがすかさず睡眠魔法で眠らせるとキャットリオンを縛りあげていった。

「ブレン様ぁ。これで、どぉ~? 」

 すると、ブレンから返事が来る代わりに二つの扉が現れた。

「どうやらクリアしたみたいだね。」

 マリクは安堵した。

「どうやら、そうみたいね。次行くわよ。」

「えぇ、もう? 」

 疲れた表情のマリクは膝に手を突いていた。

「あんたねぇ、休んでる間にブルハに何かあっても知らないわよ? 」

「行くよっ! 」

 ブルハの名を聞いて急に元気を取り戻したマリクは扉の一つへと入って行った。たとえ空元気だとしても時間が無いのは現実だしブルハに何が起きるかわからないのは事実である。こうして子供たちは次なる試練に進んだ。

『ねぇ、何も居ないわよ? 』

 アクアが言うとおり、アクアとテラの入った扉の中は蛻の殻だった。

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