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三つ子の魂、Level 100 まで!!!  作者: 凪沙一人
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第三十九話 最初の扉

 三人が扉を入ると8匹のラットリオンが居た。するとブレンの声だけが聞こえてきた。

「第一の試練はラットリオンの捕獲じゃ。傷つけたら失格。試練失敗じゃ。本来なら1人1匹じゃが、精霊を人数に入れておるからヴァンとシエルは精霊2体分を入れて3匹ずつ、マリクは1体分を入れて2匹がノルマじゃ。時間は日が暮れるまでとする。」

「ちょっと、塔の中で日が暮れたかどうかわからないわ? 」

「急がんと時間が無いぞ? 」

 ブレンの声に急かされて三人はラットリオンを追って走り回った。ラットリオンが隠れるような場所も無いが三人が追い込めるような場所も無い。傷つけたら失格とはいうが、ラットリオンも魔物であることに変わりはない。

「こんな障害物も無い場所で、どうやって捕まえろって云うのよっ! 」

「なんだ、障害物が有れば何とかなるのか? 」

 シエルがぼやくとヴァンが聞いてきた。

「そりゃ、袋小路とかになってれば、追い込めるでしょ? 」

「だったら、無けりゃ作りゃいいじゃん。テラっ! 」

「ヴァン、ここ建物の中よ!? 」

『大丈夫よ。古い建物だからね。一階は土間に土壁だから。』

 テラはそう言うとラットリオンを囲むように土壁を築き上げた。

「これで逃げ場は無いだろ? あとは、だんだん囲いを小さくすればラットリオン、ゲットだぜっ! 」

「へぇ、やるじゃない。」

 シエルは感心しているが、ヴァンにしてみれば、もっと幼かった頃から見てきた追い込み漁や投網漁のようなものである。

「テラ、傷つけないよう、出来るだけ急いで狭めてくれっ! 」

『あらまぁ。簡単に言うわねぇ。でも時間もないし、やってみましょう。』

 テラは徐々に囲いを狭めていった。その頃、塔の外では獣兵衛が八套の1人と対峙していた。

「獣兵衛。また貴様か。よほど腐れ縁らしいな。」

「グラウドか。余はお主と縁など結びたくは無いのだがな。」

 対峙はしたが二人とも動かない。互いに相手の出方を牽制していた。

「その構え… 懲りもせず、また天魔袱滅か? 」

「フッ。士別れて三日、即ち更に刮目して相待すべしと言う。昨日より今日。今日より明日。余の剣は高みへ近づく。」

「なら明後日にでも来るんだったな。俺と一対一さしで戦うには早すぎだっ! 」

 グラウドは獣兵衛を倒すべく斬りかかった。

「天魔袱滅っ! 」

「だから、その技は効かな・・・何!? 」

 突然、グラウドの脇腹が血を噴いた。

「確かに明後日であれば、今の一撃で止めを刺していたやもしれんな。」

「どうやら踏み込みを一歩早く計算していたんだが、三歩は早くなってたようだな。だが、今ので仕留められなかった事をあの世で後悔させてやるぜっ! 」

 再びグラウドは獣兵衛に斬りかかった。

「その傷では余には勝てぬ。野牛真翳流秘奥義、獣紋璽っ! 」

 これがどんな技だったのか、グラウドにも見切る事は出来なかった。ただ、受けた瞬間、グラウドの身体は宙を舞っていた。ただ、消え行く意識の中で野牛真翳流、恐るべしと思っていた。

「ブレン殿。今から子供たちの後を… 」

「ならぬな。」

 ブレンの試練の塔。それは一度誰かが入ったら生死を問わず出て来るまで扉が開く事はない。それならば獣兵衛が此処に留まっている理由もなかった。

「ブレン殿、子供たちの事、お頼み申す。」

「無事に出て来れたらの。」

「それならば、大丈夫。あの御仁の子供たちですから。」

 親は親であり、子は子である。勇者の子供。そんな事は何の保証にも根拠にもなりはしない。それでも獣兵衛は信じていた。あの子供たちならば、必ず無事に試練に打ち克てると。そして再びマリアたちの元へと帰って行った。


 *****


「どうなっておる? 」

 魔王としては納得がいかなかった。先の戦いでは八套が欠けるなどという事はなかった。今回は城に乗り込まれる前に始末しようとして送り込んだアグニスとグラウドが、二人とも返り討ちにあってしまったのである。

「大方、勇者が居ないからと油断をしていたか、鍛練を怠ってヤツラの成長が読めなかったのでしょう。」

 魔王からの問いに戻ってきたエニグマは淡々と答えた。

「まぁ、あの二人を倒したとなれば、そろそろ狩り頃。このクロノアに任せて貰おうか。」

 アグニスとグラウドの敗北を受けて残りの六套も魔王の命令で呼び戻されていた。

「1人でイキるな。そもそも1人で勝てるという驕りが、あの二人の敗北を招いたのではないか? 」

「騒ぐな者共っ! 」

 魔王の一喝で場は静寂を取り戻した。

「クロノア、ネブルス、ダーデス、トニトルス、ジュラス。協力して、かつての勇者の仲間たちを今度こそ討ち果たすのだっ! 」

 魔王が八套を競わせる事はあったが、強力しろと言うのは初めての事であった。それだけに、この言葉の意味は重く受け止められた。

「エニグマ。お前は今回も残って城を守れ。」

「… 御意。」

「今度は勝手に出歩くでないぞ。」

 エニグマは魔王に頭を下げて部屋を出て行った。

「よいか者共。お前たちで試練の塔を破壊するのだっ! 」

 エニグマが消えた途端、魔王は命令を変えた。

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