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三つ子の魂、Level 100 まで!!!  作者: 凪沙一人
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第三十八話 ブレン様と試練の塔

 獣兵衛が子供達を連れて辿り着いたのは人里離れた森の中だった。

「こんな所に本当にブレン様ってのが居るんですか? 」

 シエルは半信半疑で尋ねた。

「目の前にるぞ。」

 不意な声に子供達はキョロキョロと辺りを見回すが誰も見当たらない。ただ、獣兵衛だけは膝を着いて頭を下げた。

「此度は… 」

「あぁ、よいよい。事情は分かっておる。じゃが、四人で挑むには厳しいぞ? 」

 確かに以前、ブルハがレケンスに言っていた通りならば八人という人数が必要な筈だ。それが半分の四人。しかも内三人は子供であり、大精霊もテネブラエを欠いている。

「見たところ、訓練の塔、修練の塔くらいならば何とかクリア出来るかもしれんぞ? 時間が足りぬのはわかるが、ここで命を落としては元も子もあるまい? 」

 ブレンの発言は試練の塔が過酷である事を物語っている。魔王を倒すのに時間が無いのは確かだが、獣兵衛としても預かった子供である。判断に迷っていた。

「俺はやるよ。時間無ぇんだろ? 」

 真っ先に声をあげたのはヴァンだった。

「そうね。今、強くならないと。ここで死ぬか魔王軍に殺されるかって事でしょ? 」

 シエルも続いた。

「僕もやるよ。母さんやブルハさんたちを守るんだ。」

 子供たちの意見は決まった。これで獣兵衛の腹も据わった。

「ブレン殿。お願い申す。」

「あい分かった。足りない人数は大精霊たちに補って貰うとしよう。ところでヴァンとやら。剣を見せなさい。」

「え? あぁ。ほら。」

 ヴァンは持っていた剣をブレンに差し出した。

「やはりブーグの造ったウルツァイトの剣か。じゃが、この剣はもう限界じゃな。」

「えぇ? 限界ってもう使えないのか? 最硬のウルツァイト製だぞ? 」

 これから試練を受けようというのに武器が無いのは痛い。

「この傷み方… お前さん、爆焔擊バーニング・エクスプロージョンを使ったね? 」

「へ? 名前なんて知らねぇよ。あのアグニスって奴に腹が立ったんで思いっきりブッ放しただけで。」

「親子じゃのぉ。爆焔擊は、かつて勇者がアグニスのバーニング・エクスプロードが水や氷ではどうにもならぬ時に、同系の技で火球を断ち斬った技だ。だが、ウルツァイトは物理的には確かに最硬かもしれんが魔法技耐性が低い。耐熱性が高かったから一度はもったが、次に使えば砕けてしまうじゃろう。」

「どうすりゃいいんだ? ブーグやボーグの所に戻ってる余裕なんて無いぜ? 」

「この塔の中に在る炎の剣と大地の盾を探すがよい。それがフラムマとテラを宿したお主の装備となるはずじゃ。そのウルツァイトの剣が砕ける前に炎の剣を見つけんと先に進めなくなるから使いどころには気をつけることじゃ。」

「私やマリクの分もあるんですか? 」

 剣と盾なら確かにヴァンが持つべき装備だが、シエルやマリクには装備する事が出来ない。

「もちろん。簡単にいえば六大精霊の装備じゃ。その精霊を誰が宿したかで装備は変わる。」

「そうすると闇の装備はどうなるんですか? 」

 今、闇の大精霊テネブラエは魔女ブルハに宿っている。

「魔女も魔導師も魔法使いも同系の装備になるはずじゃ。問題なかろう。それより招かれざる客のようじゃ。どうするかの? 」

「ここは余が引き受け申す。ブレン殿は子供たちを。」

「そんな。試練はどうするんですかっ? 」

 ただでさえ、色々と条件に不足している状態である。シエルとしては自分たちだけでは不安が大きかった。

「君たち三人と大精霊が五体。問題ござらぬよ。」

 そう言い残して獣兵衛は気配のする方へと走って行った。

「そんな未経験者だけ残されても… 」

『その点なら変わらないわ。』

 獣兵衛の後ろ姿を見送りながら呟いたシエルにルクスが答えた。

「変わらない? どういう事? 」

『私たち大精霊は何度も経験しているし、獣兵衛は未経験者だから。』

「え!? 獣兵衛さん、未経験者なんですか? 」

『そうよ。そもそも獣兵衛は祠攻略の為に、一時的にパーティー加入していただけで、最終ダンジョンである魔王の城の時にはいなかったんだから、直前の塔の試練は受けてないわよ。』

 子供たちは自分たちが勇者と聖女の子供だということは周囲の大人たちから言われていたので知っていたが、冒険の詳しい話しを聞いた事は無かった。それは周囲の大人たちが知る筈もなく、マリアも普通の子供として育てたかった為、話す事は無かった。結局、無責任な周囲の大人たちの期待を背負って現在に至っているのだが。

「よっし、早いとこ試練終わらせて皆を助けに行こうぜーっ! 」

 状況が分かっているのか、いないのか。シエルも、ここはヴァンの単純な前向きさを見習うべきかもしれないと思っていた。

「ルクス、アクア。チャッチャと終わらせるわよっ! 」

『はいはい。相変わらず小生意気よね。どうせ、そう簡単にはいかないって分かっているくせに時間も無いから自分に気合い入れてるんでしよ。』

「いちいち解説しないでくれるかなぁ。それに小生意気じゃなくて生意気なんじゃなかったのかなぁ? 」

『確かにあんたは生意気だわっ! どうせ今はウェントゥスしか居ないんだから、マリクに移ろうかなぁ。』

『アクア。それではテネブラエが来た時に困るでしょ。いったい、何年大精霊やってるの? 大人げない。』

 テラに窘められてようやくアクアもおとなしくした。

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