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三つ子の魂、Level 100 まで!!!  作者: 凪沙一人
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第三十六話 猛火のアグニス

「よぉ。全員の相手は流石に骨が折れるから、誰か相手してくれないか? 」

 崩れ行く建物の中から姿を現した顔ぶれを見てアグニスも苦戦を覚悟した。戦士ヴォルティス、射手レケンス、魔女ブルハ、そして聖女マリア。勇者以外の前勇者パーティーが揃っているのである。闇の大精霊テネブラエも居る。

「悪いけど、その希望を叶えてあげる余裕は僕らにはないんだ。」

 言うと同時にレケンスが矢を放ったが、アグニスの手前で燃え尽きた。

「酷ぇな。勇者パーティーが不意討ちとは。」

「気づいてる時点で不意でもないでしょ? 」

 ブルハの放った氷の針もアグニスに届く事なく溶けて蒸発した。

「仕方ねぇな。取り敢えず長期戦を避けるには… 」

 アグニスがマリア目掛けて放った火の球を今度はヴォルティスが斬り払った。

「ま、回復役を狙うよな。」

「フラムマの加護無しに俺の火球を… やっぱりヴォルティス、面白ぇじゃねぇか。一対一さしで勝負したかったな。」

「冗談じゃねぇ。貴様が八套を辞めて試合するってんならともかく、フラムマ抜きじゃ、さすがに勝てる気がしねぇよっ! 」

 それを聞いてアグニスは不服そうに嗤った。

「ぶはっ。それじゃまるでフラムマが居たら勝てるみたいじゃねぇか? こうなりゃ手加減なしだ。猛火のアグニスの力、思い知らせてやるよ。」

「貴様こそ、手加減して勝てると思ってたなら舐めすぎだっ! 」

「いんや。舐めていないからこそ、手加減しないって言ってんだよ。舐めて掛かると痛い目を見る。お前らが前回、城に乗り込んで来た時に学んだ事だ。」

 口調は軽いが、アグニスも本気だ。頭上に作り出した火球は、先程の十倍以上に膨れ上がっていた。

「バーニング・エクスプロード。こいつをテストするには最高の実験台だぜ。」

「そんなに素直に実験台になるつもりはないわよっ! 」

 すかさずブルハが火球を地獄の門(ヘルズゲート)に閉じ込めた。しかし、アグニスに動揺は見られない。

「この魔法、ダーデスから聞いてるぜ。六大精霊のうち、ここに居るのは闇の大精霊テネブラエだけだ。となれば魔女ブルハ、貴様が主な戦力と考える。だが、この魔法じゃバーニング・エクスプロードを止める事は出来ねぇんだよっ! 」

 アグニスが更に魔力を込めると地獄の門の門扉が加熱で赤く染まり始める。

「貴様が封じ込めに来るのは読めていた。地獄の門の中で圧縮されたバーニング・エクスプロードは、より威力を増して扉を突き破る。もはや止める手段はあるまいっ! 」

 徐々に地獄の門の門扉は溶解を始めた。このままでは地獄の門は熔けてアグニスの火球は大爆発するかもしれない。だからといって今、門を開ける訳にもいかない。

氷の息吹き(フローズン・ブレス)っ! 』

 一瞬で熔け掛けた門扉が氷結する。だが、氷が溶けるのは時間の問題だ。

「フローゼ!? 」

 マリアがフローゼと呼んだのは、水の眷属、氷の精霊フローゼ。何故、ここに現れたかは判らなかったが、地獄の門の溶解を遅らせる事は出来た。

『今のうちにアグニスを討ってください。魔力供給が絶たれれば門内の火球は鎮火するはずですっ! 』

「だそうですよ、ヴォルティス。僕たちで何とかしないといけませんね。」

「そうだな。マリアはブルハたちのサポート、任せるぜ。」

 レケンスとヴォルティスは共に身構えた。火球に魔力供給を行い全力が出せる状態ではないとしても油断出来る相手ではない。

「はっ!? 大精霊を宿さない奴等や大精霊にもなれない小物が、俺の猛火を止められるとでも思ってんのか? 」

 そう言ったアグニスの眼前をレケンスの放った矢が通り過ぎた。

「どこ狙ってんだよ? 」

 嘲るようなアグニスだったがレケンスはクスリと笑った。

「手前ぇ、何が可笑しい? 」

「いや、ただの確認だよ。」

「確認? 」

「そう、確認。僕の矢を君は躱した。先程のように僕の矢が燃え尽きる事はなかった。つまり君はバーニング・エクスプロードとやらに魔力を注ぎ込んでいる間は、他の魔法が使えない。かといって、ここで魔力供給を止めれば消耗した状態で僕たち全員を相手にしなくてはならない。君に残された手段はバーニング・エクスプロードで圧しきるか撤退だ。だが、君はここに居る。つまり圧しきる方を選択したんだろ。魔法が使えないならヴォルティスにも勝ち目はあるからね。」

「おい、レケンス。お前は? 」

 急に振られたヴォルティスがレケンスに質問した。

「フローゼがちょっとキツそうなんでね。僕は魔弾で援護にまわることにした。ちょっとシチュエーションは違うけど、アグニスの望んだ通り、ヴォルティスが一騎討ちしてもらえるかな。」

「俺も、アグニス相手に大人数は気が退けてたんだ。そういう事なら遠慮なく行かせて貰うっ! 」

「こっちも長くはもたないから、なる早で頼むよ。」

「任せろっ! 」

 ヴォルティスは戦斧を構えるとアグニス目掛けて突進した。アグニスも避ける事なく巨大なハンマーで受け止めた。

「相変わらずの馬鹿力だな、ヴォルティスっ! 」

「それを受け止める貴様も馬鹿力って事だなっ! 」

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