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三つ子の魂、Level 100 まで!!!  作者: 凪沙一人
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第三十四話 炎の剣士・ヴァン

「うぉぉぉっ! 」

 突然、ヴァンが叫びだした。

「だっ、大丈夫なの!? 」

 慌てて駆け寄ろうとしたシエルをレケンスが止めた。

「大丈夫だよ。ヴォルティスの時も、あぁだったんだ。初めての時は僕も焦ったけどね。」

 ヴァンの周囲が灼熱の炎を纏う。

『なるほど。ウルツァイト装備か。一応準備はしてきたみたいだな。』

 耐熱性能の高いウルツァイト鋼の装備でなければ、ヴァンも大火傷を負っていただろう。

「そんな事より、早いとこアイツをぶっ倒すぞっ! 」

『無理だな。』

「何!? 」

 いきり立つヴァンだったが、フラムマに一蹴されて憤慨した。

『いくら大精霊を宿しても実力が違う。小僧、力量を見極めろ。』

『あら、珍しい。フラムマがそんな事言うなんて。』

 テラが思わず感嘆の声を挙げた。

『自分より面倒臭い奴見てると冷静に為らざるを得ないだろうがっ! 』

 フラムマも呆れたような、憤ったようなトーンで答えた。実際、今のヴァンより遥かにレベルの高いヴォルティスにフラムマが宿っていて倒せなかった八套の一人、アグニスを倒せる筈もない。

「それだけ実力差があるなら、手を貸しても卑怯とか言わないわよね。」

 ヴァンの後ろにはシエルが立っていた。

「あぁ。いきなり不意討ちして来ない処は嫌いじゃない。けど、二人でも力不足だな。いっそ、ヴォルティスたち全員で掛かってくるか? 」

「そんな事、言っていいの? 」

 アグニスの挑発にブルハが歩み出た。

「… なるほど。魔女だけは大精霊を宿しても役不足じゃないか。いいぜ。頭数6人に大精霊6体。こっちも本気を出しても後ろめたくなくていいからな。」

「お前ら、勝手に話しを進めるなぁっ! 」

 いきなりヴァンが大声をあげた。

「おいおい。人数増えても結果が変わるとは思えないが、そんなに、あの世の親父に早く会いたいのか? 」

「手前ぇこそ、あの世で父さんに詫びてきやがれっ! 」

 そう叫んで放たれたヴァンの焔の一撃は一瞬、ほんの一瞬、アグニスを圧し慌てさせた。

「やべぇやべぇ。このアグニス様を一瞬でも圧しやがったぜ、あのガキ。」

 誰に言った訳でもない。アグニスの目の前には岩壁が立ち塞がっていた。アグニスを圧した一瞬にヴァンはテラの能力ちからで岩壁を築き、その場から退いていた。正確には岩壁を築いた直後に倒れヴォルティスに担がれて退いたのだが。

「今の技… 爆焔撃バーニングエクスプロージョン… だよな? 」

 走りながらヴォルティスがポツリと言った。

『かなり粗削りだし、勇者のそれ程の威力は無い。まさか、この小僧がという油断がアグニスを圧したのだろう。そもそも、あの技は俺とルクスの掛け合わせ技だ。それを俺単独の能力ちからだけで放つとは。この小僧、もしかしたら勇者を越えるかもしれないな。』

 フラムマも落ち着いて答えた。

「それじゃ、力を貸してやってくれるか? 」

『… いいだろう。俺の試練は力を示せ、だ。まだ、可能性の片鱗と云ったくらいだが、合格だ。』

「それじゃ、あとはこの子たちのレベルアップと装備の充実に力を注ごうか。」

 ブルハもそうは言ったが、行くあては無かった。既に八套と対立してしまっている以上、宿屋などで迷惑を掛けてくは無かった。だからといってアイテムのコテージにも限りはあるしテントでは充分な回復は望めない。魔物と八套ではレベルも強さも全く違う。中途半端な回復量では勝てる戦いさえ危うい。そもそも、勝てるレベルになる前にやられてしまうかもしれない。

「とりあえず、一旦獣兵衛の所に寄ろう。彼なら受け入れてくれると思うよ。」

 レケンスの意見に異を唱える者はいなかった。他にアテも無い。

「ちょっと見ない間に随分成長したみたいだけど… まだまだねぇ。」

 火の本の剣豪、野牛と呼ばれた獣兵衛の出城で一行を出迎えたのはマリアだった。

「なん… 」

 何で、あんたがここに? そう言い掛けたブルハだったが、マリアに駆け寄る子供たちの後ろ姿に言葉を止めた。魔王を倒すと村を出たものの、まだまだ子供である。

「よく参られた。ここは本国と違って市民も居らぬ。安心して滞在してくだされ。」

「獣兵衛さん、何でマリアがここに? まさか、あんた未だ… 」

「いやいや、マリア殿の村にも八套の手が伸びましてな。村に迷惑を掛けたくないと、この出城に。」

 獣兵衛はグラウドの一件をブルハたちに説明した。

「よくも都合よく駆けつけたものね? それで、その旅の男って何者なの? 」

「余も直接会った訳ではないのでな。直接話を聞いた兵も黒ずくめで顔も分からぬと申しておった。」

「ふぅん。黒ずくめねぇ。まるで八套みたいよね。よくも、そんな不確かな情報で動いて城主が務まるわね? まぁ、お陰でマリアが助かったんだから結果オーライなんだけど。」

 問題は山積していた。勇者の不在。子供たちのレベル不足。それに伴い大精霊の実力が充分に発揮出来ない。だからといって魔王軍は待ってはくれない。

「試練の塔って、まだ残っているのかな? 」

 レケンスの言葉にブルハが首を捻った。

「どうかしら? 獣兵衛さんとマリアを入れれば8人になるから挑戦可能人数にはなるけど… 。」

 何の事かわからないシエルたちはキョロキョロと大人たちの顔を見回していた。

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