表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三つ子の魂、Level 100 まで!!!  作者: 凪沙一人
3/53

第三話 野宿以上、宿屋未満

「あ、あの色違いのスライムっ! あれ倒したらレベルアップよっ! 」

 眼鏡スペクタルズ越しに臙脂えんじ色のスライムを見つけてシエルが叫んだ。

火の玉(ファイアボール)っ! 」

 マリクが魔法で逃げ道を塞いだ。今のマリクの威力では、直接当てるより効果的だった。これがヴァンだったら、魔力が尽きるまでスライム目掛けて撃ちまくった事だろう。もう1つの効果はスライムくらいなら仲間を呼べなくなる事だ。一匹ずつは大した事のないスライムでも、集団になると厄介だ。倒した端から増えると余力があればレベリングになるが、今の三人では力尽きる方が早いだろう。逃げようとしたスライムは火傷を負った。少しずつスライムの体力が減っていく。

「ヴァン、何やってんのよっ! 早く倒しなさいよっ! 」

「えぇ~。こんなの倒しても格好よくないじゃん。」

 シエルに急かされたヴァンは不満そうだった。

「こっちだって強くないんだから贅沢言わないのっ! 」

 そんな態度のヴァンに腹を立てたシエルが怒鳴りつけた。そんな隙にスライムが飛び掛かってきた。窮鼠猫を噛むと云うやつだ。

「うわっ! 」

 三人が慌てて下がったところでスライムが凍りついた。

「えっ!? 」

「何してるの。早く叩きなさい。」

「あ、はい。」

 言われるままにシエルが杖で叩くとスライムは粉々になった。

「坊やたち、スライムだからといって油断しちゃダメよ。臙脂のスライムは青いのよりは強めだし。」

 そこに現れたのはつばの広い黒の三角帽子、宝石の付いた黒のレオタードに黒のニーハイブーツ。そして裏地の赤い黒マントの女性。いかにもといった出で立ちである。

「魔女? 」

 あまり興味が無さそうなヴァン。

(露出高過ぎじゃない? )

 そうは思ってもシエルは口に出さない。

「綺麗… 。」

 マリクは女性の顔に見とれながら頬を染めていた。

「あら、ありがと♪ 褒めてくれたお礼に、これあげる。」

 そう言って女性はマリクに一冊の本を渡した。

M.B.(モンスター・ブック)。あなたたちが倒したモンスターが載っていくわ。」

 本を受け取っても、まだ女性に見とれているマリクをシエルが強引に下がらせた。

「ありがとうございました。これから旅支度があるので失礼します。」

「あら彼女? 」

「姉弟ですっ! 」

「その眼鏡、見覚えがあるわ。どうしたの? 」

 女性が眼鏡に手を伸ばしてきたので、シエルは慌ててしまった。

「うちの村では眼鏡って売ってなくて。この間、冒険者さんに頂いたんです。珍しい物なんですか? 」

「それ、特注品よ。… それより、お嬢ちゃん、誰かに似てるって言われない? 」

 眼鏡を外したシエルを見て女性が言った。不意な質問にシエルは首を捻った。

「母の子供の時に似てると言われるくらいですけど? 」

「もしかして、お母さんって聖女マリア? 」

「えっと… 元聖女のマリアですけど… お母さんの知り合いですか? 」

「ん~、まぁ、知り合いっちゃ、知り合いよ。って事は、あんたら勇者の子供かぁ。道理であいつが特注の眼鏡を渡した訳だ。そうだなぁ… じゃぁ、お姉さんからは… 今はこれあげる。コテージの5個セット。」

「コテージ? 」

「そ、テントの上位アイテム。宿屋ほどじゃないけど、テントよりは回復するわよ。もうちょっと、いいアイテムあげたいんだけど、今のレベルじゃ、持ち腐れっていうか使えないから。もう少しレベルアップしたら、また会いましょ。それじゃぁネ。」

「えっ、お母さんに会っていかないんですか? 」

「お嬢ちゃん、知り合いがお友達とは限らないのよ。」

 女性は黒いマントを翻して去って行った。

「ずりぃぞ、お前らばっかり。」

 シエルやマリクがアイテムを貰っているのに、自分には何もないものだから、ヴァンは不貞腐れていた。

「早く帰って、支度しようっ! 」

 それに比べてマリクは急にノリノリだ。

「もう… 。これだから、うちの男共は… 。」

 どう見ても女性の『もう少しレベルアップしたら、また会いましょ。』と云う言葉に浮かれている。

「あんた達、早く村に帰って支度するわよっ! 」

 シエルは足早に村へと向かった。

「待てよ、ちょい待てよっ! 」

 ヴァンが呼び止めても、

「シエル、待ってよぉ。」

 マリクが呼び止めても、シエルは足を止めない。父親である勇者の仇を討つと決めてから、どれだけの月日が過ぎただろうか。しかも、まだレベル5。母親であるマリアと約束した魔王と戦うレベルは100。シエルには気の遠くなるような先の話しに思えていた。きっと、この先、アイテム管理、お金の管理、戦うか逃げるかの判断。その全てを考えなくては、いけないのだろう。その事を思うと、多少憂鬱になってくるシエルであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ