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三つ子の魂、Level 100 まで!!!  作者: 凪沙一人
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第十八話 水の精霊・アクア

 三人はシルールスから聞いた湖に辿り着いた。シルールスの居た沼と異なり、透明度の高い清らかな水だ。

『どうやら、シルールスの言った事は本当だったようね。気配が近いわ。』

 ルクスの言葉に子供たち三人は辺りをキョロキョロと見回してみたが、見えるのは美しい風景だけであった。

「気配も感じないし姿も見えないんですけど? 」

 それはシエルのみならずヴァンやマリクも同じ状況だった。すると水面に気泡が湧き、波紋が出来てその中心から美しい女性が現れた。

「姉ちゃんがアクアって精霊? 」

『ねぇ… え、えぇ。私が水の大精霊アクアです。よく此処まで辿り着きました。』

 今まで、人間に崇め奉られてきたアクアはヴァンの態度に動揺していた。

「そんな堅っ苦しい前置きはいいからさ。早いとこ試練終わらせて仲間になってくれよ。」

『あのぉ… 。テラさん、これはどういう… ? 』

 戸惑ったアクアはテラに助けを求めた。

『この子たち、最初に出会った精霊が運悪くルクスなのよ。』

『なるほど、道理で。』

『おい、こら、アクアっ! なんで納得する? 何が道理でなんだ? テラも運悪くって何なの、運悪くって? 』

 アクアとテラのやり取りにルクスが噛みついた。

『そのような態度だから大精霊の尊厳が損なわれるのです。』

『あたしは明るく楽しく人間と仲良くやっていきたいの。あんたみたいな上から目線でいると、人間が離れていくよ? 』

『人間は六大精霊の加護無くして生きてはいけぬもの。離れたりしません。』

『それじゃ、アクアはなんで一人なのさ? 』

『水が一つ所にしかなければ、水を求めて争いが起きてしまいます。雨となり川となり海や湖から天に昇って、また雨となる。ですから一つ所に居られないだけで一人で居るわけではありません。』

『はいはい、二人とも其処まで。子供たちの前で何やってるの? それよりアクア。試練の準備は出来ていて? 』

『あ、はい。夕暮れまでに、この湖の底にある神殿から宝物を持ち帰れば合格とします。』

 思わず三人は湖面に目をやったが、神殿らしき物は見えない。どうやら、そんなに浅い場所に在る訳ではなさそうだ。

「えぇ~。僕、泳ぐの苦手なのに。溺れちゃうよ!? 」

「バカねぇ。普通に泳いで行ってたら、私だって息がもたないわよ。その方法を見つけるのも試練の内なんでしょ? 」

 マリクの泣き言に冷静にツッコミを入れたシエルにアクアは無言で頷いた。

「テラ、地下道とか無いのか? 」

『在りますよ。』

 テラから思いがけない回答。

「やったじゃん! 」

 ヴァンは単純に喜んでいるが、シエルは違った。

「何、甘い事を考えてるのよ? こう簡単に答えるって事は罠が張ってあるとか、強い魔物が待っているとか、入り口は教えてくれないとか、何かあるに決まってるじゃない。」

『さすがにマリアの娘は慎重ですね。』

「僕たちも息子なんですけどぉ。」

 マリクの呟きを気にも留めずアクアは先を続けた。

『ですが、これは試練。入り口のヒントくらいは差し上げます。』

「ケチくさい姉ちゃんだなぁ。入り口くらい、さっさと教えろよ? 」

『ケ、ケチくさいですって!? いいわよ。もう教えてあげないから。勝手に探しなさいよね。どうせケチですから。ふん、何よ。久し振りの試練だから優しくしてあげようと思ったけど、厳しめにしとくから覚悟なさいっ! 』

 そして三人は水玉に包まれるとバラバラの方角に飛ばされてしまった。


「まったくヴァンったら、ろくなこと言わないんだから。テラに地下道の事、聞いた所で止めとけばいいのに。」

 端から見ればシエルの独り言のようだ。

『まぁ、アクアも大精霊の尊厳とか言っちゃってるけど、拗ねると只の駄々っ子だからねぇ。』

「つまり、そんな面倒臭い大精霊様を拗ねさせた訳ね。それでルクス。入り口の見当とかってつくの? 」

『ん~、まぁ手伝うなとは言われてないし、いいかな。近いわよ、入り口。』

 ルクスの言葉にシエルは注意深く周囲を観察した。すると一輪だけキラキラと輝いている水仙の花を見つけた。眼鏡スペクタクルズを掛けて見ると数値が表示された。

「おやおや。僕のデータを盗み見るなんて、そんなに僕に興味があるのかい? 」

 声がしたかと思うと水仙は超イケメンへと姿を変えた。

「お生憎様。私はアクアの神殿への入り口に用があるの。」

「なんだ、やっぱり僕に用じゃないか。僕の名前はナルシス。この地のゲートの門番さ。」

 そう言ってナルシスは一輪の水仙を口に咥えた。シエルは、この手のキザったらしい男が苦手だった。

「それで、通してくれるの? くれないの? 」

「君みたいな可憐なお嬢さんなら、通してあげたいのはやまやまなんだけど、試練の挑戦者となれば、そうもいかないんだ。ゴメンね。」

「別に謝らなくてもいいわよ。こっちも覚悟は出来てるから。」

 ナルシスと対峙したシエルは眼鏡を掛け直すと身構えた。といっても、シエルが使えるのは回復魔法とルクスの光魔法。相性としては有利不利はないが、レベル的に通用するかは自信が無かった。

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