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三つ子の魂、Level 100 まで!!!  作者: 凪沙一人
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第十六話 地の大精霊・テラ

 三人はオアシスを後にすると、予定通り大地の遺跡へとやって来た。

「なんかボロボロだなぁ。途中で崩れたりしねぇだろうな? 」

 ヴァンの言うとおり、今にも崩れ落ちそうな建物だった。

「テラに会うんだから行くしかないでしょっ! 」

 シエルの言う事も尤もなのだが、テラに会う前に命を落としては本末転倒である。道無き道を下へ下へと降りて行く。三人は氷穴のような極寒も溶岩地帯のような灼熱も覚悟していた。ようやく最下層と思われる広い場所に出ると、予想に反して快適な温度、湿度だった。奥から人影が現れるとヴァンの中から霊獣が飛び出して犬のようにじゃれついていた。

「あ、おいっ! 」

 思わずヴァンは呼び止めたが霊獣は構わずじゃれている。

「フフ、大丈夫よ。この部屋では霊獣が居なくとも、私の声は聞こえるでしょ? ルクスやウェントゥスの時も、そうだった筈だけど? 」

 言われてみれば、確かに試練を受ける時はヴァンにも声が聞こえていた。

「あなたがテラですか? 」

 シエルが恐る恐る声を掛けた。

「そうよ。私がこの『ボロボロ』で『崩れ落ちそうな』遺跡の主、地の大精霊テラよ。」

 思わずシエルは顔を顰めて頭を掻いているヴァンを睨んだ。

「ここは戦場になった事があるから仕方ないのよ。建て方の技術も古すぎて今の人間では修復出来なかった。」

「新しい神殿とか、望まなかったんですか? 」

「私は神様じゃないから神殿にはならないわね。人間には遺跡は古いからこそ意味があるみたいで。精霊は誰にでも見える存在じゃないから、難しいわよね。」

 理解は示しているが、テラは寂しそうだった。

「それで試練は何をすればいいんですか? なんか、暖かくて貴女と戦う雰囲気でもないんですが? 」

「そこの剣を持った貴方、お名前は? 」

「ヴァンです。」

「そう。ヴァンは霊獣の言葉に耳を傾け、ブーブルス… オアシスで出会った魔物ね。ブーブルスとも対話し、人間を襲わないよう約束させた。これは中々出来ない事。一種の才能。素晴らしいわ。だから試練は合格とします。そしてヴァンに宿ろうと思います。」

 ヴァンやマリクは単純に喜んでいるが、シエルにしてみるとラッキーだが不安でもあった。どう考えてもヴァンの行動はまぐれであり、偶々であり、偶然としか思えなかった。だとしたらテラがヴァンの本質に気づいた時、そのまま力を貸してくれるとは限らないのではないか。そんな疑念が払拭出来なかった。まぁ、だからと言って態々、過酷な試練を課してくれとも言い難い。外へ出ると日射しが眩しい。

「さて、次は何処へ行く? 」

「テラが来てくれたんだから水のアクアね。」

「えぇ~? まだフラムマじゃないのかよ!? 」

 ヴァンとしてはテラを宿す事は出来たが、炎の精霊フラムマが気になるようだ。だが、先に風の精霊ウェントゥスを仲間にした都合上、風、大地、水、炎にならざるをえない。その方が属性として有利だからだ。まだ、属性無視の力押しが出来る程の実力が無い事は、少なくともシエルは自覚していた。と同時にアクアが来た場合、自分が宿す事にならざるをえないとも思っていた。相反属性が同居出来ないとなると、ヴァンがまずNGになる。マリクか自分となるが、次のフラムマがマリクにNGが出る。闇が自分とNGなので、アクアがマリクを選んだ場合、必然的にフラムマが自分に来てしまう。つまり、ヴァンにフラムマを回す為にはシエルがアクアを引き受ける必要があった。なんだかんだと言いながらも、シエルはヴァンの希望を叶えようと考えていた。

『テラは今、アクアが何処に居るか知ってる? 』

 ルクスが問い掛けた。

『あの子、気紛れだからねぇ。』

「えっ!? 精霊って一つ所に居るんじゃないんですか? 」

 今度はシエルが問い掛けた。

『ルクス、もう少し精霊について教えてあるのかと思っていたわよ? 』

『この子たちに訓練つける方が先だったのよ。』

 声だけなので様子は見えないが、ルクスが少し気拙そうに感じられた。

『遺跡なんかで、おとなしくしているのは私くらいなものよ。光のルクスと闇のテネブラエは転々としているし、風のウェントゥスは入り口が風の向くまま気の向くまま。炎のフラムマは火山の何処か。水のアクアは海だったり湖だったり河川だったり。』

「えぇ~っ! どうやって探すんですか? 」

『一応、大精霊同士、方角くらいは分かるのだけどね。』

『今、アクアを感じられる方角には海も大河も小川も湖も沼もある。何処に居るやら。』

 少しウェントゥスが呆れ気味に言った。

「そんなの、簡単じゃん。一瞬で移動出来る訳じゃないんだから、手前から順番にあたってくしかねぇじゃん? 」

「相変わらず、ヴァンは単純でいいわよね。でも、それしか、無さそうね。行きましょ。」

 今は三人共に精霊が宿っている。誰ともなく同じ方向に歩きだした。池を過ぎ、湿地を抜け沼地に出ると三人の足が止まった。

「ん~、どう考えても精霊の気配じゃないわよね? 」

「僕もそう思うよ。どっちかって言うと… 。」

「魔物だな。それも大物の。」

「嫌なフラグ立てないでよ。」

 シエルの言葉虚しく、ヴァンの予感が当たっていた。

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