雪の幸
ーーー 小さい頃から冬が嫌いだった。子供と一緒に雪合戦をしたり雪だるまを作って遊んでいる親子を見ると、いつも憂鬱になる。皮肉に感じてしまい、壊したくなる。雪は何もかもを沈めてしまう。そうして都合よく溶け、また降り積もる。そんな人間のエゴにも似た、寂しく虚しい冬が、私は嫌いだった。
そうは言うものの、冬の全てが嫌いなわけではなかったのだ。なにせ、生きることと死ぬことが同義であるように、好きなことと嫌いなことも同様に同義であるからだ。故に、私は、冬を嫌いながらも、春のように華やかでも無く、夏のように五月蝿くも無く、秋の紅葉さなど微塵のかけらも残させない、真っ白で何にも染まることのできる冬を、きっと心の何処かで好いていたのだろう。 ーーー