『韓非子』
「韓非子の言葉にこういう言葉があります。
『狂者東に走り、逐う者もまた東に走る』
この意味が分かりますか?」
「狂者っていうのは、狂った人ですか?」
「ここでは泥棒のことですね」
「つまり、泥棒が東に走って、警官も東に走るってことでしょうか?」
「直訳すればそうですが、それだけでは何の意味もない言葉になってしまいます。
泥棒が東に走っている。
それを追う人間もまた東に走っている。
東に走っていることは同じだが、その内容は全く違っている。
日本でも『人を見た目で判断するな』と言われますが、それと同じことです。
よそから見ただけで確定的な判断を下すと、大きな誤解が生じることがあるということへの警告ですね。
これは見た目だけのことを言っているわけではなく、口から発せられた言葉に対しても同じことが言えます。全く同じ言葉を投げかけられても、一方では貶す意味であることもあり、一方では愛情や心配の裏返しということもあります。
それを感じられるようになると、生きる上で過ちや誤解が少なくなるでしょう」
女子留学生レイプール=カザンが手を上げる。
「つまり、先生の顔にある青あざは、奥さんに殴られたことに変わりはないが、夫婦喧嘩ではなく愛情の裏返しということでしょうか?」
「…そうですね。こういうプレイです」