『司馬遷』
「『蜚鳥尽きて良弓蔵せられ、狡兎死して走狗煮らる』
中国前漢の時代、司馬遷によって編纂された史記の有名な一節です。
飛ぶ鳥がいなくなれば、良い弓と言えども倉庫に仕舞われることになり、ウサギがいなくなれば、猟犬も煮て喰われる。という意味ですね。
組織のために一生懸命働き続け、それなりに重用されていたとしても、役に立たなくなった途端に、それまでの努力や成果などを無視され、バッサリと切られてしまうことがあります。
決定権限を持つ者の狭量で幼い精神性がそうさせることもありますし、合理的判断によるもの。人間関係の悪化。妬み。理由は様々に考えられます。結局、大であれ、小であれ、組織に属す以上はそういった目に遭う可能性はゼロではありません。
組織に属さず、関係も持たず、一人で生きていくという対抗手段はありますが、現代社会ではかなり難しいでしょう。
走狗にならないためには、自分が必要とされている理由を熟考し、必要とされている理由を消してしまわないように動くことの方が重要だと言えます。
勇猛な戦国武将であれば、敵対国家を全滅させず、常に闘いを継続させること。
研究者であれば、莫大な利益を生み出す成果を一気に発表せず、小出しにすること。
サラリーマンであれば、業務をこなしつつ、一時の成功で増長しないこと。
夫婦であれば、ゴミ捨てと風呂掃除を確実に実施すること。怒られる前にゲームを止めること。無駄遣いをしないこと。休みのたびに遊びに行かないこと。子供をお風呂に入れること。買い物に嫌な顔をせずに付き合うこと。奥さんに感謝を忘れないこと。
などに気を払うことが必要でしょう」
「先生、目から心の汗が出ています」
男子学生、磯城遼一が言った。




