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『孔子』
「孔子という名前を聞いたことはあると思いますが、孔子の仰った言葉で何か知っている人はいますか?」
「寝ぬるに尸せず」
一人の男子学生、磯城遼一が手を上げた。
「意味は?」
「死んだように眠っちゃいけないよ」
「その通りです。しかし、それだけでは不十分ですね。本当はもう少し言葉が続きます。
"寝ぬるに尸せず、居るに容づくらず"
一人で就寝する時には、死体のように無様な寝姿になることはなく、普段みんなと居る時には容儀を作らず、自然体でいるべきである。
つまり、他人に対する態度はあくまでも自然体であるのが理想で、誰も見ていない場所であっても、乱れてはならない。ということを言っているわけです。
孔子様が聖人と称されたのがよく分かりますね」
「先生も聖人ですか?」
「私は寧ろ裏表のある人間でいたいと思っていますね。それが人間らしさですし、凡人であるからこそ充実した人生を送れると思っています」