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第2話 陰キャ保健委員にトキメク。

 気が付けば、俺は彼女の肩をがっちりと掴んでいた。

 俺は慌てて手を離そうとした。だが、時すでに遅し。

 彼女の悲鳴と同時にレスラー体型から放たれる右ストレートは俺の頬に直撃していた。


 ――――――

 ――――

 ――


 目が覚めると俺は見たことの無い遊園地に立っていた。


「勇澄君っ? さっきからどうしちゃったの?」


 そう言うのはカノンだった。


「さっきはよくも俺を殴ったな……!」

「何が? 私そんなこと知らないよ?」


 と、手を前に出して可愛くフリフリするカノン。

 顔が伴っていないので非常に気持ちが悪い。

 つまりだ。このカノンは俺を殴っていない。ということは、今朝の夢の続きだ。

 こいつは金持ちだ。怒らせると何をされるかわからない。俺はしっかりとデートをしようと決めた。


「ごめん……頭が痛かったんだ。続き行こ?」

「うん!」


 すると、カノンは俺の小さな手を一回り、いや二回り大きい手で握りつぶす。

 そして、その手に引かれるようにしてジェットコースターへと連れていかれた。

 俺はジェットコースターが大嫌いだ。乗ると酔ってしまうからな。

 そして、その手を引かれるがままにジェットコースターが始まった。


 ――数分後


「オエエエエエ」


 俺はベンチに倒れ込んでいた。


「大丈夫ですか?」


 上からおでこにお茶が当てられる。


「あっ……。あぁ、ありがとう」


 俺はそのお茶をゴクリゴクリとたくさん飲む。

 すると、カノンは顔を真っ赤に赤らめていた。


「これが……間接キスなんですね……えへへ」

「うぉえええぇえ」


 俺は具合が悪くなりその場に倒れ込んだ。


「うわぁぁぁあ!!」


 俺は思い切り体にかかっていたと思われる布団を投げ飛ばす。


「大丈夫ですか? 先輩っ……?」


 そこには見たこともない美少女が俺の看病にあたってくれていた。

 彼女はまん丸の目をしていて、ペットのような愛らしさがあった。ロリという感じの見た目で小柄な体型だった。


「だ、だ、だ、大丈夫です」

「少し頭の調子がまだ良くないのかも……少し待っててくださいね」


 俺は言われるがままにそこへ目を瞑り寝転がる。

 すると、おでこに冷たい感覚がする。


「冷えピタですっ。体をしーっかりと休めてくださいね! ふふ。まだ、ほっぺも痛むはずですよー、ものすごく青ざめた色をしてましたもん。その後も具合が悪いのか調子の悪そうな顔してましたから! 安静にしてないとダメなんですよぉー」


 思い返せば花音に強烈な右ストレートを喰らっていたことを思い出した。ほっぺがじーんと痛くなる。

 その痛いほっぺを手で触れるとガーゼ? のようなものが貼ってあった。


「こ、これも君が……?」

「当たり前ですよー、保健委員ですから!」


 そう言いながらキメ顔をする、彼女が僕には天使に見えた。


「ど、どうして君がここまでしてくれるんだ……? そ、その僕はイケメンでもなんでもないし……」

「そうですねー……。困ってたし、助けたかったからですよー。そこに理由はいりませんっ!」

「女神様ですか?」


 俺はそんなとぼけたことを口に出していた。

 だが、彼女はあんなことを言い出すもんだから俺も驚いた。


「はいっ! そうで……いやいやいや! そんなんじゃないですよー、忘れてくださいっ!」


 俺は不思議そうな顔で彼女を見つめる。慌てた彼女は手をフリフリしている。

 あー……。可愛い。

 もうなんでもいいや。


「そろそろ良くなったんじゃないですか? 教室に戻ってお勉強をしましょー!」

「君はいいの?」

「サボ……いやいやいや! サボってなんかいませんからねっ! お仕事ですもんー、えへへー」

「じゃあ、僕は教室に戻るよ。き、君も勉強しないとダメだ……よ?」


 俺はそう言うとベッドから出て保健室を出た。

 可愛かったけど、サボるなんて何かあるのかな? 柄にも無く人の心配をしてしまっていた。

 いやいやいや。所詮は他人だ。俺はそう割り切って教室に戻った。

 教室に戻ると数学の授業をしていた。


「もう大丈夫なのか? それなら、席に座れ」


 俺が自席に向かうと隣には花音が座っていた。

 この……クソ女が!

 俺は腹が立ったので横をちらっと見て睨むと彼女は泣きそうな目でこちらを見つめていた。

 顔が伴っていないから気持ち悪いだけなんだよ。

 俺はそう思い彼女を無視した。

 授業が終わると、俺の学校生活初めてのことが起きた。


「お前、おもしれぇなぁ!」

「ほんっと、尊敬すっぜ!」

「見返したわ!」


 と、男がぞろぞろと寄ってくる。

 陽キャ!? なにこれ! 俺は戸惑い席から逃げ出したくなる。


「なんかしたっけ?」

「あれだよ、あれ!」


 俺には何かをしたという手応えが一切なかった。


「とりあえず、こっち来い!」


 そう言うと、俺は腕を握られ教室の外に連れていかれた。

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