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3 それを愛と言わずして……

 

 その日の晩、ベルナールが『定時』で帰宅した。玄関で彼を迎え入れながらアンナは小首を傾げていた。


 本来ならば騎士団は例の強盗事件で忙しいはずなのに……やはり謎のシフトだわ。


「おかえりなさい」


 この日のベルナールの様子はどこかおかしかった。物思いに沈んでいるようで、なんだか性急でもあるというか……。


 こんな彼は珍しい。


 いつもの彼は自分が主導権を握っているとしても、そうとは悟らせないような自然な振舞いかたをするからだ。なんというか『一拍待つ』感じ。物柔らかな視線をアンナに向けて、自然と先に話させようとする。……君の話を聞くのが好きなのだ……とでもいうように。


 けれど今日のベルナールはどこか余裕を失っているように感じられた。


 珍しく笑顔もない。


 アンナはあっという間に彼の腕の中に囲い込まれていた。乱暴な仕草ではないのに、抗いがたいものがあり、まるで綺麗な鳥籠に入れられてしまったような錯覚に囚われていた。


「――グラヴェに会った?」


 なぜ知っているのだろう。


 グラヴェ本人に聞いたのか、はたまた、あのジャンヌという美しい女性騎士から聞いたのか……。


 低く掠れたようなその声は妙に密やかに響いて、どういうわけか背筋がぞくりとした。


「ええ、昼間ばったり会ったの」


「……君は喜んだ?」


 問いかけられた台詞に覚えた、ほんの少しの違和感。


 『知人と会えて、嬉しかった?』ではなく、『君は喜んだ?』と彼は訊いた。その二つは同じ意味のようでいて、やはりニュアンスが違う。


 アンナはすぐ近くにある彼の美しい虹彩を見上げた。鼻の先が触れ合いそうな距離に、少しだけ怖気づいてしまう。整った面差しは、こんな時ばかりは妙に謎めいて見えて。


 ペースを乱される――


 まるで知らない人と相対しているみたい。私は罰せられるのだろうか……不意に奇妙な疑問が湧き上がり、アンナは狼狽(ろうばい)してしまった。


 そんな馬鹿な。親切で寛大な彼が、そんなことをするはずがないのに。


「私……そうね、喜んだ」


「妬けるな」


「……え?」


 よく聞こえなかった。


 戸惑っているうちに、また問いかけられる。


「グラヴェと会って、懐かしさを感じた?」


「そうね。父を知っている人だから、昔を思い出せるわ」


「それだけ? 僕に何か言うことはない?」


 ……何か言うこと? ベルナールがどんな答えを求めているのかよく分からない。


 それに、アンナはこの常にない状況にすっかり混乱していた。思考能力が著しく低下している。


「彼は、父がいい人だったと言ってくれて……」


「他には?」


「他? 他には……ええと……彼が私を」


 憐れんだ――


 そう言いかけて、アンナは思わず息を呑んだ。こんなこと、夫には絶対に言ってはいけない。


 政略結婚に義理立てし、善き夫であろうとしてくれるベルナールに対し、この言い草はあまりに失礼だろう。妻が仕事仲間に憐れみをかけられた、だなんて。


 そんなアンナの様子を見つめていたベルナールは、不意に彼女の後頭部に手のひらを回した。


 まとめ髪がくしゃりと乱れる。しっかりと編み込んではいなかったので、ピンがズレたのが分かった。


 それに気を取られている隙に、唇を塞がれていた。


 ――背中に、扉の感触。


 顎を上げさせられて、深い口づけが始まる。アンナはそれに応えるだけで精一杯だった。


 ああ、腰が抜けそう――……


「彼に手を取られた?」


 キスの合間に夫に問われたが、なんと言われたのか……頭がぼんやりして理解が追い付かない。


 いつの間にか腰と太腿の裏に腕が回されていた。


 足が浮いている。


 自分で床を踏みしめていないのに、なぜか玄関が遠ざかっていく。アンナは自分が彼に抱え上げられ、運ばれているのだということにやっと気付いた。ダイニングを通り過ぎてしまったので、彼の肩をポンポンと叩いて訴える。


「あの……夕食を作ったの」


 ベルナールは妻の背を撫でて、端的に応じた。


「――君がメインディッシュだ」



 ***



 朝目覚めると彼はもういなかった。半分空になったベッドをぼんやりと眺める。手を突き、ゆっくりと上半身を起こした。


 視線を巡らせるとベッド脇に小卓が据えられており、そこに朝食が並べられていた。それを眺めているうちにぽろりと涙が零れ落ちて――。


 アンナはほとほと自分にうんざりしてしまったのだ。


 ……また寝坊してしまった……


 同じ寝坊でも、今朝はいつもと事情が違う。


 いつも彼は出かける前、「おはよう」の挨拶だけは欠かさなかった。


『君を起こしたくなかったんだけど』


『だけどどうしても顔を見て挨拶だけはしてから出かけたくて』


 彼はそんなふうに言ってくれていた。アンナはそのことがすごく嬉しくて。彼の気遣いが身に沁みて、いつも胸が温かくなったものだった。


 彼がそうしたいと思ってくれているのも嬉しかったし、アンナ自身も喜びを感じていた。


 目が覚めた時に一人、彼がいない朝を迎えていたら、とても寂しいだろうから……と思ったりもして。


 だけど今日の彼は、アンナが寝ているあいだに黙って家を出て行ってしまったらしい。シンとした屋内の気配から、すでにこの家に彼がいないのだと分かる。


 もういい加減、呆れられてしまったのかしら……。


 じわりと瞳に涙が滲んだ。


 結婚してからずっと続いていた習慣がついに破られた――そのことがアンナを打ちのめしていた。


 ぐすんと鼻をすする。


 グラヴェから言われたあの心ない言葉や、昨夜の余裕をなくした夫の様子が思い出されて、ひどく落ち込んでしまう。


 乱暴にはされなかったけれど、昨夜のベルナールはやっぱり変だった。


 たぶん……アンナの勘違いでなければ、彼はとても苛立っていたのではないか。それをアンナにストレートにぶつけることができずに、自制心で抑え込んでいる様子が感じ取れた。


 昨夜の触れ合いは、なんといったらいいのだろう。二人でいるのに、どちらも消しようのない孤独を抱えているような感じがして――。


 足を踏み入れた川が思ったよりも深かったというような、寄る辺ない怖さを感じたのだ。


 彼はどうしたのだろう。あの暗闇の中で何を感じたのか。


 アンナは重い体を引きずるようにして、トレイを持ってダイニングに移動した。明るい日差しが射し込む暖かな空気の中で、彼が作ってくれた食事を一人で取るうちに、段々と気持ちが落ち着いてきた。


 やっぱり私、彼が好きだわ……


 アンナはそう思った。それは飾り気のない本音だった。ストンと胸に落ちる。


 まだ諦めたくない。これ以上、彼を求めることはただのエゴかもしれないけれど……だけど、どうしても彼が好きなのだ。


 失敗続きの自分だけれど、どうにかして彼に見直してもらえる手はないだろうかと考える。


 視線をさまよわせるうちに、新聞記事の上でそれが止まった。連続強盗事件。犯人はいまだ捕まっていない。


 そう――そうよ、これだわ! アンナは目が覚めたような心地だった。


 まさにうってつけの案件じゃない。


 つまり、巷を騒がせている連続強盗犯をこの手で捕まえて、夫の仕事をアシストするのだ。


 幸い自分は推理小説マニアで、古今東西、ありとあらゆるタイプの極悪人(想像上の)を知り尽くしている。


 それに夫には内緒にしているのだが、新聞で何か事件が報じられた際には、こっそり現地を訪ねてみることもあった。公的機関の捜査の邪魔はしたくなかったので、聞き込みをすることはなかったけれど、現場百篇、何事も勉強だと思っていた。


 これまで学んできた知識を、生かせる時がきたかもしれない。頬杖をついたアンナは、巷を騒がせている連続強盗事件について考えを巡らせるのだった。



 ***



 庭先で花を手入れするふりをして、じっとその時を待った。


 隣家の扉が開き、先日と同じ地味な色のスカーフをかぶった老婆が出て来た。以前アンナが挨拶した時、迷惑そうにしていた彼女。あの時、配達された新聞を急いで回収して、すぐに家の中へと引っ込んでしまったのは、極力会話を交わしたくなかったからだろう。


 関わったのはとても短い時間だった。それでもアンナはあの老婆を見たあとで、奇妙な引っかかりを覚えたのだ。


 そう、尾行の対象は隣家に住むあの老婆だ。


 アンナは、傍らに準備してあった帽子を手に取り、手早くかぶった。手早く支度を整えながらも、視線はあの風変りな隣人から離さない。


 途中で見失わないよう、今のうちに彼女の衣服をよく覚えておく必要があった。


 古ぼけた、くすんだ茶のドレス。かなり特徴的だ。


 ――尾行、スタートよ――


 アンナは軽やかに腰を上げ、通りを歩いて行く隣人のあとを追い始めた。


 やはりこうして落ち着いて眺めてみると、あの老婆は女性にしては背が高いように感じられる。アンナはあの怪しい隣人こそが、鶫強盗の犯人なのではないかと疑っていた。


 思い出されるのは、先日新聞をさっとすくい取った、綺麗なあの手――あれは一瞬の出来事だったし、アンナのほうも特別注意を払っていたわけでもなかったから、あの時はスルーしてしまった。しかし……だいぶあとになってから、強烈な違和感に襲われたのだ。


 ――手の甲に皺がなかったわ……。


 あの時は相手が俯いていたこともあって、顔をきちんと確認することができなかった。けれど見た目に不審な点はなかったように思う。髪の隙間から覗く皮膚の質感は、たるんで皺が寄っていて、ちゃんと老人らしい老人に見えた。それで思ったのだ。


 ――もしかするとあれは精巧なマスクであり、若い人が年寄りに化けていたのではないかと。


 顔を変えているとするなら、性別すら怪しくなってくる。たとえばあれが小柄な『男性』であったならば、老嬢に化けたとしても、背格好にそこまでの違和感はないのではないか。  


 そう――あんなふうに。


 無力そうな老女を警戒する人はいるまい。だからこそいまだ犯人は捕まっておらず、犯行が繰り返されているのではないだろうか。ゆっくり歩いているように見えて、前を行く老婆(?)は意外と足が速かった。少し離されたので、慌てて小走りになり距離を詰めようとしたところで、不意に通りの陰から腕が伸びて来た。


 そのまま裏通りに問答無用に引っ張り込まれてしまい、驚いて見上げれば――そこに立っていたのはなんと、先日会ったばかりのグラヴェ氏であった。


「君、何をしているんだ」


 それはこちらの台詞よ、とアンナは思った。不意打ちもいいところだし、ミッション中であるのに、いいところで邪魔に入られて混乱もしていた。


「グラヴェさんこそ、なんで……」


「今現在、複数の隊が関わった合同演習中なんだ」


 彼の言ったことが引っかかり、アンナは思わず眉を顰めていた。


「演習中ですって? 強盗が次々に事件を起こしている非常事態に、あなた何を言っているの?」


「はぁ? 君こそ何を、今更そんな事件」


 今更じゃないわよ、最新の事件よ? そのようにたるんだ危機意識で、大丈夫なのだろうか……。アンナが難しい顔でグラヴェを見上げると、あちらも同じような顔で見返してきた。


 グラヴェはアンナを移動させようと、エスコートするように背中に手を回した。


「一月ほど前、花火が上がっただろう? あの時――」


 彼がそう言いかけた時、騎士服を身に纏った年若い青年が裏通りに飛び込んで来た。


「グラヴェさん、またあなたですか! 僕は責任持てませんよ、こんなことをして」


 苛立ったようにそう言って、アンナをちらりと眺める。乱入してきたのは、色白で実直そうな青年騎士だ。


 彼の瞳には焦りと、苛立ちと、恐怖の色が浮かんでいるように見えた。


 ――ああもう、一体なんなの? 次から次へと、わらわら湧いて出てきて!


 アンナは苛立ち、


「私は急いでいるからこれで失礼するわね。行くところがあるの」


 早口に告げて表通りに戻ろうとしたら、なんとその青年が立ち塞がり、妨害してくるではないか。


「すみません、お通しすることはできません」


 ばつが悪そうではあるが、忠実に職務を遂行するという覚悟が見てとれる。


「どいて頂戴、非常事態よ」


 早くあとを追わなければ、あの老婆がどこかへ行ってしまう。


 この人に詳しく説明している暇はないし、それに――なんだかいかにも杓子定規という印象を与える人だから、どうせ話したところで『証拠もないのに困ります』云々と言わるのが関の山であろう。どのみち話すだけ時間の無駄な気がする。


「あなたは気付いていないようですが、この状態がもうなんというか――非常にマズい事態なんですよ。自宅までお送りします。こちらも命がかかっていますので」


 そう告げる彼はどういうわけか冷や汗をかいているようだ。


 アンナはふぅと息を吐き……


「あ! あそこで子供が殴られている!」


 と表通りの何もない空間を指差して、大声で叫んだ。彼が慌てて振り返った隙を突いて、アンナは駆け出した。


「どこです? 子供なんてどこにも……て、あれ? ――ちょっと待って!」


 待てと言われて待つ馬鹿はいません。角を何度も曲がり、裏通りを駆け抜ける。


 不意を突かれたことに加え、女性の足だと舐めてかかっていた騎士は、すぐに振り切られてしまった。



 ***



 裏路地を進むアンナは、そろそろ表通りに合流しようと考え、通りが交わる度に左側(表通りに通ずる方向)を気にしていた。老女が進んで行ったメインストリートに戻らなければ、ここまで尾行してきた意味がない。


 かなり時間を浪費してしまった気もするけれど、相手がそのまま直進を続けているのなら、まだ追いつけるかもしれない……。


 そうこうするうち、ある十字路にさしかかった。ここで戻ろう。そう決めて、左手を見遣る。


 すると表の明るい通りの中に、夫の姿を見つけた。暗色の騎士服を身に纏った彼は、ハッとするほど美しい立ち姿をしている。凛とした中にも独特の色気があって、つい目を奪われてしまった。


 あちらは日が当たって明るく、こちらの裏通りはひどく薄暗いので、その明暗差が互いの立場を象徴しているようにも感じられた。


 こちらから見ると、彼は横を向いていた。視線がブレていないので、その先にある何か――あるいは誰かを見つめているようだ。


 通りの下手(しもて)から、彼に近付く人影があった。ベルナールのほうにキビキビとした足取りで歩み寄ったのは、美しい女性だった。


 背筋はピンと伸びていたし、足運びも滑らか。キリっとした横顔。しっかりとした顎のライン。


 あれは確か――ジャンヌだ。以前勤務先の書店前でグラヴェに話しかけられた時に、突然割って入って来た凛々しい女騎士。


 騎士のジャンヌはベルナールよりも十ばかり上に見えるのだが、こうして二人が対峙していると、その組み合せに意外なほど違和感はなかった。


 纏う空気がどこか似ているというか――キリッとした美男美女同士だからだろうか。


 ジャンヌは厳しい表情で何かを訴えており、それを聞く一方だったベルナールがふと眉根を寄せると、彼女のこめかみに指を伸ばした。そして軽く撫でるように触れた。


 そのような接触に慣れているのか、ジャンヌはそのあいだも口を動かし続けていて、何かを早口に説明している。アンナはあとずさり、その場から逃げ出した。


 頭がひどく混乱している。何がなんだか……。


 惨めだった。勇んで家を出て、事件を解決するのだと意気込んでいたのに……馬鹿みたい。


 何一つ上手くいかない……。


 じんわりと涙が滲んできた。


 ふと気付けば、いつの間にか大通りに合流していたらしい。古いレンガ壁が途切れて一気に視界が開けた。


 先が北道路にあたるせいか、建物の影になり周辺が暗く沈んでいたので、大通りに足を踏み入れていることを理解するのが遅れた。駆け足を急に止めることができずにたたらを踏んだ瞬間、横手から近付いて来る車輪のけたたましい音に気付き、ハッと身体を強張らせる。


 仰ぎ見れば、二頭立ての四輪馬車がすぐ目の前に迫っていた。


「――アンナ!」


 背後から力強い腕にからめ取られ、一息で後ろに引き戻される。ベルナールだとすぐに分かった。


 声や手の感触。息遣い。大好きな香り。背中に回された彼の腕が微かに震えているのが分かり、そのことに驚いてしまう。


「ああ良かった、無事で! 君を失ってしまったら、僕はどうしたらいいんだ」


 彼の声にいつもの余裕がない。


 アンナのほうも今になって心臓がバクバク飛び跳ねている。


 ぼんやりと通りを見遣れば、先ほどまでかぶっていた帽子が馬車の車輪に轢かれ、ひしゃげて潰れていた。


 なんと儚いのだろう――。


 確かにここにあると信じていたものが、一瞬のうちに消えてしまう。


 父もそうだった。人生はあまりにあっけなく終わってしまう。


 ずっとそばにいてくれるものと信じて疑わなかった。けれど不幸な事故で……突然いなくなってしまった。あの時はぽっかり心に穴が開いたみたいになって、きっと立ち直れないだろうと思っていた。


 けれど傍らにはベルナールがいて、ずっと支えてくれた。一緒に父の死を悼み、アンナの心の傷を癒してくれた。ずっと長いあいだ辛抱強く付き合ってくれたのだ。


 彼は「早く元気になって」とは一度も言わなかった。


 ただ時折――父の思い出を懐かしそうに語り、代わりにアンナが父の話をするのを、ただ静かに聞いてくれた。彼のひたむきで、慈しみを込めたあの瞳が、息をするかのように当たり前にアンナに注がれた。


 あれを愛といわずして、一体なんだというのだろうか。疑いようもなく、彼は全身全霊で愛を与えてくれていた。けれど日々を懸命に生きていると、段々と周囲の雑音ばかりが気になってきて、大切なことを見失ってしまう。


 ――あなたはとても善良で、寛大で、愛情深い人だわ。


 妻となった私を愛し、何よりも大切にしてくれた。私はあなたと結婚できてよかった。アンナは心からそう思った。


「無自覚に君を傷付けてしまっていたなら、すまない」


 彼がぽつりと呟くのが聞こえ、アンナは胸の中にしまってあった熱がとめどなく溢れ出てくるのを感じた。


 伝えなければ。あなたに聞いて欲しい。


「あなたの愛がまがいものだったことなど、ただの一度もなかった。この先も私はあなたと共にありたい。だけど……そうするためにはもっと私自身が努力をしなくちゃって、焦ってしまっていたの」


「これ以上努力する必要なんてない。出会った時からずっと、君は僕にとって完璧な人だから」


 やっと妻を失わずに済むということが実感できたのか、ベルナールの声にあたたかみが戻った。




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