予告編
とにかくネタを思いついたのでプロローグでもいいから書かないと、と見切り発車です。
真夏のクーラーがそれなりにきいて快適な自分の部屋の中、僕はブランケットに包まれながらスマホを握り締めてまどろんでいた。
昨日の昼にサービスが開始されたスマホゲーのプリンセスワールド、通称プリワーのリセマラを徹夜でやり続けて疲れ果て、眠ってしまったのだ。
プリワーのディベロッパーはこれが初めてのアプリ参入らしく、とんと聞いたこともない会社だが、本気度は並々ならぬもので、著名なイラストレーターに片っ端から声をかけまくり、宣伝にも相当金をかけたらしい。
あちこちの著名なゲームサイトがこぞって宣伝し、テレビコマーシャルこそやらないものの、ちょっとしたまとめブログを巡回すれば、プリワーの宣伝バナーが必ず目に付いたほどだった。
そのバナーに登場するキャラの中に、僕の好みな感じで描かれたキャラが目に入ってきた。
お、これはいいな、と思ってプリワーのサイトを見れば、他にも好みのキャラがわんさか出てきた。
背中に日本刀を背負った黒髪姫カットの和装の女の子。
赤いショートヘアの軽装な鎧とごついガントレットを身につけた闊達そうな少女。
青く凝った縁取りのナイトドレスのような服と杖を持った大人びた女性。
緑色のホットパンツが印象的な弓使いは、ウインクして僕を見ている。
どれもが魅力的だった。
目を奪われた。
だから、僕はすぐにそのサイトにある事前登録のボタンをタップし、所定の手続きを済ませて事前登録を終了すると、サービス開始のその時を待った。
それが昨日の昼の十二時だった。
高校が夏休みの僕にとって、時間は味方だ。早速ダウンロードして好みのキャラが引けるまでゲームをやり直す、通称リセマラを開始した。
したのだけど、ロクなキャラも引けず、ただ延々とアプリをダウンロード、ゲームを開始、チュートリアルをクリアしてガチャ、出てきたキャラが五冠ーーレア度は冠数で表され、三冠が課金ガチャの最低ラインになっているーーでないのを確認してアプリを削除、そしてダウンロードを繰り返してきた。
その回数、五百回を数え、七キャラいる五冠の一人も引けないまま深夜を迎えてしまった。そして僕は疲れ切り、現状に至るというわけだ。
僕は、ただただ自分のくじ運の無さに嘆きながら、目をこすってスマホの画面を見直した。
そこには、ゲームのダウンロード画面がうつっていて、ミニキャラがぴょこぴょこと愛らしい動きでその経過を知らせている。
そして、五百一回目のダウンロードが終了した時、それは僕の目の前に現れた。
「もう! あんなに私があなたを選んだのに、どうしてあなたは私を選ばないのっ⁉︎」