初訓練
「今日からお前たちの剣の指導をすることになったルイ・ラテースだ。騎士団長をしている。で、俺の隣に居るのは近衛騎士団長の」
「リエレスト・オルデン」
「この二人でお前たちに剣を教えていく! 俺たちを超えられるようにしっかりと訓練しろよ!」
俺は今、訓練場で剣の訓練をするためにいるんだが、騎士団長の隣に居る人、昨日王女様の後ろに居た人だよ。まさか近衛騎士団団長とは思わなかったぜ。
この二人の自己紹介が終わってから一人一人に刃が潰された訓練用の剣が渡された。
「今日はそれで素振りをやってもらう。俺たちが見ていくからしっかりと素振りしろよ」
と言って、二人で一人一人の素振りを確認さながら、もっと全身の重心を使えとか、大振りすぎるとかダメ出ししてから剣の振り方を教えていた。
俺は剣を感覚に任せて振り、その後体になじんできたら考えながら剣を振る、って感じでやってる。剣を振る速度は周りより若干早い程度だ。力を抜いてから振ってこれなので、これ以上速度を下げると形が崩れる気がするんだよ。
そんな感じで剣を振っていたら二人が近づいて来た。
「なあ、お前、元の世界で剣をやっていたのか?」
と、騎士団長が聞いてきた。
「いえ、剣を持つのは今日が初めてです」
「そうなのか? お前の素振りは綺麗すぎて言う事がねえんだよ。名前教えてもらってもいいか?」
やったぜ。素振りの仕方はこれで合ってたみたいだ。にしても、名前を聞きたいってほかの奴らには言わなかったよな。まあいいか。
俺は素振りを止めて、
「俺の名前はコウ・セイランです。よろしくお願いします」
軽くお辞儀しながら言うと、二人は驚いたように目を見開き、リエレストさんが、
「貴方は王女様から無能と言われていて、城にいる貴族も貴方を消そうとしてる」
と言われた。が、消そうとしてるのは何となく分かっていたので、特に何か思うところがあるわけじゃない。
「ん? そういや、お前の素振りのほうがほかの奴らより若干速くなかったか?」
ヤバ、バレそうになってるし。ここは適当に誤魔化しておかないと。
「気のせいじゃないですか? それより、二人は何か剣を使いながら魔法を使う事って出来るんですか?」
気になったことを聞いて話を逸らす。
「ああ、[魔纏]のことか?」
「[魔纏]?」
なんだそれ? 名前的には魔力でも纏わせるのかな?
「[魔纏]って言うのは剣に魔力を纏わせて切れ味や耐久を上げたり、自身の持つ魔法属性を纏わせて攻撃するスキルのこと」
なるほど。俺が疑問に思ったからか、リエレストさんが丁寧に説明してくれた。
俺は剣を眺めながら、出来ないかと思い、[魔力操作]を使ってやってみた。
「おいおい、何してんだよ? コウ」
「いえ、出来ないかと思いやってみたんですが、難しいですね。なかなかうまくできないです」
俺の持ってる剣は今、薄く光っているんだが、明滅したり一部が光らなかったりしている。
〝スキル[魔纏]を取得しました″
そんなアナウンスが聞こえたと同時に、先程とは違い、魔力で白色の刃が作られた。
「まじかよ、成功させやがった......」
「まさか、成功するとは思わなかった」
どうやらこれが成功した時の形らしい。二人はよほど驚いたのか、無言で俺の剣を見つめていた。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、ああ、大丈夫だ。というか、お前凄いな。[魔纏]について説明しただけで使えるようになるとは」
「そう、普通は数か月練習してやっと出来る事」
へ~、そうなのか。数か月も練習しないと使えるようにならないのか。まあ、ここは俺クオリティ、称号と加護の力技で短期間取得が可能なのだよ。
その後は俺が速度を落として適当に素振りしながら、二人と会話して訓練を終えた。
午後は魔法の訓練があるらしく、王城の一室に向かっている。なぜ部屋なのかとも思ったが、最初は座学をするらしい。
そんなわけで、俺は今席についている。俺の左右にはカンナヅキさんとサカモリさんがいて、前の席にカイトがいる。
四人で適当な話をして時間をつぶしていると、一人のおばさんが入ってきた。年の頃は四十歳程か?
「私の名前はセレイ、あなた達勇者の魔法の訓練の担当です。あなた達には私を超えてもらいますので、そのつもりで訓練してください」
その後はこの世界の魔法について説明された。ものすごく長かったので、簡略化して説明する。
この世界には、基本属性として九つの属性がある。それは、無、火、水、土、風、氷、雷、光、闇の九つだ。そして、特殊な魔法として、光魔法の上位属性、神聖魔法、闇魔法の上位属性、暗黒魔法、精霊と契約することで、その精霊と同ランクまで使えるようになる、精霊魔法、悪魔と契約することで、その悪魔と同ランクまで使えるようになる、悪魔魔法、そして、空間魔法や回復魔法、結界魔法に付与魔法とあるそうだ。また、魔法に似ているものとして錬金があるそうだ。
で、この世界では、錬金を除いた物は生まれたときから適性がなければ使えないらしい。
あと、小説のようにMPを空にしてから回復させても上限は増えないらしい。あ、MPが無くなると気絶はするとのこと。
「最後に、皆さんには、今から見せる魔法と同じレベルの魔法を使えるようになってください。
我求めるは業火の炎 全てを焼き尽くす烈火 我魔力を糧に顕現せよ 全てを飲み込み 灰へと変えよ
『焼きつくす烈火』」
セレイがそう唱えると、セレイの手の先から赤い炎が噴き出し、教室を紅く染めた。
「それでは、今日の魔法の訓練は終わります」
訓練が終わってもしばらく教室の中はテンションが上がって騒がしかった。俺は、誰にも気づかれないように[気配遮断]を発動しつつ教室から出た。
俺は[気配遮断]を発動しながら図書館へ向かった。なぜか? 魔法に関してもっと詳しく知りたかったのもあるが、他にもこの世界の常識や剣術、体術の知識が欲しかったからな。
その後、俺は本を読む際、誰にも気付かれず、閉館しても一人で本を読み続けた。