召喚先
「おお! 成功したぞ!」
俺が意識を取り戻て最初に聞いたのはそんな声と複数の歓声だった。
俺は俯せで寝ていた体を起こして立ち上がり、周りの状況を確認した。
まず、起きて扉のある方向に王女と思わしき人と、その後ろに護衛の為にいるのか、二十人ほど騎士がいて、隊長のような女性が王女の後ろにいる。
クラスメイトの方は殆どが起きだしていて、起きていないのは後二、三名程だ。そいつらも時期に起きるだろう。
で、今俺たちがいる場所なんだが、すごい綺麗なんだよね。床や壁、天井なんかが大理石のような石で出来てるのに加え、扉が一つしかなく窓なんかもないのに何故か壁際に白い光源が浮いていて明るいし。
っと、全員起きたようだな。
「勇者様方。私の名前はマーレ・クライヒと言います。勇者様方、どうかこの世界を救って下さい」
皆が起きたのを見計らって王女が言ってきた。まあ、急にそんなこと言われても絶対に反論するわけで、
「ちょっと待ってください! 勇者とか世界を救うとかどういうことですか!?」
ほら、こんな感じ。ちなみに、今反論したのは我等が主人公、神堂君だ。
「すいません。では、説明させていただく前に改めて、私の名前はマーレ・クライヒと申します」
「あ、俺の名前は神堂かみ......カミヤ・シンドウです。よろしくお願いします」
ちゃんと名前言い直したな。そして相変わらずのイケメンスマイル。それで王女が顔を赤らめた気がするが、一瞬で元に戻ったので分からない。
「それで、勇者とか世界を救うとかどういうことですか?」
「それは......」
ここからは長々と説明が続いたので簡略化して説明する。
まず、俺たちが勇者召喚の儀で呼ばれたから勇者ということになる。で、この世界には魔王がおり、大昔に封印されたが封印の力が弱くなっていて復活しそうで、復活すれば魔王が魔大陸と呼ばれる魔族の住む大陸から、強力な魔物を率いて世界を滅ぼそうとする。だから勇者様方には魔王が復活したら倒してほしい。
っと、こんな感じだが、この事を話す時の王女が全然焦っているような感じがしない。自分たちの世界が危険なのにも関わらず、だ。一応怪しいので警戒しておく。
「ですので、この世界を救って下さい、勇者様方!」
「おい! 俺たちは元の世界に帰れねえのか!」
シンドウが返事をしようとしたら横から邪魔が入った。
「申し訳ありません。私たちは返すことが出来ないのです。ただ、伝承によれば魔王を倒せば元の世界に帰ることが出来ると言われております」
それ、本当か? つか、倒すっていう定義がすごく曖昧なんだが、殺すとか封印するとか、具体的に言わないってことは俺たちを返す気ないんだろうな。これはこの城にいる間は警戒していないと危険だな。
「分かりました。俺たちで魔王を倒して、この世界を救います!」
ああ、うん。正義感の塊であるシンドウは見捨てることが出来ないってことか。ま、あいつは人を疑うことを知らないとか、人は皆悪い人じゃないって感じだから騙されやすいんだけど。俺『たち』ってなに。どういう事だよ。
「皆、俺はこの世界の人を助けたい。だから、皆の力を貸してくれ」
シンドウが振り返って言ってきた。俺はこいつに力貸す気なんて無いけど周りの奴らは賛成するんだろうな。
「ああ、いいぜ! 神堂の頼みならな!」「神堂ばっかりにかっこつけさせねえよ!」「神堂君が行くなら私も行く!」
案の定皆賛成しました。そして、
「静嵐君、私たちも頑張ろう!」
「仕方ないわね」
「俺だってやってやらぁ!」
この三人も行くと、ここはあえて空気を読んで賛成するとか俺はしない。警戒しっぱなしだ。後、何故か疲れないんだよな。
「ありがとうございます! 勇者様方!」
王女も喜んでいる。あれは本心からだろうか?
「それでは勇者様方。私の父、国王に会って頂いても宜しいですか?」
「はい。もちろんです」
それから俺たちは騎士に囲まれながら部屋を出た。
俺は団長の様な人から見られていたが、その時は気付くことが出来なかった。