魔物氾濫
久しぶりです。
「お前らぁ!! 死ぬ気で護れぇ!!」
魔物氾濫によって迫って来る魔物どもを前に叫ぶギルマスことアドルフ。
今までアドルフの事をギルマスと呼んでいたのは、ただ単にネオが興味なかっただけだったりもする。
「なんだこいつら! 剣が通らねえ!」
一人の冒険者が魔物に剣をぶつけたまま叫んだ。
「お前ら!! そいつらはブラッディ系だ!! 生半可な攻撃は通じねえぞ!!」
(クソッ! どこ行きやがったんだ! ネオの奴!)
アドルフが全員へと注意しながらネオの事を考える。尚、現在神王様は上空にて多数(三十六体)のブラッドドラゴンの滅殺中(曇ってるから誰も気づいてない)。
「おおぉぉっらあぁぁ!!」
自身の得物である大剣に雷を纏わせて地面に叩きつける。その衝撃は雷となり前方の敵を焼いた。
それだけで光の粒子となる魔物。だが、その穴もすぐに別の魔物で埋め尽くされる。此処は草原ではあるが、今は魔物に埋め尽くされ、冒険者と魔物の血で濡れている。
アドルフはチラリと横目で気になった二人の様子を確かめる。
「はああぁぁぁ!」
そう叫びながら何体もの魔物を切り伏せているのはエルだ。その戦い方は無心流のカウンターを中心にしており、味方の冒険者の援護も行っている。
その近くではトアも戦っており、水魔法を使った攻撃や無心流の流し技からの返し技で魔物を倒している。
(流石。ネオと一緒にいるからには強いと分かっちゃいたが、これは期待以上だ)
その戦いを見て思う。これなら何とか乗り切れるだろうと。
「よし!! お前らぁ!! もうひと踏ん張りだぁ!!」
事実、魔物の数も目に見える形で減っており、あと少しで殲滅できるほどまで少なくなっている。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
アドルフが声を張り上げた瞬間、地響きが聞こえた。と同時、前方の地面に地割れが生じた。
その地割れから出てきたのは、複数の頭を持った、巨大で禍々しい龍だった。
「嘘だろ.........ありゃあ......多頭龍じゃねえか......」
その魔物、多頭龍を見てアドルフが呟いた。
多頭龍とは、SSランクの化け物である。その複数の頭はそれぞれ違った能力を持っており、一体だけで国を亡ぼせると言われている。
多頭龍の登場に度の冒険者の顔にも絶望が張り付いている。
「「「グルギャアアアァァァ!!」」」
多頭龍の三つの頭が咆哮する。
冒険者はその衝撃に身を竦ませながら、目の前の事実を否定する。
なぜなら、今まで致命傷を負っていた魔物もたちまち全回復し、地面の中からアンデッド系の魔物が出てくる。そして、多頭龍の後ろから更に新たな魔物が二百体以上の魔物が新たに出現したからだ。
(ハハハ......おいおい、冗談だろ?冗談と言えよ......)
アドルフはもう戦意喪失しかけていた。このあり得ざる事態に。
「「「「「「「「「グルルルルル」」」」」」」」」」
更にその状態をあざ笑うかの如く、多頭龍は全部で十の頭に魔力を集め始める。
その攻撃はブレス。この都市を破壊しうる程の強力なブレス。
(ハハハハハハ............こんなの...防げるかよ......)
破滅のブレスが、放たれる。
―――まだ終わりじゃない
その戦場にいた全員の頭に響く声。
(......遅すぎんだよ......)
アドルフがそう思考した瞬間、都市と冒険者たちを覆う強力な結界が張られた。
「さあ、滅びの時だ」
上空に、黒髪をなびかせながら浮かぶネオが呟いた。




