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閑話

第三者視点で書いてみました。コウが死んで二日後の三人の様子です。

 あれから二日が経った。


 コウが皆を守り、迷宮で死亡してから召喚された勇者は死への恐怖で部屋に籠る者、あるいは自身の無力を悔いて更に訓練に励む者、それぞれに分かれた。


 法幢凱斗、彼はこの二日間ずっと考えていた。


 あの時、俺はどうすれば良かった? なんでコウが死んだ? これは、楽観視して、舞い上がったいたつけなのか? あいつは、この世界の厳しさに気付いていた? 俺たちが遊んでいる間、あいつは何をしていたんだ?


 こんな考えがずっと頭の中を巡り続けた。目を閉じて見えるのは友の、親友の死、あの圧倒的な力のぶつかり合い、勝負は一瞬だったが、凱斗は途方もない時間戦っていたように錯覚していた。


 あの時のコウの姿は本当の勇者の様に、光輝く英雄の様に見えた。俺では到底敵わない、そう思わされた。だが、それでも、そんな力を持っていても敵わない敵がいる。きっと魔王は、あの化け物よりも強い。なら、今度は俺の番だ。俺が、コウに代わってあいつらを守り抜く。あいつの親友として、あいつに恥じない立派な戦士になる。次会えた時、自慢できるように、笑われないように強くなる。


 そして、凱斗は決意し、覚悟を決める。もう二度と誰も失わない様に、親友の守ろうとしたものを自分が守れるように。





 神無月凛、彼女は自身の苦悩と絶望を押し殺し、耐え、友達の、親友の回復を待った。

 

 親友とは阪森沙耶の事である。彼女はコウが谷に落ちてすぐに気を失ってしまったのだ。それから二日、彼女は眠り続けたのである。そして今日、目を覚ました。


「う、うぅん」

「サヤ!」

「ん、リンちゃん?」

「そうよ」


 リンは二つの意味で安堵した。やっと親友が目を覚ました事、そしてコウが谷に落ちたことを覚えていない可能性があるからである。


「ねえ、ここはどこ?」

「こ、ここは王城にあるサヤの部屋よ」


 サヤの言葉に動揺してしまうリン。

 このまま何があったか思い出してしまうとどうなるか分からないからだ。


「ねえサヤ、ご飯食べに行きましょう? お腹空いてるんじゃない?」


 誤魔化そうと、あの時の事を思い出させないように話を変えようとする。


「ねえ、リンちゃん、私なんでここで寝てたの? 確か迷宮の攻略に向かったはずだよね?」


 だが、出来なかったようだ。そのままサヤは思い出すように考え込む。


 すると突然、顔を青くさせながら、


「ねえリンちゃん、コウ君は? コウ君はちゃんと戻ってきてるよね? ちゃんといるよね?」


 リンに掴み掛かりそうな勢いで聞いてくる。


「そ、そうだ。今からコウ君に会いに行くね。リンちゃんも一緒にいこう? 私が目を覚ましたことを教えてあげなきゃ!」


 サヤは無理に笑顔を作り、ベッドから起き上がろうとする。


「リンちゃん? どうしたの? 早く準備して行こう?」

「サヤ」


 リンが声を掛けたことでサヤは動きを止める。


「なに? リンちゃん。早く行こう?」

「サヤ、コウさんはね、いないのよ」

「ならどこにいるの? この城にいなかったら何処かにいるんでしょ? そうだ、ホウドウ君なら何処にいるかも知って......」


 サヤの言葉はそれ以上続かなかった。なぜならリンが言葉を被せたから。


「サヤ、コウさんは、彼はいないの。どこにも」

「嫌、言わないで!!」


 サヤは称号【聖女】のおかげで相手が嘘を言っているか、本当の事を言っているのか分かるからリンの言葉を止めようとする。現実から、事実から目をそらそうとする。

 だがリンはサヤに現実を見せ、理解させようとする。称号【賢者】によって今のままだとどうなるかが分かったからだ。


「彼は迷宮で皆を守って」

「やめて!! リンちゃんでもそんな冗談許さないよ!!」

「キメラに負けて死んだのよ」


 サヤはその言葉が本当の事だと分かる。だが、信じたくなかった。好きな人が、自分たちを守って死んだなんて。今度は自分がコウを助けようと誓ったから。だからこそ信じたくなかった。あの時、コウの足手纏いになっていたなんて、そのせいでコウが死んでしまったなんて。

 だが、そんな想いもリンの顔を見るだけで消えてしまう。悲壮感にあふれ、今にも泣いてしまいそうな顔を見るだけで。


「う、あ、いや、いやぁ。コウ君。コウ君!! うわああぁぁぁあぁ!!」


 それが現実だと認識し理解した途端に泣き出してしまう。リンの胸に顔を埋めてすべてを吐き出すように。



 それから何分経ったか、サヤは泣き止み、口を開く。


「ねえリンちゃん、私ね、強くなろうと思う」

「......どうして?」


 なぜか分かっていてもあえて聞き返す。リンにとって、それは重要な言葉だったから。


「コウ君が守ってくれた自分の命を守れるように。大切な人を二度とこんな形で失わないように。いつか、コウ君に会えたら、私はこれだけ強くなったよって自慢できるように」

「......そう」


 リンはその言葉を噛み締める。自分は諦めただけだった。コウが死んで投げやりになっていたと思い。


 だからサヤに頼む。


「ねえ、サヤ、私も、一緒に強くなっても、いい?」


 サヤの答えは決まっていた。同じ人を想っていた相手の頼みを断ることはなかった。


「うん。一緒に強くなろう? 私からも、一緒に強くなってって、お願いする」

「分かったわ。一緒に強くなりましょう? 今度こそ大切な人を守れるくらいに」


 そして二人は決意を固める。もう二度とこんな悲しいことは起こさない様に。今度会えた時、自慢できるように。






なかなかに難しいです。


こうすればもっと良くなる、などの意見がありましたら教えてください。

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