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人生は一番美しい童話である(94)
視線がセリーヌに突き刺さる。身体の中を舐め回されるような、まさぐられるような、気持ちの悪い感覚に襲われる。アルバートの能力を聞いたことはあった。この身をもって体験するのは初めてだった。
見ないでくれ、と叫び出したくなった。
そして今まで自分が心を覗いてきた人間を思い起こした。
いい記憶ばかりではない。いい使い道ばかりではない。どうでもいいことに使ったことも、これから先の運命を本人に伝えたこともある。
「あなた、あと10分以内に死ぬのね」
「ああ。何をしたの? 彼とも長くはいられないのね」
何人、自分は傷つけてきたのだろう。
同じことを今から自分がされるだけ。自分がしてきたことの反復を、アルバートはしようとしているだけ。
過去を覗くことで。
「今言われて困ることはないか? 私達家族に隠していることは、何もないか?」
少なくとも今はない。だけれど。
人には言えない秘密が、全ての力の引き金に成りうる。