人生は一番美しい童話である(90)
「…可笑しい、だと?」
アリーの声がガラリと変わる。それは地の底から響くような、太く険しい声だった。
「可笑しくはないわね。違うわ、えっと」
顎に左拳を当てながらマーリンは小首を傾げた。それから少し笑って、嬉しそうに何度も何度も頷いている。
「…何が言いたい」
トットが彼に出せる限りの低い声で彼女に問いかけた。そんな彼を見て、マーリンは一層笑った。
「気を付けなさいね、お坊ちゃん。狙われても仕方ないわよ。
そこの気持ちが悪いスキモノ(・・・・・・・・・・)にね!」
一瞬、トットが消える。
次に現れたとき、その両手には彼女の左腕が担がれていた。彼が現れた一瞬後に、ぽたぽたと赤いシミが絨毯に出来始める。
呆気に取られるマーリンの左肩からは赤い液体で出来た腕がぶらさがっていた。否、あまりにも大量の血が一気にでた為にそう見えただけで、肩から先はもう、彼女の体では無くなっていた。
「あらまあ、びっくりしたわよ、わんぱく小僧」
それでもマーリンはにこにことしている。その精神力の強さが、セリーヌには理解が出来なかった。
「…貴方も私のコレクションにいれてあげるわ!
でもまずは、貴女よ、セリーヌ!」