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人生は一番美しい童話である(79)
「さて。決戦の時だな」
セリーヌがナイフの位置を直しながら言った。
「なんか緊張してきた」
アリーが震える両手を隠そうと握っているが、全身が震えているため、意味がない。少し抜けているのだ。そこが彼女の魅力でもあるのだが。
「気を付けていってこいよ!」
昨日とはうってかわった顔でトットがセリーヌのお腹にパンチする。
「痛くないぞ。もっと精進しなさい」
笑いながら言うセリーヌ。トットは頬を膨らませている。だけど、少しだけ、どこか嬉しそうだった。
いつもアルバートやルーカスと一緒に行動していたせいだろうか。少し心細い。
でも。
一歩踏み出す勇気、が大切なものを守ることに繋がるなら。
「いってきます」
セリーヌはアリーの手をとり、外へと走り出した。
時は午前4時。
誰もいない道を唯ひたすらに走る。
海辺がもうすぐ見える所まで来て、セリーヌは立ち止まった。左手側には森のなかに佇む数々の廃墟が、手招きするように佇んでいる。
「この先で間違いないと思う。行くぞ、アリー」
その言葉を合図に、2人は森の中へと足を踏み入れた。




