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人生は一番美しい童話である(69)
「…こんなに都合よくいくなんて。現れたら一思いに」
「駄目だ、アリー。ここは耐えてくれ。ケーキが台無しになる」
こそこそと話す2人。トーマスがにこにこと店主と話し、取り繕う。
「まだ確定した訳じゃないから、彼女に僕らが探していることは黙っていてくれないか? 今度うちのホテルで他の街の首長たちを招いてディナーパーティーをやるんだが、是非街の綺麗な人に来てほしくてね。もちろん、お姉さんにも招待状が来ると思うから! 準備しておいてね」
「やだ。トーマス君にきれいなんて言われたら、おばさん頑張っちゃうわ!」
トーマスがいて良かったと2人はここに来て初めて思った。誤魔化す口実がとてつもなくうまい。
「…あ、彼女よ! 来た来た。良かった会えたみたいで」
それと同時にカランカランと音をたてて扉が開いた。