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人生は一番美しい童話である(67)
ここら辺では見ない黒髪に黒いロングスカートの美人が海辺の方から歩いてきたと言う。最初は大きな荷物を担いでいるのかと思い、手伝おうと駆け寄ったらしい。すぐにそれが男だと気づき訳ありだと思い、先程の話に繋がったと言う。
彼女はそのまま男を担ぎながら路地裏に消えていき、数10分後、独りで出て来たと言う。不信には思ったが、路地裏に隠れ家か何かがあるのだと思い、そのまま仕事を終え家に帰ったらしい。
彼女はまた海辺の方へと戻っていったと言う。
「たがらなにも話が聞けなかったのね。まだ海辺の辺りには行っていないもの」
「時期もわかったし、これは探しやすいかもしれないな」
「…ご飯食べたらいきましょう」
今すぐと言わないところが良いな、とセリーヌは思った。腹が減っては戦はできぬ。遠い島国から伝わったことわざだ。間違いないなと心の中で呟き、目の前に並ぶ豪華絢爛な料理に手を伸ばした。
もちろん支払いはトーマス持ちである。