人生は一番美しい童話である(64)
「…と言うわけで、これはアタシの仇討ちでもあるわけね。大事な人殺されてるから、ほんと、まじで、殺っちゃいたいレベルのやつね」
アリーがにこにこと弁解する。それが全く弁解になっていないのは、この際誰も気にしないことにした。
「…まあ、でもそれなら納得もできるか。 …できるのか?」
トーマスが首をかしげながら考え込んでいる。
「ふふぁいふぉふぉふぁ、ふぃにふぃなふへひひふょ」
「いや、なにいってるか、全くわからないから!」
トーマスがセリーヌに突っ込むが、彼女はそ知らぬ顔で口をモグモグと動かしていた。
「深いことは気にしなくていいってさ」
アリーが爆笑しながら答える。
「…まあ、ここまで来た以上、協力させてもらいたい。最後まで」
「勿論だよ、トミー。寧ろ、女2人じゃ少し心細い。トミーがいてくれると助かるよ」
「…アリーは男だろ」
「酷いわ、セリーヌ。そんな目で私を見ていたのね」
「意味がわからん! トミーなんとか言ってやれ」
「端から見たら、完全に両手に花状態な僕からしたらなにも言えないよ」
「…笑わせるぜ」
セリーヌが呟いて、トーマスを小突く。その勢いでよろけ、アリーにぶつかりそうになる。それをするりと避けついでに袋の中からリンゴを取り出すアリー。
「よし、昼御飯を食べに行こう」
セリーヌが張り切った様子で2人に言った。呆気にとられた顔でセリーヌを見つめ返す2人。
「…でも今、パン食べてたよね?」
「おう。クリームパンと餡パンとクロワッサンとカップケーキとチョコクロワッサンとメロンパンは私が食べた。すまない」
「いや。え? 待って。めっちゃ食べてない?」
「セリーヌ、それでもお昼ご飯食べたいの?」
「…お腹すいた」
拗ねたように呟くセリーヌ。1人は呆れつつ、1人はセリーヌまじ可愛いと思いながら、ずんずん歩いていく彼女に静かに従うのだった。
ちなみにアリーはそっとリンゴを紙袋に戻した。