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君の夢で僕は旅をする  作者: 染樹茜
人生は一番美しい童話である
40/133

人生は一番美しい童話である(40)

「あたしの名前はアル。アリーとでも呼んでちょうだい」


「嘘つくのはやめなよ、オカマ」


「オカマじゃないわよ、立派な女よ。ほらね、立派でしょ?!」


 セリーヌは目の前で繰り広げられる漫才から目を逸らす。トットと呼ばれていた男の子は、アリーという女が突き出した胸に視線を釘付けにしている。


「それで、こいつはトット。こう見えてもう18なのよ」


「…え」


 どう見ても身長は130も無い。なにも言われなければ小学生でもいけそうな程小さい。


「こうみえても、ってなんだよ! アルフレッド」


「その名前で呼ばないでちょうだい! このクソチビ」


 どうやらこの2人には確執があるようだ。これじゃ進む話も先に進まないな、何て思いながらセリーヌは2人のやり取りを楽しんでいた。


「…さっきからトットくん。お前は彼女をオカマとかアルフレッドとか男扱いしているが、どういうことだ?」


 2人の間に身体ごと割って入る。セリーヌ越しに睨み合いつつも、トットがそのといに答えた。


「アルフレッドは男だよ、黒蝶さん」


 それからトットで良いよ、と続ける。その言葉を遮るようにアリーが叫んだ。


「昔の話よ! 今はこんな風に立派な女よ。出るとこでて引っ込むとこは引っ込んでる! どんな男だって魅力を感じるグラマラスボディなんだから」


「今だって男になろうとしたらなれるだろ」


「…煩いぞ、餓鬼」


 アリーのか細い身体とは似つかないようなドスの聞いた声が響く。セリーヌは驚いて彼女をじっと見つめた。顔や骨格はどう見ても女でしかない。その声だけが不釣り合いに彼女を支配していた。


「アリーはもともと男なんだ。だけど、今は女として生きてる」


 トットが頭を抱えながら言った。どうやらアリーに殴られたらしい。


「アルフレッドなんて名前、とうの昔に捨てたのよ」


 右の拳にふぅふぅと息を吹き掛けながらアリーが答えた。随分と強い力で何かを殴ったらしい。何をか、は考えないことにした。


「あたし達は貴女と同じなの。あたしは声を自由自在に変えられて、トットは光よりも速く移動できる」

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