人生は一番美しい童話である(24)
J.J.との1日を終え、セリーヌは2日ほど家に閉じ籠った。何もやる気が起きない。なぜ、彼に目をつけてしまったのか。なぜ、あのとき彼の本性を見抜けなかったのか。
首にうっすらと残る綱の痕を撫でる。
「セリーヌ、久々に散歩にでも行きましょうよ」
1時間以上前にも同じことをアルバートに言われた。
「…もう少しそっとしてはくれないか」
セリーヌは頭を抱え、机に伏せる。なぜ、今まで何人も手にかけてきたと言うのに、彼だけは私に後悔させるんだろう。
彼が言った通り別の出逢い方だったら。もっと早くに彼を救うことができた気がする。殺すこともなく"友達"というものになれたのかもしれなかった。
そんな後悔が頭の中をぐるぐると駆け巡り、彼女に外出を拒ませていた。
「…本当に悪をこの世から排除して回ることは、私にとっていいことなのか」
親指の爪を噛みながら自問自答する。うっすらと滲む血の味。いくら強く噛んだところで、何も解決はしないのだが。
やはり2人の言う通り、少し外に出た方がいいのかもしれない。
彼女はクローゼットから上着を取りだし羽織った。ファスナーを口元までしっかりとあげる。うっすらと染み込んだドブと血と汗の臭い。すっかりとこの街の臭いが染み込んでしまったな。
そんなことを考えながら彼女は部屋を出た。