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人生は一番美しい童話である(20)
彼が言葉を発すると同時に、セリーヌの首に綱が巻き付く。グッと喉をならして彼女はJ.J.のもとへと引き摺られた。
「僕は指一本、彼女に触れてないよ」
にやにやしながら彼は叫んだ。沈黙が続く。
「君が次に撃ってきたら、この綱をグッと引いて僕は彼女を殺す。君の弾が僕の脳天を砕くか、僕が彼女の首を絞めるのが先か、どっちかな」
セリーヌは苦しさから綱をほどこうと抵抗するが、きつく巻き付いたそれの両端は彼の手の中だった。
「でも僕はずるいから、彼女を盾にするね」
そう告げてJ.J.はセリーヌの心臓の位置と被るように、頭を隠す。彼にとってルーカスは恐怖の対象だった。しかしそれ以上にとても興味深い存在だった。
実際彼はこの危機的状況をとても楽しんでいる。
「…ずるいわね」
そう言って暗闇からルーカスが姿を現した。
「うわぁ。こんなに綺麗なお姉さんだとは思わなかったよ!そうと知ってれば違う方法で出逢えたのになぁ」
舌舐めずりしながら彼は笑う。
「どうにもこうにも、運命の歯車って奴は残酷で憎い奴だよ」