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君の夢で僕は旅をする  作者: 染樹茜
一灯を下げて暗夜を行く
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一灯を下げて暗夜を行く(26)

 無言のまま時間だけが過ぎた。


「そろそろ帰ろうか」


 トーマスの言葉にセリーヌは、はっと顔をあげた。沈黙のまま何十分も過ぎていた。トーマスは自分のことが嫌いになっただろうか。いや、そんなことは関係ないのだ。彼が自分を好きか嫌いかなんて、関係ないのだ。


 なにを。


 何を期待しているんだろう、自分は。


 セリーヌは虚しくなって空を仰ぎ、そしてまた下を向いた。


「……サリー?」


 トーマスが心配そうに彼女を覗き込む。その瞳に、震える彼女の唇が写った。


 何故、震えているのか。何故、そんなに悲しそうな顔をしているのか。


 聞きたくても言葉がでない。


「……私は」


 セリーヌが沈黙を蹴散らすように思い切り顔をあげた。


「私だって……他人と同じ様に」


 うっと嗚咽が漏れる。それと同時に涙が溢れた。それは頬をつたい止めどなく流れ続けて、いつしか机に模様ができる。


 それは綺麗に歪み、歪に輝いていた。


「私だって他人と同じことがしたい」


 その言葉は彼女が生まれて始めて呟いた、心の悲鳴だった。

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