一灯を下げて暗夜を行く(22)
「短い間でよくそこまでわかるね」
トットが感心したように呟く。
「はっきりわかっていることじゃないんだ。ただ誘拐されているのに、皆、泣きわめいたりしていなかった。それに、不釣り合いな格好をしているんだ」
「不釣り合い?」
「誘拐なら、衣服の乱れが少なからずある。それに、貧民街からの誘拐なら汚い服だ。富裕街からなら届け出が出るだろう。それに皆、きらびやかな服を着ているんだ」
だからおそらく。
呟いてセリーヌは下を向く。その後は言わずもがなだ。
「どうして孤児院があるのに、売り飛ばしてしまうのかしら。人の命なのよ。
両親がいないだけでも辛いのに。その子達はどんな思いで…」
アリーが目を覆う。皆、同じ思いだった。
「…しかし、彼女達をそいつから救いだしたところで、どうなる?」
アルバートが呟いた。その冷たい言葉にアリーは睨んだが、真意を理解しその目を伏せた。
「私達がまた新たな犯罪者を作り出す、か」
トーマスに言われた言葉がここで返ってくるとは、とセリーヌは笑った。その笑みは嘲笑にも失笑にも見えた。
沈黙が彼らを包む。
「…やらない後悔より、やる後悔よ」
ルーカスが言って席を立つ。
「私は彼を…彼らを殲滅することに賛成だわ」
「オレも」
「アタシもよ、セリーヌ。無くならないなら、やらないような見せしめをすればいい」
「見せしめ…か。いい案だよ、アリー」
アルバートも皆に同調するように席を立った。
「やるか」
セリーヌも席を立つ。
「じゃあ。各自、思うがままに追ってくれ」
それを合図に彼らは動き出した。