一灯を下げて暗夜を行く(17)
「あなた! 見て。セリーヌが笑ったわ」
きっと私が"普通"なら生まれたときから違っていた。
世間の"普通"では、ベビーベッドの側には父親と母親がいるものだ。
「なんて可愛いんだ、この子は」
そして最大の愛をその子に捧げている。勿論、父親と母親もお互いに愛し合っているはずなのだ。
「私は幸福者だわ、あなた。そう思わない?」
1日がこうして始まり、こうして終わるのだ。幸せを噛み締めながら。
「セリーヌちゃん! 今日はうちに来て遊びましょう!」
世間の"普通"では、幼少期は友人に恵まれているものだ。毎日、遊ぶ友達がいて、誰と誰が遊ぶかで時たま、喧嘩になったりするものだ。
「ねえねえ。セリーヌちゃんは好きな子いるの?」
そして当たり前のように誰かを好きになる。それは"普通"では自分とは違う性別の、自分とは違う誰か。
「僕は君が好きだよ、セリーヌ」
そうして繋がりあった2人は、幸せな時を過ごす。細く繋がった赤い糸を手繰り寄せ、引き離し。時折、それはぷつりと途切れて、他のものと繋がりあう。様々な人と繋がり途切れ、そしてまた繋がり。そうしてできたタペストリーの最後に、人は見つけるのだ。
「永遠の愛を誓いますか?」
その問いに躊躇うこと無く、「はい」と言えるような相手を。