一灯を下げて暗夜を行く(15)
家の前まで着いたとき、セリーヌは後ろを振り返った。
「…用事はどうした、アリー」
「もう夜も近いのよ。終わってるに決まってるじゃない」
満面の笑みを浮かべながら、アリーが抱きついた。
「こんなところでなにしてるんだ」
「そりゃもう、セリーヌとトミーが手を繋ぎながら帰ってくるところを一目見ようとね」
「…そんなことするわけないだろ」
「やだ。冷たい子。そんな子に生んだ覚えはないわ」
「お前は母親以前に性別がアレだから、何も突っ込めないよ。
ただいま」
「おかえり。
どうしたの、そんなに嬉しそうな顔をして」
「何だかよくわからない事が多すぎて、頭が混乱しそうでな。そうなってくると、寧ろ、笑いたくなるのが人の性だ」
「その理論はあながち間違いじゃないわね。
…トーマスのこと?」
アリーはセリーヌと2人きりの時だけ、トーマスのことをトミーと呼ぶ。
「それもあるが。私の生き方事態、世間というものからすれば不可解で不愉快なものなのだろうな」
「…そうなのかもしれないわね」
「どうしたら、普通に生きることができるのか。私にはもう、理解ができないところまできてしまったのかもしれない」
「…セリーヌ。1つだけ言わせて」
アリーがセリーヌの目をじっと見つめた。
いち、に、さん、し、ご。