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人生は一番美しい童話である(10)
その後1時間ほどアルバートに2人が拘束されていたのは言うまでもない。セリーヌが趣味の読書に没頭するまでかなりの時間を要した。
家族愛、というものをセリーヌは彼と18で出逢うまで感じたことすらなかった。だからどう対処したらいいのか、彼女にはわからない。少し面倒くさいような照れ臭いような、それでいて心暖まるような。彼女にとって複雑で理解不能なものだった。
たまに子供を抱いた母親の心を覗き見ることがある。大抵彼らが考えていることは同じだった。そしてそれを理解しようとするが、彼女にはできなかった。
それを悲しいと思ったことは無い。しかし虚しさだけは彼女も感じていた。人を愛するとは何なのか。彼女が追い求める答えは、いつも霧のように不鮮明でわかりにくい。そしてとてつもなく面倒くさいものだ。
いつしか彼女は"愛する"と言うことを理解することをやめた。ただ感じることにしたのだ。
アルバートやルーカスからの愛は時に歪で理解しえないものだ。しかし、それを感じとり共有することでセリーヌは愛を覚えていった。