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人生は一番美しい童話である(1)
執筆中につき、更新遅めです
朝、目が覚めて感じるのは、生暖くて少し生臭いスラムからの風だ。初めは苦手だったこの臭いも、今となっては生活の一部になり変わってしまった。
セリーヌは少し伸びをして、じりじりと泣き喚いていた時計を止める。少しだけ寝てしまおうかしら。そんなことを思う彼女の思考を無視するかのように、身体は自然と朝のランニングへと準備を始める。日課というものは怖い。なんでも日課にしてしまえば、それがその人にとっての当たり前になるのだ。例えそれが、他人からしたら普通のことでなくとも。
ランニングウェアに着替え、靴の紐をしっかりと結ぶ。床についた赤い染みが目についた。あとで落とさないと。血液は時間が経つごとに落ちなくなるものだ。
扉を開けるとまだ少し雲に覆われた空が彼女を出迎えた。少しだけ赤みがかっている。時刻は朝の4時と少しをすぎたところ。いつもより少しだけ遅い出発だ。いつも通り1時間もあれば海岸線に出られるだろう。日の出には間に合うだろうか。
そんなことを考えながらセリーヌは走り出した。